SCOOP
映画『SCOOP!』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:SCOOP! 
製作国:日本 
製作年:2016年 
日本公開日:2016年10月1日 
監督:大根仁 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★

あらすじ

数々の伝説的スクープをモノにしてきたカメラマンの都城静は、輝かしい業績も過去のものとなり、今は芸能スキャンダル専門の中年パパラッチとして、借金や酒にまみれた自堕落な生活を送っていた。そんなある時、写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者・行川野火とコンビを組むことになる。


ニクイじゃないか

カメラを仕事道具にする人は世の中には色々います。

そんななかでも、本作『SCOOP!』で主題として描かれる“芸能人のパパラッチ”という職業は、劇中の言葉を借りるなら「最悪」な行いだと世間からは思われてきました。でも、それに反して、昔から世間は芸能人の詮索が大好物です。だから、こういう職業はずっと食っていけるわけですから。しかし、現代ではスマホやSNSの普及によって誰もが“パパラッチ”になれてしまう時代になってしまいました。つまり、“芸能人のパパラッチ”という職業は「最悪」というよりも「古い」というイメージに変化したということになります。

本作『SCOOP!』は、この変化を巧みに映画に反映しているという点で独特な魅力を持っている作品といえるのではないでしょうか。1985年に製作された原田眞人監督の『盗写 1/250秒』を原作にした本作ですが、単なるリメイクにとどまらず、現代的世相も映し出したうえでエンタメとしても成り立たせる…大根仁監督らしい手腕です。

主人公の中年男は、酒、ギャンブル、女…とダメな要素の塊。その主人公を演じるのが福山雅治というのがまた効いてきます。福山雅治主演で企画を出してとテレビ朝日のプロデューサーから言われて始まった映画らしいですが、そこに本作のような内容を持ってくるあたり、大根仁監督、なかなかニクイじゃないか…

また、自分も芸能人であり“パパラッチされる側”の人間なのに、しかもクズな男をさらっと演じられる…福山雅治、なかなかニクイじゃないか…。ちなみに、本人はインタビューで「デビューして間もない頃は、金もなく、酒にパチンコにと自堕落な日々を送っていた」と言ってましたが。

他にも大根仁監督作品らしさはケレン味ある演出や、舞台の丁寧な作り込みなど随所で感じられます。個人的には、週刊誌風なデザインの公式サイトや、実際に劇中の「SCOOP!」という週刊誌を発売してしまうプロモーションも楽しくて好印象でした。

監督いわく、編集部のセットの細かい備品なども小ネタをたくさん仕込んでいるそうなので、もう観たという人もあらためてじっくり観賞するのも良いでしょう。






↓ここからネタバレが含まれます↓





3つのアングルで映画を捉える

物語は大きく分けて3部構成になっている本作。

第1部はまさに「ケイパーもの」で、“芸能人のパパラッチ”という職業を全く知らない人の心もガッと掴む素晴らしい導入だったと思います。まず、オープニングがカッコいい。大根仁監督作品はいつもタイトルロゴなどの文字の出し方と音楽が絶妙に噛み合っていて良いですね。

↑大根仁監督作『バクマン。』もカッコいい演出が盛りだくさん。

そして、花火で注目を集めてのビルからのスナイピングショット(盗撮)。そのまま怒涛のように邦画では珍しいカーチェイス。ここでも花火を駆使した追走劇がすごく爽快。完全に非リアル、フィクションであり、実際はこんなことしないのは百も承知。映画的な“楽しければ良し”を優先する感じは潔くて好きです。

この第1部は私は文句なしに「最高」でした。

しかし、第2部からは登場人物の心情ドラマが加わることで、単純に“楽しければ良し”が犠牲になり、違和感が…。いや、登場人物のドラマを交ぜて、物語に深みを出すのは当然の流れなのですが、あんまり上手くいっていない気がしました。

例えば、凶悪事件の容疑者の顔を撮るため、あれこれと編集部で作戦を練る場面。ジャーナリズムがどうとか、ドローンを飛ばしたら法律がどうのこうのといったセリフがありましたが、なぜ今さらそれを気にする? すでに第1部の花火のシーンもガッツリ法律に違反しているでしょう。

結局、容疑者の顔を撮るための作戦もかなり幼稚な戦法で、正直、第1部の花火のような映画的鮮やかさはなかったです。まあ、これについては、主人公ら男たちの時代遅れ感を演出したいという意図もわかりますが。

SCOOP!

そして、問題の第3部。“チャラ源”大暴走パート。リリー・フランキー、なかなかニクイ、いやイってるだけか…。演技している姿が楽しそうで、彼については私はおおむね満足です。

それよりも、シチュエーションです。ここの場面は、見せたいドラマのために相当無理のある状況をご都合的に作っているのが見え見えで、苦しかった。警察の意味のない動き、野火の立ち位置、静が撃たれるに至るまでの流れ…全部が残念。

静が撃たれた瞬間の写真を掲載するか揉める展開も、尊厳だとかそんなこと言ってる場合か?と思うのですが。民間人が射殺されるという日本犯罪史上そうそうない警察の失態だというのはもちろん、そもそも静と野火側にも責任があるでしょう。さすがに今回の一件であの週刊誌は“スクープされる側”になるはずです。たぶん他のメディアが「異常な殺人者と人気週刊誌の隠された関係性!」とか「凶悪事件は自演か? 殺人者と知り合いだった記者の存在」とか書きたてますよ。本来の自然な展開としては、あの写真は責任逃れのために隠滅されて、静の自らを犠牲にして生まれたスクープは社会に知られず終わった…という苦いオチでも良かった気がします。

総論としては第1部は「最高」、第2部・第3部は「?」という感じでしょうか。全体として映像的に面白かったし、福山雅治でピカレスク・ロマン的な物語は新鮮でした。でも、やっぱり福山雅治はクズでも女は何人も抱けてしまうのだなぁ…。カッコいいという時点でクズはチャラにできるという残酷な現実か…。

ちなみに、静が戦場カメラマンに憧れるきっかけとなった、1936年に写真家のロバート・キャパが撮影したとされる「崩れ落ちる兵士」という写真。劇中でも登場し、静の最期と重なる重要なキーアイテムでした。実はあの写真、兵士が銃弾で撃たれた瞬間を撮ったものとされていましたが、疑いもあって、その後の調査で色々と真相が明らかとなっています。映画以上になかなか興味深いので、ぜひ気になる方は調べてみては?

(C)2016「SCOOP!」製作委員会