キミとボクの距離
映画『キミとボクの距離』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Space Between Us 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信 
監督:ピーター・チェルソム 

【個人的評価】
 星 4/10 ★★★★

あらすじ

科学者も驚くほどの優秀な才能を持ち、高度なAIを内臓したロボットを友人としている少年・ガードナー。彼には普通の子どもとは決定的に違う要素があった。それは火星で生まれ、ずっと火星で育ってきたということ。自分の知らない地球への憧れを膨らませていたガードナーは、16歳になり、行動にでる。

地球と火星は両想いのカップル

火星への憧れを胸に未来の宇宙開発者として勉強に励む子どもたちにスポットをあてたドキュメンタリーマーズ・ジェネレーションを以前紹介しました。顔をキラキラさせながら、火星への情熱を語る子どもたちは素敵でした。

じゃあ、人が火星に住むようになったらその逆もあるのでは?という視点で作られたSF映画が本作『キミとボクの距離』です。原題は「The Space Between Us」。日本では劇場公開にならず、Netflix配信となりました。

本作の主人公は火星生まれ火星育ちで地球を知らない少年。オデッセイなんて目じゃない、リアルな“火星の人”です。地球の人が火星に憧れるなら、火星の人は地球に憧れるわけで…。

そんな少年が地球に行けることとなり、なにもかも新鮮な初めての地球で自分探しの旅をする…というジャンルとしてはSF青春ドラマとなっています。LION ライオン 25年目のただいまにも通じるルーツ探しがテーマの作品です。さらに地球には以前からネットで交流のあった同年代の少女がいて、その子とのロマンスも…。なんか君の名は。でおなじみの新海誠作品っぽい雰囲気ですね。

主演は、最近の純粋青春ティーン映画では引っ張りだこな若手俳優“エイサ・バターフィールド”ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたちといい僕と世界の方程式といい、何か不安定なものを内に抱えた純朴な少年役がいつも似合っています。お相手となるヒロインは、ブラッド・バード監督の『トゥモローランド』に出演した“ブリット・ロバートソン”。“エイサ・バターフィールド”とは7歳も年が離れているのですが、お似合いな感じを醸し出してます。脇には“ゲイリー・オールドマン”といったベテランが控えてます。

SF的な科学考証は全く気にしてない映画ですので、あしからず。火星から地球に移動しても『インターステラー』みたいなことにはなりませんからね。

気軽に観られる爽やか青春ドラマですので、気分が向いたときに観賞してみてはどうでしょうか。






↓ここからネタバレが含まれます↓





これは犠牲ではなくチャンスです?

本作、着想された土台のアイディアはすごく良いと思います。火星生まれ火星育ちで地球を知らない少年という主人公設定も期待高まります。そのために、宇宙飛行士がその妊娠を知られずに火星へ飛び立って火星で出産するという、かなり強引な展開も、まあ、目をつぶるとしましょう。たぶん、誰もが「気づけよ!」とツッコミたくなるでしょうが。

しかも、これは倫理的にかなりアウトな行動なわけです。妊婦を宇宙に連れてっちゃって、火星で生ませて、子どもの存在を隠ぺいするなんて、あのジェネシス社は極悪企業ですよ。ちょうど今年公開されたSF映画パッセンジャーを思い出します。倫理的に絶対アウトな出来事が物語の肝になる点が同じ。個人的にはこういう話は大好きです。

さあ、どうやって物語を着地させるんだとワクワクで観てました(デジャヴ)

ところがですよ(やっぱり)。後半にいくにつれどんどん甘い話になっていく…。またかと、がっかり感に襲われるのでした。

なによりも倫理的に絶対アウトな出来事に対する落とし前がないのは致命的。ジェネシス社にお咎めはないのだろうか。普通、あれが世間に公表されたら、会社倒産どころか、関連する宇宙開発事業が全てストップするぐらいの大問題ですが…結局、隠匿したままなのかな。しかも、父親があんたならもっとタチが悪いというか、罪を感じるなら早く言ってくださいよ。ケンドラがタルサの里親になるオチとかは割とどうでもいいので、肝心なところをケジメつけて。

綺麗な終わり方でしたが、宇宙開発業界の中身は汚いまま。『マーズ・ジェネレーション』の子どもたちが観たら、怒るんじゃないかな。

キミとボクの距離

キレイだね?


加えて、本作は『パッセンジャー』と違って、話にまとまりがないまま突き進むので、感動ポイントがどこだかさえも曖昧。一般客層も置いてけぼりを喰らうのじゃないでしょうか。父親探し、タルサとのロマンス、逃走劇、体の問題、タルサの孤独…いろいろ詰め込み過ぎです。

やたらと唐突な恋愛シーンもあんまり乗れず。とりあえず火星環境下で育ってもキスもセックスもできるんだなぁとどうでもいいことを思っただけなのでした。

映像はすごく綺麗なのですが、センチメンタルな雰囲気ばかりで、飛行機とか車とか良さげなシチュエーションを入れました感が満載。それでいて豪快なシーンは意味もなくただただ派手で逆に面白いんじゃないかと錯覚したくなる。なんで『007』並みの飛行機大爆発シーンを入れたのだろうか…。笑っちゃうのが終盤の地球環境に耐えられず命の危機にあるガードナーを救うため、特別な宇宙船でみんな一緒に宇宙へ輸送する場面。荒療治すぎるし、他に手もあっただろうに。あそこだけ急に『ワイルド・スピード』クラスのバカ映画感がありました。ちなみにあの宇宙船は「ドリームチェイサー」といって本当に実在するものだそうです。もちろんあんな使い方はしません。

総論としては、ゴチャゴチャしてたけど、考えるのをやめれば楽しいかもしれない。『ワイルド・スピード』だと思えば全部許せる気がする。火星と地球の間は勢いまかせでつながれるのです。