美しい湖の底
映画『美しい湖の底』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Shimmer Lake 
製作国:アメリカ・カナダ 
製作年:2017年 
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信 
監督:オーレン・ウジエル 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★

あらすじ

美しい湖のある小さな町で起こった銀行強盗事件。3人の容疑者を追いかける保安官のジークは、よく知る人々に話を聞きながら、FBIの相手をしつつ、捜査を進めていく。複雑な人間関係が見え隠れするこの静かな町に潜む秘密を知っているのは、限られた人間のみ…。

時間逆行のお楽しみ

クエンティン・タランティーノ監督の名作『パルプ・フィクション』は、劇中で繰り広げられる出来事がシーンごとに時間軸がバラバラで展開されていくのが特徴でした。映画を普通に始めから観ていても全体像はさっぱり掴めず、全てを観終わって初めて「そういうことか」と納得する構成です。

『パルプ・フィクション』は相当時間軸がメチャクチャになっている“変わり種”作品ですが、時間軸を駆使した映画は他にも種類があります。それは“時間逆行型”の作品です。映画開始時点が最も時制が新しく、映画が進むにつれてどんどん過去の話が語られていく…そういうやつですね。例えば、クリストファー・ノーラン監督の『メメント』なんかがあります。

そして、本作『美しい湖の底』もまたその“時間逆行型”映画の典型例です。

監督は“オーレン・ウジエル”。聞いたことがない人だなと思って調べると、脚本家として活躍していた人でした。“オーレン・ウジエル”の脚本作品は2つ。ひとつは、フィル・ロード&クリストファー・ミラー監督が手がけたダメダメ新人警官コンビが高校に潜入して大騒ぎする『21ジャンプストリート』の続編『22ジャンプストリート』。もうひとつは、人間とゾンビとバンパイアが共存する街を舞台に襲来したエイリアンから街を守ろうとする高校生を描いた『フリークス・シティ』。いずれも一目で異色とわかる個性の強いコメディです。

じゃあ、本作『美しい湖の底』もコメディかというと、全く様相は違う、かなりシリアスなミステリーサスペンスとなっています。でもところどころでユーモアを見せるあたりが“オーレン・ウジエル”らしさも感じさせる、そんな映画です。

気になる人はぜひ観賞してみてはどうでしょうか。ちなみに以下の予告動画には展開が読めてしまうシーンのネタバレが結構あるので、純粋に楽しみたい人は予告動画を見ないほうがいいと思います。






↓ここからネタバレが含まれます↓





Why!!!

本作は以下の構成で時間が巻き戻って真相が見せられていきます。

金曜日「アンディが湖に向かう」

木曜日「ドーキンスが旧友に電話する」

水曜日「クリスがピンチに」

火曜日「エドが決心する」

一番の謎は「誰が黒幕なのか?」です。

銀行強盗事件を起こしたアンディ・サイクス、エドワート・バートン、クリス・モロウの3人。そして、それを追う地元警察のジークとリード。捜査しようとするFBIのカートとカイル。強盗に入られた銀行と関わりのあるドーキンス判事。アンディの妻マーサ、エドワートの妻ステファニー。

多くの登場人物がひしめき合うこの物語の過去を覗くと判明した黒幕はジークとステファニーでした。昔に湖で起きた爆発事故で亡くなったステファニーの子どもは実はジークとの子で、その復讐のために銀行強盗の時点から仕組まれていたのです。ドーキンスを殺したのはアンディ、クリスを殺したのはドーキンス、エドとアンディを殺したのはジークとステファニー…次々と手を汚した人間がわかっていく展開は素直に楽しいです。

ただ、ジークが犯人なのは結構バレバレな気も…。最初から含みのあるキャラすぎましたね。警官仲間のリードがFBIに「ジークはこの中で一番賢い」と言っているとおりです。そもそもサリーをパトカーに乗せたジークは「誰だって失敗する。俺だってそうだ」「みんな欲望のために好き勝手しようとする」「汚れた町をお風呂に入れるのが俺の仕事だ」と明らかに俺が黒幕ですオーラが全開でしたし。

それでも映像に重厚感があって見入るだけのパワーを持っているので、最後までじゅうぶん観れる作品です。最後まで観ないと話にならない“時間逆行型”ジャンルとしては合格でしょう。

美しい湖の底

その完全犯罪の遂行というシリアス部分のことをお構いなしに、真逆な勢いを見せる本作のユーモア部分。

後部座席に乗せられるリードはなんであんな嫌そうなのかとか、FBIが目撃した裸の男の正体とか、真相は非常にしょうもないオチです。まあ、個々のシーンとしてはすごく楽しいですよ。判事とアンディの対峙場面における緑頭の奴の便所シーンなど、全体的に間(ま)のギャグが上手かったと思います。完全にギャグキャラになっているリードとFBIの会話もアホでいいです。「ジークはこの中で一番賢い」というか、お前らが馬鹿すぎるんだよ…。

一方で、それらギャグが本筋のミステリーサスペンスと全然上手く絡み合っていないのが残念。リードに代わって「ホワイィィィィ!!!」と言いたい。

あらためてサスペンスとギャグを巧みに融合していたナイスガイズ!は良く出来た脚本だったんだなと実感してしまいました。