ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!
映画『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Renegades 
製作国:フランス・ドイツ 
製作年:2017年 
日本公開日:2018年1月12日 
監督:スティーブン・クォーレ 

【個人的評価】
 星 4/10 ★★★★

あらすじ

1995年、紛争末期のサラエボで大胆な戦略を展開するマット率いる5人のネイビーシールズのもとに、ある日、湖に重さ27トン、総額は3億ドルに及ぶナチスの金塊が眠っているとの情報が入ってくる。この金塊があれば、戦争に苦しむ避難民を救うことができると、メンバーの1人が恋に落ちたウェイトレスから懇願された5人は、金塊を奪取するため作戦を計画する。

ネタバレなし感想

だいぶ盛ってます!

新年最初の1月は映画配給側もどうせ小難しい映画なんて観たくないでしょ?と思っているのか、やたらと知能指数の低そうな映画ばかり公開されている気がします。

人間ミンチ肉ハンバーガーは美味しいね!なスパイ映画『キングスマン ゴールデン・サークル』、ミシェル・ロドリゲスが性転換して女になった!な『レディ・ガイ』、なんかわからんが異常気象で大変だ!な『ジオストーム』、アベンジャーズをロシアがパクるぜ!な『ガーディアンズ』…とかとか。

そんな個性派揃いの中でも、本作はタイトルだけで見れば知能指数ダントツ最低クラスです。

その名も『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』

テレビ番組の煽り文句みたいなサブタイトルですが、もうあらすじとか解説する必要はないですね。ネイビーシールズがナチスの金塊を奪還するんです。

去年公開された戦争映画で『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』という、これまたぶっとんだ邦題の作品がありましたが、こちらは凄惨な史実を基にした非常にまじめで硬派な戦争ドラマでした。
『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』感想(ネタバレ)…エンスラポイド作戦とは何だったのか
でも、本作『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』は、完全にフィクション。『レオン』や『LUCY/ルーシー』の監督だった“リュック・ベッソン”が原案・脚本・製作を担当したことからも、そうとうな大味っぷりが予想できますが、だいたいそのとおりです。“だいたい”というのが重要ですけど…。

本作の場合は日本の配給側の脚色というか、宣伝アレンジがとにかく極端すぎます

予告動画とか見てもらえればわかりますが、やりたい放題です。「第九」とか流しちゃって、超ノリノリ。予告やポスターでは「ド派手」を強調していかにも単純明快なバカ映画っぽい雰囲気を全開にしてます。

しかし、これ、かなりのPV詐欺になってますからね。その本編との食い違いっぷりは『スーサイド・スクワッド』以上です。まあ、でもこうしないと絶対に客、入りませんから。配給も大変なんです…。

はい、これでこのブログでは忠告しましたから、少なくとも「ネイビーシールズに一杯食わされた!」みたいな声は減る…かな。とりあえずネイビーシールズがなんかしている姿だけでも見れれば幸せというのなら、この映画はオススメです。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

ジャンルが行方不明

『反逆のネイビーシールズ ナチスの金塊を勝手に奪還しちゃいました!』、いかがだったでしょうか。

ものすご~くジャンルの掴みづらい映画ですよね。

最初はいかにも重厚な歴史ドラマといった感じで始まります。ところが舞台が1995年のサラエボに変わった瞬間、なぜか急にバカになる。「PRESS」と堂々と付けてはいるものの、明らかに屈強な肉体から報道関係者ではないことがバレバレな男たち。そこからの潜入、誘拐、脱出。怒涛の『エクスペンダブルズ』的な展開。戦車で街中を爆走してカーチェイスです。終始なりやまない勇ましい音楽といい、冒頭のアレは何だったのかと言いたい弾けっぷり。あの、わかってると思いますけど、ネイビーシールズ、実際はこんなバカじゃないですからね。少なくとも戦車をこんな乗り回しはしないです。

そしてこの後は“J・K・シモンズ”演じる上司に『セッション』並みに罵倒されたあと、なんやかんやあってロマンス要素が顔をのぞかせ、デート気分な水中探索。ここで回想シーン。ダムを爆破して泣く泣く街を水没させた辛い過去が明らかになるわけですが、ここも地味にツッコみポイント。なぜかディザスターパニック映画風に描かれます。あんな勢いで水流が押し寄せたら、街はあとかたもなく壊滅するだろうに…。

それでいよいよ「ナチスの金塊を奪還せよ!」なノリがスタートですよ。まあ、途中で、ヘリvs戦闘機という“どうかしているバトル”が挟まれますが、あれは何だったんだろう…。しかも、戦闘機がヘリの機銃に負ける謎。

その後は海底作業での金塊奪取がメインに。ここまでくると完全に「ミッションインポッシブル」的なチーム映画になります。ネイビーシールズでありながらドンパチはあまりしません。今までの戦車やヘリでのトリガーハッピーっぷりは何だったのか。その代わり、水中格闘とかを挟みつつ、無事、作戦成功。最後は良い話風に終わってました。

なんでこんなジャンルのモンタージュみたいな作品になったのかは不明ですが、それゆえにどこに視点を置けばいいのかわからず評価しづらい映画でした。それでもパーツパーツで好きなシーンがあれば悪くない印象のような気もするし、おそらく多くの人が楽しいと思うドンパチ展開のクオリティは良いですよね。願わくば序盤の戦車チェイスのノリがずっと続けば良かったのにとも思いますが…。

ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!

バカ映画に徹しなかった理由

本作が単純なバカ映画にならなかった理由として、大きな影響を与えているのはやはり監督の“スティーブン・クォーレ”でしょう。

“スティーブン・クォーレ”監督は、死亡フラグがどこにでもあることを教えてくれる『ファイナル・デスティネーション』シリーズの5作目『ファイナル・デッドブリッジ』の監督を務めましたが、個人的に鮮明なのはその後に監督した『イントゥ・ザ・ストーム』

こちらは竜巻を題材にしたディザスターパニックなのですが、どうしてもこのジャンルは大味になりがち。ところが、『イントゥ・ザ・ストーム』は意外と言ったら失礼ですけど、地に足のついた真面目なドラマが展開されて面白かった作品でした。VFXを含めた映像の使い方もただ闇雲に派手にしているだけの某大作とは違って、最小限の素材でカタルシスにつながる見せ方をしていて好印象。


きっとその手腕を見込んでの抜擢だったはずです。

実際に『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』は、序盤の戦車チェイスの掴みは抜群だし、何よりも人がぽんぽん気持ちよく死ぬのが良かったなと。敵兵が主人公たちの操縦する戦車の砲にしがみついてグレネードを投げようとしたタイミングで停車して自爆!とか、ラストの敵のボードをヘリ機銃でドカーン!とか、景気がいい。“スティーブン・クォーレ”監督っぽい演出です。

一方で、いかんせん今作はスケールがでかすぎたのか、真面目なドラマ部分が上手くハマらなかったかな。原題は「Renegades」で「背いた、裏切った者たち」という意味で、決してバカだけじゃない信念もあるし、だからこそのラストの利益を選ばない行動もわかるのですが…。でも、どう考えても今回の行動は国際問題になるし、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の悲惨な歴史を知っちゃうと、そんなことしている場合かと言わざるを得ないしで…。少なくとも予告動画のような「第九」を流す気分ではないのでした。

“スティーブン・クォーレ”監督には今度はもう少し抑えた世界観で作品を作ってほしいところです。

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