スパイダーマン ホームカミング
映画『スパイダーマン ホームカミング』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Spider-Man: Homecoming 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年8月11日 
監督:ジョン・ワッツ 

【個人的評価】
 星 8/10 ★★★★★★★

あらすじ

ベルリンでのアベンジャーズ同士の戦いに参加したことに興奮するスパイダーマンの正体・高校生ピーター・パーカーは、ニューヨークに戻ったあとも、トニー・スタークからもらった特製スーツを駆使し、街の人々を困り事から救う小さな活動にいそしんでいた。そんなとき、巨大な鋼鉄の翼を纏う謎の敵・バルチャーに遭遇するが…。

ネタバレなし感想

マーベルはこれでリフレッシュ!

キャリアの乏しい新人映画監督が大作映画に抜擢されることが目立つハリウッド映画界。そんなビッグバジェットへ飛び級を果たした若き新鋭に新たな名前が加わりました。

その人こそ“ジョン・ワッツ”監督です。

この人、監督デビュー作の時点でなかなかのミラクルなエピソードを持っており、監督第1作の『クラウン』(2014年)は、映画学校の仲間とYouTubeに投稿したフェイクのホラー映画予告をホラー界の気鋭“イーライ・ロス”が気に入って、本当の映画として製作されることになったという凄い経緯があります。

そんな“ジョン・ワッツ”監督、なんと3年後には「スパイダーマン」の新作『スパイダーマン ホームカミング』を任せられるとは…。「気がついたら監督の座を射止めていました」とインタビューで語ってましたが、“持ってる”んだなぁ。

そういえば今作でスパイダーマン役で主演するまだ若干21歳の“トム・ホランド”も大躍進です。『インポッシブル』(2012)で彼の子役時代の姿が見れますが、この当時はまさかスパイダーマンになるとは夢にも思いませんでした。

「また、スパイダーマンの映画?」となる人もいるかもなので簡単に説明すると、新作『スパイダーマン ホームカミング』は、これまで製作されてきた『スパイダーマン1・2・3』や『アメイジング・スパイダーマン1・2』とはお話は繋がっていません。その代わり、ディズニー・マーベル映画が製作してきたアメコミ映画(『アイアンマン』や『アベンジャーズ』など)と同じ世界観を共有するようになりました。そのため、過去の「スパイダーマン」映画は一切観る必要ないですけど、過去のマーベル・アメコミ映画は観ておくとより楽しめます。今回の新スパイダーマンが初お披露目したシビル・ウォー キャプテン・アメリカくらいは観ておくといいかもですね。

これまでのマーベル・アメコミ映画は主人公がおっさんばっかりでしたが、今回はとてもフレッシュになりました。大人の深刻度が増す一方だった「マーベル・シネマティック・ユニバース」のいい気分転換になったのじゃないでしょうか。

老若男女に観やすい、この夏定番の一作でしょう。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

青春の少年少女たち

本作の魅力、それは“トム・ホランド”演じるスパイダーマンことピーター・パーカーがとにかく可愛い。まず、そこですね。

前半部のスマホ自撮り実況からのニューヨーク・クイーンズの街のほんわか自警活動は、ヒーロー版「おのぼりさん」といった感じで大変微笑ましい光景です。このヒーローに憧れる姿というのは、まさにアメコミ映画を観てヒーローに夢中になってきたファンの姿とシンクロするものであり、とても共感してしまいます。

そして、学校パートはというと、これが完全に青春(ジュブナイル)映画そのものでした。恋あり、友情あり、勉強ありと、超王道です。ピーター・パーカー以外にも、年1回開催される高校生学術競技「United States Academic Decathlon」の参加学生たちがまた青春しています。この学生たちはこれは完全に意図的だと思いますが多様な人種で構成されており、そんな彼ら彼女らがときに反発し合いながら、理解を深めていく光景は現代版『ブレックファスト・クラブ』ですね。ギーク、ガリ勉、いじめっ子、不思議系、リーダーとひととおり揃ってましたが、どの子たちもみんな良いキャラしてました。

“ジョン・ワッツ”監督は、本作にてアメコミ映画に青春(ジュブナイル)ジャンルを見事ミックスさせることに成功しており、最近公開されたLOGAN ローガンといい、こういう伝統的アメリカ映画要素で現代アメリカ映画の代表格であるアメコミ映画をリニューアルするのが流行りなんでしょうかね。当然、制作陣の力量が必要ですが、上手くハマれば映画批評家も若い一般客層も楽しめる作品が生まれるので、今後定番化するかもしれません。

哀愁のブルーカラーたち

そんなキラキラした青春学園パートとは対称的に、今作の悪役バルチャーに変貌するエイドリアン・トゥームスと仲間たちは典型的なブルーカラーの労働者層の人でした。これまでもアメコミ映画でブルーカラーが敵になる展開はあったと思いますが、今作は「マーベル・シネマティック・ユニバース」の裏で踏みにじられた持たざる者という立場がより強調されています。『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』のときの悪役もそうでしたが、マーベル・アメコミ映画の人間悪役はこういう社会的事情を抱えた社会の下にいるタイプの人間で今後はいくのかな? まあ、悪役像を作るのは毎回悩みどころだと思いますから、試行錯誤はいるでしょうね。

それでも本作はかなり気を遣っていて、とくにブルーカラーを極端に悪にしたり、はたまた同情心を出しすぎたりしないような配慮も感じました。そのいい緩衝材になっていたのが、“ジョン・ファブロー”演じるハッピーです。彼は、ブルーカラー底辺のエイドリアンと似て非なる、ホワイトカラー底辺として対応関係にあって、バランスをとってくれました。相変わらずトニー・スタークの印象が悪くなりがちですが、彼は反面教師的な役回りなので、まあ、あんなものでしょう。今後、スタークはさらなる人間的成長を見せるのかな…。

ちなみに、ヴィランまわりでは“ジョン・ワッツ”監督らしさが目立っているなと思う点がいくつかありました。そもそも“ジョン・ワッツ”監督は『クラウン』やCOP CAR コップ・カーといった過去作でも、どこか哀愁漂う大人が子どもに恐怖を与え、去っていくという展開であり、本作も共通してました。また、リズの父がバルチャーだと知ったあとの気まずい緊張感、とくにピーターとエイドリアンの車内でのやり取りや間の演出などは、“ジョン・ワッツ”監督っぽい!と思ったり。

スパイダーマン ホームカミング

ヒーローの原点は人助け

最近のアメコミ映画を観ているとことさら思いますが、結局、ヒーローって特別なアイテムや能力が凄いのであって、本人は大したことないじゃないかという現実的な冷めた意見。これに対して、本作は綺麗な回答を示しています。

それは、私もアメコミ映画の感想で幾度となく書いてますが、やはりヒーローたるもの「人助け」こそが大事ということ。

今回のスパイダーマンのスーツはとくに高機能であり、最初は有頂天なピーターでしたが、でも最後はスタークの用意した最新スーツを断って、人助けがしたいと街に戻ります。人をヒーローにするのは、アイテムや能力じゃなくて心なんだと示す、明確な着地です。対する、バルチャーはアイテムを身につけてももちろんヒーローになれず、自滅するだけですから。

よく映画の宣伝で「愛するものを守る」とかいうフレーズを聞きますが、真のヒーローにとって助ける相手は愛しているかどうかは関係ない…スパイダーマンが本作で最後に助ける相手が“あの人”だということからも、そういう無償の人助けが全面に押し出されていました。

ハクソー・リッジを観ても同じことに行き着きますが、やっぱり人助けできる人はヒーローであり、それだけで特別なのです。

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