ザ・ウォール
映画『ザ・ウォール』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Wall 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年9月1日 
監督:ダグ・リーマン 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★

あらすじ

2007年、イラクの砂漠。アメリカ兵のアイザックとマシューズは、瓦礫の中に残る壁に潜む敵を狙っていたが、まったく動きがないため、マシューズが様子を見るために壁に近づいたところ、想定外の場所から銃撃されてしまう。援護に向かったアイザックも銃弾に狙われ、なんとか壁の背後に退避したものの、まったく身動きが取れなくなってしまい…。

ネタバレなし感想

壁は、案外、頼りない

何かを守りたいと思ったときによく頼られるのが「壁」です。

あなたの家や部屋も壁で覆われているでしょうし、車道と歩道を隔てるガードレールも壁、川の氾濫を防ぐ堤防も壁、押し寄せる波を弱める防波堤も壁、農作物を害獣から守るためのフェンスも壁。どこかの国のトランプさんも移民を防ぐために壁を増強する気満々です。

でもこの壁というものは、案外、頼りないものです。ほら、『パシフィック・リム』だって『進撃の巨人』だって、壁、全然役に立たないじゃないですか。『グレートウォールは割と健闘していたけど、あれは壁が凄いというか人間が凄かったから…。

もう「壁でも作ってろよ」という言葉を「意味のないことに精を出している人」に向ける慣用句にしてもいいと思うくらいですよ。

そんな壁がまさにタイトルになっている本作『ザ・ウォール』は、壁に頼るしかない危機に陥った人間の極限状態を描いたシチュエーション・スリラーです。

イラクの砂漠にあるパイプライン建設現場の偵察に来たスナイパーのシェーン・マシューズとスポッターのアラン・アイザック。眼下には複数の死体が転がっており、よほどの手練れが襲ったと判断して慎重に監視を続けますが、何の動きもなく20時間以上が経過。しびれを切らしてマシューズが死体の方へ一人歩いていくと、どこからともなく狙撃されてその場に倒れこみます。焦ったアイザックはすぐさま駆け付けますが、同じく脚を狙撃され、なんとか近くにあった壁に退避。壁に隠れながら、全く身動きが取れなくなるアイザック。この絶体絶命の窮地を脱することはできるのか…。

…といった感じの超シンプルなストーリー。登場人物も実質ひとりです。

ひとりシチュエーション・スリラーといえば、ライアン・レイノルズが棺に閉じ込められる『[リミット]』などがありましたが、そういうのが好みの人は楽しいはず。

孤軍奮闘する主演は『GODZILLA ゴジラ』の“アーロン・テイラー=ジョンソン”。『キック・アス』の頃の面影は全くありませんが、やっぱり20歳以上年上の人の結婚したら変わるんだなぁ(何の話)。

監督は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』の“ダグ・リーマン”監督です。

緊迫のスナイパー戦の行方が気になる人はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

壁越しの極限状態

シチュエーション・スリラーらしさといえば絶望的なまでの絶体絶命な状況。それは本作にもたっぷり詰まっていました。

「スナイパー」という題材は戦争映画における緊迫感をもたらすお約束の要素ではあり、狙われているだけで常に絶体絶命なんですが、本作は足を撃たれて動けない、通信機器も壊されて救助要請もできない、水筒も撃たれて飲料水もない…まさに手も足も出ない状況。おまけに身を隠している壁も、壁というにはあまりにお粗末な、レンガのような石を積み上げただけのものなんですが、頼りなさすぎるけれども頼るしかない。案の定、ボロボロ壊れていきます。

本作でスリルをさらに増すのにいい味を出しているのが、敵の正体が不明で、しかも、かなりこちらの状況を手玉にとるほどのやり手だということ。狙撃の腕も一流ながら、無線で別人になりすますなど頭も切れる。この謎の敵との無線おしゃべりを続けながらの駆け引きが本作の大半を占めるわけですが、人によっては飽きるかもしれません。でも、いったいこの犯人は何者なんだと没入できれば、無線で聞こえてくる相手のバックボーンに想像を含ませることもできて楽しいでしょう。

ただ、不満を言うなら、タイムリミット感がわかりにくいのが難点でしたね。主人公も出血してるし、ほっとけば命が危険なのはわかりますが、具体的にどうなったらアウトなのか不明瞭なまま物語が進むのが残念です。

この「状況」を逆に利用するのがシチュエーション・スリラーの醍醐味であり、本作でも壁を利用する展開はありましたが、せっかくなら無線を逆手にとる展開も用意してほしかったところ。

ザ・ウォール

実在した?ジューバ

本作は“ドウェイン・ウォーレル”が書いた、優れた脚本を一覧にする「ブラックリスト」にも選出されたストーリーが基になっています。ただ、本来はアイザックが無事救出されて、敵のスナイパーも殺されるという綺麗なオチだったそうで、完成した映画版ではひとりシチュエーション・スリラーらしい後味悪さの残るオチになっていました。

狙撃でヘリを落とすのはやりすぎな気もしますが、まあ、ケレン味ということでいいか…。

でも、本作の敵となるスナイパーは、スンニ派武装グループで実在したとされるスナイパー「ジューバ」がモデルなんですよね。本当に存在していたのかさえ不明なので曖昧なんですが、こういう史実もかじってくる要素をフィクション満載でエンタメ世界の恐怖の対象にしていいのか、若干のひっかかりがありますが…。

それでもシチュエーション・スリラーとしては一定の面白さがあって私は普通に楽しめたので良しです。

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