スウィート17モンスター
映画『スウィート17モンスター』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Edge of Seventeen 
製作国:アメリカ 
製作年:2016年 
日本公開日:2017年4月22日 
監督:ケリー・フレモン・クレイグ 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★

あらすじ

キスさえ未経験というイケてない毎日を送る17歳の高校生ネイディーンは、周囲に不満ばかりを募らせ、教師のブルーナーや情緒不安定な母親を困らせてばかりいた。そんなとき、唯一の親友であるクリスタが、人気者の兄ダリアンと恋に落ち、疎外感を感じたネイディーンは、とんでもない行動に出てしまう。

ネタバレなし感想

この女優はやっぱりスゴい

“コーエン兄弟”監督の『トゥルー・グリット』(2010年)でヒロインの女の子を演じ、アメリカ中の映画祭で助演女優賞に輝いた天才子役女優“ヘイリー・スタインフェルド”。若干10代前半で、貫禄も実力も溢れる名俳優“ジェフ・ブリッジス”と渡り合える演技力を披露したんですから、あらためて見ても凄かったです。『トゥルー・グリット』では助演扱いでしたが、それは若すぎるからであって、じゅうぶん主演級でした。

ただ、そういう子役で大当たりしたとしても、大人になってからも成功し続けるとは限らず、役者は厳しい世界…。しかし、“ヘイリー・スタインフェルド”は一発屋で終わるような人間じゃなかった

2016年、再び主演をつとめた本作『スウィート17モンスター』でそのパワーをまざまざと見せつけてくれました。

本作では、ゴールデングローブ賞で主演女優賞にノミネート、女性映画批評家協会賞では若手女優賞に輝くほど。やはり持っているのか。これはアカデミー賞で主演女優賞の栄光を勝ち取るのもそう遠くはないかもしれない。実際、本作では絶妙なコメディセンスを発揮しており、初期のエマ・ストーンを連想します。劇中では、何のとりえもないダメダメ女子を演じてますが、当の役者はめちゃくちゃ才能と強運の塊なのです。

一方、本作で若き才能を輝かせているのは主演女優だけでなく、監督もです。本作は“ケリー・フレモン・クレイグ”監督の監督デビュー作。初めてでここまで超高評価な作品に仕上げるのですから、これは期待の逸材です。しかも、今、映画界が喉から手が出るほど欲しい女性監督。今後、絶対大作映画に起用される予感…。

内容としては、どストレートなジュブナイル映画。「周りはウザイし、なんで私だけ不幸なの!」と心の中で絶叫するピュアでめんどくさい女子のドタバタ人生劇です。主人公は女子ですが、普通に男性が観ても共感できる作品となっています。

主人公と同世代の中高生にも観てほしいし、そんな時代を経験した大人にも観てほしい。万人の心に届く一作です。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

皆、可愛い

本作の魅力はキャラクターに支えられているといっても過言ではないくらい、登場するさまざまな人物たち…主要キャラから端にいたるまでが、皆、ほんと愛らしくて堪らないです。

ネイディーンの唯一無二の親友であるクリスタは、しっかり者のようでやっぱり年相応の未熟さが垣間見える瞬間が可愛く、雰囲気に流されてベッドインしちゃった翌朝のネイディーンと一緒に頭を抱える姿は笑いを誘います。演じた“ヘイリー・ルー・リチャードソン”は、スプリットにも出演していましたが、今後も活躍を見ていきたいところです。

可愛いキャラといえば、ネイディーンに好意がある素振りをみせて近寄ってくるアーウィンもまた忘れられません。遊園地の頑張りすぎっぷりといい、ネイディーンがプールに来ることになっての喜びっぷりといい、気取らない凡人感がいい。終盤の映画祭で見せたアニメーションは、個人製作にしては出来過ぎだったけど、でも良い奴です。

このアーウィンと正反対の気取りまくりで、ネイディーンが夢中になって片思いしている相手であるニックも、一見すると嫌な奴として描かれていますが、素は10代らしい未熟さ満載。たぶん、年をとってからこの時期を思い返し、恥ずかしさに身もだえするんだろうな…。

ネイディーンの兄のダリアンは、少し大人なせいか、このネイディーンたちティーンの悩みをわかりつつ、現実もわかっている立場。そのもどかしさが演技によく出ていて、単なる記号的なイケメンの兄になっていないのがいいですね。演じた“ブレイク・ジェンナー”は、主演したエブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中にといい、純朴なキャラが似合ってます。

本作で可愛らしさを振りまくのはティーンだけではありません。大人たちも可愛いです。ネイディーンの母のモナが見せる、娘をいっぱいいっぱいになりながら心配する姿は愛おしく、終盤の「Ok」のテキストは個人的に本作で一番好きな場面です

そして、ネイディーンの相談相手、というか不満を投げ捨てるゴミ箱みたいな扱いの教師のブルーナー。「自殺してやる」とか「このハゲ!低年収!」とかのネイディーンの自由奔放な暴言への冷静すぎる反応から、イタすぎるネイディーンの誤送信テキストをわざわざ読み上げる返しまで、行動がイチイチ面白い。こんな男がいたら、怒る気失せますね。“ウディ・ハレルソン”、遊びまくりで。なんでもアドリブだらけみたいだそうで、実に楽しそうでした。

スウィート17モンスター

その服はない

そんな愉快・痛快なキャラクターの中でも、中心で圧倒的に輝くネイディーンの凄さですよ。

所作ひとつとっても、全てが面白い。本人は劇中では大半でイライラしっぱなしなのですが、怒ってても何も怖くないのがまた…。で、そのせいで、さらに怒りがたまるという悪循環。怒れば怒るほど面白いのは天性の才能であり、それに気づけば学校の人気者になれそうなのに…。

着ている服が絶妙にダサいのがいいですよね。ある日のファッションが、シカが前面にデカデカとプリントされた服なのですが、あんな服、カッコよく着こなせる人そうそういないよ…。

“ヘイリー・スタインフェルド”は本当に上手いです。真顔で笑いをとれる女優ですよ(褒めてる、褒めてるよ!)。これからもそのパワーを発揮できる作品に恵まれるといいなと願ってます。

エッジ・オブ・セブンティーン

本作の原題は『The Edge of Seventeen』です。「edge」とは「刃のような鋭さ」を意味しますから、まさに周りに当たり散らす17歳のイタさをよく表しているタイトルだと思います。邦題の「スウィート」は何なんだ…という感じですけど、まあ、それは置いておこう…。

本作はティーンの不安定な心を描く作品ですけど、別に10代に限らず、こういうネイディーンのような感情を大人になっても持っている人はたくさんいると思います。自分は負け組で非リア充“だと思っている”、自分以外はみんなアホ“だと思っている”。そんな人です。

私は「リア充」という言葉を使うのは嫌いです。人生を充実させることは、確かに生まれや境遇に左右されるかもですが、それは本人の考え方や見方でも変わってくるものです。一見すると、つまらなさそうな人生でも、楽しさを見出そうとするかしないかは大きな違いですから。

そんなことに、あまり押しつけがましくなく気づかせてくれる。素晴らしい作品でした。

全然関係ないけど、本作、中国の映画会社が製作に関わってましたね。こんなジュブナイル映画にも金を出すんだなぁ、中国は。こういう作品の背中を押してくれるなら全然OKです。

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