西遊記2 妖怪の逆襲
映画『西遊記2 妖怪の逆襲』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:西遊2 伏妖篇 
製作国:中国 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年9月8日 
監督:ツイ・ハーク 

【個人的評価】
 星 2/10 ★★

あらすじ

妖怪ハンターの三蔵法師は、孫悟空、猪八戒、沙悟浄を従え、天竺に向かって貧乏旅を続けていた。何かと荒っぽい孫悟空のやり方に三蔵法師が怒り、孫悟空も理不尽な三蔵法師から逃げ出そうとするなど、ひと悶着がありながらも、一行は比丘国に到着する。比丘国の国王は思ったままに行動してしまう子どものような人物で、国王の機嫌を損ねた三蔵法師は孫悟空の力を借りるのだが…。

ネタバレなし感想

続きと言いたいところだけど

新作人魚姫でも持ち味のぶっとんだ映画センスを魅せつけてくれた“チャウ・シンチー”監督。毎回「独創的」という言葉では言い表せない中国(香港)の奇才である彼の、やりすぎなストーリー、やりすぎなキャラクター、やりすぎな映像…それでいてそれらをしっかりひとつにまとめて遜色なくエンタメに転化させる手腕は見事です。しかも、そこに薄っすらと社会批評を匂わすのが凄くて。国家統制が依然厳しい中国でこんな芸当ができるのですから、単なるぶっとんだ映画を作る人というわけではないんですね。

そんな“チャウ・シンチー”監督が2013年に手がけた『西遊記 はじまりのはじまり』は、“チャウ・シンチー”史上最もぶっとんでいるかもしれない珍作でした。ただ、どこがぶっとんでいるかはネタバレになるので言えないんですが…。とりあえず観てない人は観てくださいとしか言えない…。

『西遊記 はじまりのはじまり』は、あの「西遊記」の前日譚を描いた作品で、観た人は間違いなく「えっ、これが西遊記につながるの!?」と言いたくなるものでしたが…なんと続編が公開されました

それが本作『西遊記2 妖怪の逆襲』です。

あの作品の続編ですから「どんな風になるんだ」とワクワク一杯になりますが、「残念なお知らせ」がひとつ。まず、“チャウ・シンチー”は監督しておらず、製作と脚本のメンバーのひとりという扱いです。さらに、ここが重要ですが…続編という感じはしません。いや、ストーリーというかあの世界観は引き継いでいるのですが、それ以上に引き継いでいないものが多すぎて…。メインキャストが違いますからね。あの前作で驚かせてくれた孫悟空も、全然変わってます。これは私の憶測ですけど、“チャウ・シンチー”、ほとんど名前貸しただけなんじゃ…そんな勘ぐりもしたくなります。

それを踏まえたうえで観ることをオススメします。

あと、『人魚姫』で魅力を振りまいてくれた“リン・ユン”が、本作でもヒロインとして登場しますので、『人魚姫』で彼女の虜になった人は注目です。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

香港映画界の大物にバトンタッチ

“チャウ・シンチー”が続編を監督しなかったのは本当に残念ですが、そこで本作の監督をつとめたのはこれまた大物の“ツイ・ハーク”です。

「香港映画界のスピルバーグ」とも称される彼は、中国では有名でしょうけど、日本では知る人ぞ知るという感じでしょうか。そういう私も“ツイ・ハーク”監督作品はあまり観てないのですが…。

香港映画界では賞を受賞するほど評価も高く、1997年にはジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の『ダブルチーム』でハリウッドデビュー。まあ、『ダブルチーム』は最低な映画に贈られるゴールデンラズベリー賞をもらっちゃったみたいですけど。

“ツイ・ハーク”監督といえば、SFXを贅沢に駆使した作品が最近は主流であり、そういう映像センス的にはハリウッド的ともいえ、ゆえに『西遊記 はじまりのはじまり』の続編である本作にも起用されたのでしょう。

その狙いがあったとしたら確かに本作の映像は前作以上に凄かったです。クモ美女怪物とのバトルはその造形も含めて新鮮でしたし、火を噴く偽国王との荒業連発のバトルも大迫力でした。そして何よりもラストの暴走する孫悟空がキングコング的巨大化してからの展開は意味不明です(良い意味で。いや、良いと言っていいのか…)。相変わらずの仏陀無双で、仏陀に怒られないのかな…。全体的に舞台セットや衣装など美術にやたら金を投じていることがわかります。なんとなく観てるぶんには楽しい映像でした。

西遊記2 妖怪の逆襲

これは超大作ではありません

ただ、それ以外は…う~ん、どうだろう。自分の好きな前作成分が消えているのが残念でした。

ストーリーが単調で、仲間割れしては妖怪と戦って、また仲間割れして戦っての繰り返し。意外性も起承転結のフラグ的演出もなく、面白みに欠けます。ドラマも薄いですし。

個人的には“チャウ・シンチー”監督作品の特徴である「小汚さ」がないのが…。前作もそうでしたが、登場人物全員がどこか小汚いのが印象的でした。見た目もそうですし、中身も…どこか欠落を抱えていて、そこが愉快で楽しい。その最たる存在が孫悟空だったわけで…それが本作だと普通にカッコいいです。絶対に前作の見た目のままのほうが、面白いと思うのだけどなぁ。

また、本作には前作にあった「残酷さ」もありません。前作は、孫悟空、沙悟浄、猪八戒といい、あどけない子どもまで含む民間人を容赦く殺す、それこそドン引きするほど、極悪非道の限りを尽くすサイテーな奴らでしたが、本作はずいぶん普通に。単なるギャグキャラに成り下がってました。とってつけたように前作と同様にまたGメンの曲とともに映画が終わってましたが、それさえあればいいのか…。

こう、映画全編にわたって新しく挑戦しようという感じがしないというか、例えるなら、前作の素材を使った同人作品みたいに見えたんですよね

本作の映像面のパワーアップも、この作品との相性とは違う気がして。“チャウ・シンチー”は前作の映像の派手さも茶化すことで活かしていたように思います。効果音もピコピコ可愛くしてましたし。つまり、ハリウッド的な映像進化は求めていなかったのではないでしょうか。単に映像を派手にすればいいものでもなかったわけです。

あの大ヒット作の続編!という大作っぽい外面に惑わされず、同人感覚で観るのが適切なのかもしれません。そういうことにしておきましょう。