マーズ・ジェネレーション
映画『マーズ・ジェネレーション』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Mars Generation 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信 
監督:マイケル・バーネット 

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★

あらすじ

月に到達した人類の次の目標である火星。そして、その火星に惹かれて、そこへ向かおうとする10代の若者たち。そんな彼らの受け皿となり、宇宙開発に関する教育活動を行っている「Mars Generation」に密着。専門家や火星上陸を夢見る若者たちの声を聞き、火星を目指してきた歴史と未来の可能性を語る。

マーク・ワトニーを目指して

日本では2016年に公開されたリドリー・スコット監督のオデッセイ。火星での有人探査の最中に嵐に巻き込まれて孤立無援となった男マーク・ワトニーが、地球の仲間たちの支えとともに、科学の力で切り抜けるという内容のこの映画。話だけ聞くとSFスリラーという感じに思えますが、実際に観てみると「宇宙への憧れ」と「科学のロマン」が溢れる最高のサイエンス万歳!な作品でした。

気のせいかもしれないですが、一昔前の映画の潮流だと、火星などの他の星といえば、地球を侵略する恐ろしい存在みたいに描かれるものも多々あります。

↑『マーズ・アタック!』はその超コテコテの典型。
これはこれで面白い。

ところが近年にはもう一度「宇宙への憧れ」を呼び起こすような名作も生まれ始めていて(まあ、最近でもインデペンデンス・デイ リサージェンスみたいな映画はあるけど)、私はそっちのほうが好きですね。

そんな「宇宙への憧れ」を、映画のなかではなく、今まさにリアルで輝かせて未来に進もうとしている若者たちにスポットをあてたドキュメンタリーが本作『マーズ・ジェネレーション』です。

描かれるのは、宇宙開発に関する訓練を行い、知識や技術を教える施設「スペースキャンプ」をティーンエイジャーに提供する「The Mars Generation」というプロジェクト。要するに体験学校です。しかし、よくそこらへんにある子ども向けの職業体験ごっこのようなアミューズメント的なものでは全くない。NASAも協力しているだけあって、設備レベルはトップクラス。それだけの魅力があれば、当然世界中から宇宙大好き少年少女が集まってきます。その若者たちが目指すのは火星です。ゆえに「火星世代(マーズ・ジェネレーション)」

プロジェクト「マーズ・ジェネレーション」の公式サイト ⇒ The Mars Generation

本作は、「The Mars Generation」で学ぶ若者たちの眩しい姿と、アメリカの宇宙開発史が交互に語られていきます。そこまで専門的な話は出てきませんが、歴史をざっくりとおさらいするなら勉強に最適なはず。なんといっても、科学が好きな人には心打たれるものがあると思います。

このドキュメンタリーはまさに『オデッセイ』へのリアルなプロローグです。






↓ここからネタバレが含まれます↓





日本の教育に足りないもの

本作で映し出される「The Mars Generation」のスペースキャンプ。本当に素晴らしい教育環境です。エンジニアリング実習、ロボット制作、宇宙服演習、環境制御・生命維持演習、そしてウォーター・サバイバル訓練まで。映画のセットかと見間違えるような充実した設備であり、あの若者たちは最高に幸せでしょうね。

ただ、私が個人的に一番感動したのが、子どもたちのオタク心を全面的に肯定しているあの姿勢です

本作に登場するまだ14~16歳の子どもたちは、宇宙オタクであることを誇りに持っていると断言するのです。キラキラしながら。

考えてみてください。オタクであることを誇っている子どもたちがどれほどいるでしょうか。

普通は真っ先にイジメの対象です。現に学校ではイジメられたと答えている子どもが映っていました。だからそれを子どももわかっていて、ある程度思春期で物心つくとオタク心を自身で隠そうとするものでしょう。

それに、日本も教育だ人材育成だとなんだかんだ言われて、職業訓練施設や資格制度が作られたりしていますが、そのほとんどが若者たちを労働力として“使える”歯車にするためのものばかりな気がします。「現実を見ろ」「大人になれ」という言葉を繰り返し聞かされ、社会によって“標準化”していく子どもたちを私もこの目でたくさん見てきましたし、私だってそんな子どものひとりです。

しかし、「The Mars Generation」の若者たちは全然違う。自分のオタク心に共感する同類の仲間たちに会えて、大人もまた理解してくれる。欲求、興味、情熱、冒険心…それら衝動を抑える必要はない。むしろ、ティーンになってそれらをより発揮させる。これこそ真にあるべき教育だと思います

いや、こんな素晴らしい教育ができるのはNASAという巨大組織がバックにいるからだと言われそうですが、この姿勢だけならお金がなくてもできるはず。本作が示してくれる大切なことです。

マーズ・ジェネレーション

宇宙開発が続く限り人類は成長する

そして、そんなNASAですら今、窮地に立たされていることを本作は最後に見せます。これが本作が作られた最大の理由ですね。

1960年代の火星飛行計画は中止され、30年もの間、スペースシャトルの運用というとても宇宙開発とは呼べない“運送業”をさせられることになったNASA。スペースシャトルに代わるSLS(スペース・ローンチ・システム)も、アポロ時代は国家予算の4%が使えたのに対して、現在は0.4%のみで、お金が全く足りない。何より現アメリカ大統領トランプは関心なさげ。

民間企業の参入によるイノベーションが必要な今、ここでこそ期待されるのがオタク心です。やっぱり最後に頼りになるのは自身の内に秘めた熱量だけ。

失敗して、失敗して、失敗して、それでもいい。特定の国益のためじゃない、地球上のすべての人類のため、ぜひとも宇宙開発は続いていってほしい。世間の社会情勢では嫌なニュースばかり聞きますが、この宇宙開発が続くということは、人間は堕ちてなんかいない証拠だと思うのです

私も老後は火星でジャガイモ作りに精を出したいな。