アメイジング・ジャーニー 神の小屋より
映画『アメイジング・ジャーニー 神の小屋より』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Shack 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年9月9日 
監督:スチュアート・ヘイゼルダイン 

【個人的評価】
 星 3/10 ★★★

あらすじ

愛する妻子に囲まれ幸せに暮らしていたマックだったが、末娘のミッシーがキャンプ中に姿を消してしまう。捜索の末、廃れた山小屋で血に染まったミッシーの衣服が発見され、警察が追っている連続殺人犯の凶行と考えられたが、遺体は見つからなかった。それから年月を経てもマックの悲しみは消えず、残された妻子との溝も深まっていた。そんなある日、マックのもとに奇妙な手紙が届く。

ネタバレなし感想

宗教映画だけれども

キリスト教の影響力が根強いアメリカや韓国では、映画も自然にキリスト教の影響を受けた作品がたくさん作られています。哭声 コクソンウィッチのような宗教要素をストーリーの裏側に感じさせるものから、沈黙 サイレンスハクソー・リッジのようなズバリ“信仰”そのものをテーマにしたものまで、実にさまざまです。

そして、本作『アメイジング・ジャーニー 神の小屋より』もまたキリスト教を題材にした映画であります。

ただし、「題材にした」と書きましたが、本作の“それ”は例として前述した作品群とは全く異なるレベルだということは言及しておかなければならないでしょう。本作は“ガチ”の宗教映画なのですから。

本作の原作は、敬虔なクリスチャンであるウイリアム・ヤングが著した小説で、この小説は自費出版ながらベストセラーとなった異例の作品です。それも宗教的作品ゆえに論争が巻き起こり、注目を集めたためでした。内容も、神様らしき存在から手紙が届き、導かれるままに行動すると、次々と宗教的不思議体験をしていくという話で、宗教に馴染みがない人にはこれだけで拒否反応が出そうです。しかも、この作品は福音派の影響が濃いのですが、そこに独自解釈を加えてしまっているため、当のクリスチャンからも賛否両論が生じています。当然、それを映画化した本作も映画的内容よりもその原作の是非で評価が割れる状態でした。

そんな本作をよく配給側は日本で公開するという判断をしたなぁと思いますが、ほんとどういう判断だったのだろうか…。ただ、本作を擁護しておくと、別にそこまで特定の宗教を宣伝するような色は強くありません。日本の某宗教団体“幸福のなんちゃら”が毎年作る映画みたいな強烈さはないですから、そこは安心?してください。

あと、宗教全然興味ない日本人勢に本作を押せる点といえば、俳優陣が割と豪華なことでしょうか。2016年のアカデミー助演女優賞を受賞した“オクタヴィア・スペンサー”も出演してます。それに“すみれ”という日本人女優も比較的重要な役どころで登場するのも注目ですね。ハリウッドで日本人俳優が出られる機会はまだまだ極端に少ないですから。

キリスト教に大きく関心をよせる人や、熱心な映画ファンは、本作に目を向けるのも良いのではないでしょうか。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

斬新な映像的宗教体験

最初に名言しておきますが、私はキリスト教信者ではないですし、宗教にも詳しくないので、はっきり言って本作を深く語れる自信は全くありません。なので、この感想では、本作の本質的なテーマに踏み込むようなことはできませんし、ましてや議論も無理です。そこらへんは悪しからず。

そんな私ですから、本作で続々と展開される摩訶不思議体験の数々も基本はスルーです。

湖が真っ黒に染まっても「小学校の習字の授業で嗅いだ墨汁の匂いが蘇る」程度ですよ。湖の上を思いっきり走ってみたいな…とか、そんなくだらないことしか思いつかない。

しかし、そんな私でも、「三位一体」などキリスト教の中心的主軸が描かれていることはわかりますし、それを映像としてこういう風に形にするのはなかなか興味深くありました。“オクタヴィア・スペンサー”が神で、“すみれ”が精霊で、のんびり暮らしてるのですから、あらためて考えると凄い世界観だ…。

また、宗教に馴染みのない私でも、世界どんな境遇で暮らす人間でも、立ちふさがる難問が「死をどう乗り越えるか」であり、「罪をどう受け止めるか」です。これらは本作でもストーリーの重要なトピックとして描かれていました。

家族でのキャンプの最中、突然、最愛の娘が行方不明になり、連続誘拐事件の疑いが出て、小屋で血のついた娘の服が発見される。もし自分が…と想像もしたくない絶望的な状況です。最愛の人の死、それをみすみす見逃した自分の罪、それに手を染めた犯人への罪…考えてもまとまらないことはたくさんあります。

この葛藤を描く映画なら他にも多数あって、韓国映画の『シークレット・サンシャイン』やドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』など、私も好きな作品です。ただ、本作の場合はいかんせんストレートに宗教要素を出し過ぎなのが、私はもちろん、大方の映画批評家も引っかかるところなんでしょうけど…。まあ、原作がそうなので、これはしょうがないですね。

アメイジング・ジャーニー 神の小屋より

信仰に悩むのは当然

本作を観て、何より一番心に思うのは、宗教の複雑さです。どうしても「宗教全然興味ない人」にしてみれば、宗教に胡散臭さを持ってしまったり、またはステレオタイプなイメージを抱くことも多いのではないでしょうか。ドキュメンタリー『ジーザス・キャンプ〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜』のような宗教の過激な実態を見せられるとなおさらです。でも、実際はもっと複雑で、信者でさえ、信仰のあり方に人それぞれ悩んでいるんですよね。だからこそ信者でさえもこの映画に賛否両論あるわけで。

本作を観て「宗教って難解だね」という雑な感想しか持てないよという人は、それはそれで究極の真理なんだと思います

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