アウトサイダー
Netflix映画『アウトサイダー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Outsider 
製作国:アメリカ 
製作年:2018年 
日本では劇場未公開:2018年にNetflixで配信 
監督:マーチン・サントフリート 

【個人的評価】
 星 3/10 ★★★

あらすじ

元米兵のニックは軍を脱走後、日本の刑務所に収監されていた。ある日、脱走を図ろうとする清という男を助けたことにより、釈放後に清の導きのもと大阪のヤクザである白松組の世話を受け、後に正式な組員となる。そして、神戸の勢津会との抗争の中で、アメリカ人でありながら日本の闇社会であるヤクザの道を進んでいく。

ネタバレなし感想

ジャレット・レト、ヤクザになる

今やNetflixオリジナル映画の全盛期であり、多種多様な作品が毎月のように配信されていて、もうちょっとでも目を離すと見ていない作品がどんどん溜まっていって「マイリスト」が大変なことになっていくのが最近の困り事。

そんな中でも、本作『アウトサイダー』は一際変わった注目作です。とくに私たち日本人にとっては。

その理由は、海外が製作した「日本が舞台のヤクザ映画」で、出演陣も、海外作品に多数出演してハリウッドでもメジャーな浅野忠信のほかに、椎名桔平、忽那汐里、大森南朋、田中泯ら、なかなかの日本人だらけなメンツなのです。

お話は、ヤクザの闇社会にふとしたきっかけで身を投じることになった一人のアメリカ人を描くもの。主人公となるアメリカ人の男を演じるのは、あの『ダラス・バイヤーズクラブ』で驚異の肉体改造を見せたり、『スーサイド・スクワッド』では新しいジョーカーを熱演したり、『ブレードランナー 2049』では不気味な支配者を怪演したりと、七変化の演技を得意とする俳優“ジャレット・レト”。“ジャレット・レト”がスーツを着て、日本語しゃべっているのですよ。なんだこの違和感。“ジャレット・レト”なんて普段の出演作のキャラの多くが「Outsider」感が強いのに、余計に色濃くなっちゃってます。 

オール日本ロケで撮影したというのも特色で、撮影地は福岡県北九州市っぽいですね。だから結構リアルな日本ではあるのですが、やっぱり「ブレードランナー」感は引きづってます。

で、一番意表をついているのが、監督。本作でメガホンをとったのは“マーチン・サントフリート”なのです。知らない人は誰?だと思いますが、あの『ヒトラーの忘れもの』という知る人ぞ知る名作を手がけた人ですよ。
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なんでも本作の製作は紆余曲折あったようで、当初、マイケル・ファスベンダー出演、ダニエル・エスピノーサ監督で進んでいたものの実現には至らず、後にトム・ハーディ出演、三池崇史監督という企画となり、でもこちらも両者ともに降板。そして、今の着地のようです。

ダニエル・エスピノーサはまあわかるし、三池崇史なんてドンピシャだなと思うのですが、なんで“マーチン・サントフリート”?と今でも疑問が拭えません。

それは置いといても、滅多にない異色作なので、変わり種としては楽しめるのではないでしょうか。

“ジャレット・レト”がどんな日本語を話すのか、注目してください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

これは日本の古典?

予想はしていましたけど、やっぱり日本描写は“外国人の考える日本”にきっちり収まっていました。なんというか、外国人が好きそうな日本要素を全部突っ込みましたという感じ。脚本考案の段階で、自分たちの知っている日本要素を羅列して全てシナリオに入れたんじゃないかと疑いたくなるくらい、律儀に揃っていましたね。

無かった日本要素は「SAMURAI」と「NINJA」くらいです。でもこれが出てきたら、完全に“ウルヴァリン”の出番になってしまうからダメか…。

海外の本作に対する感想を読むと「日本の古典を押さえている」と肯定的なコメントもあって、そういう風に受け止められているならいいのかな。

正直、“外国人の考える日本”からいい加減脱却してくれよとは思いましたが、それ以上に明らかにこれは変だと気づくだろうという日本描写もあって、そこはなんとかしてほしかったです。

例えば、「オトシマエ」と称して“指詰め”するシーン。几帳面に包丁を使って、いとも簡単にストンと切れるくだりは、骨ないの?と思ってしまうほどあっさり。あの指よりもウィンナーの方がまだ切りづらいですよ…。

相撲を観戦しながらの組どうしのトップが情報を交わす場面も、別に無理に相撲を出さなくても…と思ったり。闇組織が人目の多いスポーツ鑑賞の場で情報交換するのは変だというくらい、外国人でもわかるだろうに。

また、日本で偶然に出会った主人公ニックの友人が、沖縄駐留兵であるにもかかわらず、大阪にいるのは、あれですか、ちょっと飲みに飛行機で大阪に飛んでみたのですかね…。

これでは『007は二度死ぬ』(1967年)の頃から何も変わっていないです。「ステレオタイプかもしれない」と心配する海外のコメントもありましたが、それ以前に根本的に間違えているのは改善の余地ありでした。

アウトサイダー

タスケテー!

そんなことをウダウダと書きましたが、どうでもいいんです。“ヘンテコ日本”は愛嬌として楽しめるだけの包容力が日本人にはありますから。私が一番問題だと思うのは、本作は普通にストーリーが雑じゃないかという点です。

冒頭、刑務所に入れられてるニック。なぜ元米兵が日本の刑務所に?という疑問はさておき、その後の懲罰房で出会った清に「自殺を装って病院へ運ばれて逃げ出す計画」を助けてほしいと言われるニック。ここでいきなりさも当たり前のように刃物を取り出して切腹する清。自殺って切腹なの!?とびっくりしましたが(たぶんニックもびっくりしたと思う)、そこでニックは精一杯の能力を発揮して叫ぶのです。「カンシュー!オーイ!タスケテー!」

そして、やたら自然いっぱいな山間にある刑務所を出所するニックは、白松組に礼を言われ、仲間に迎え入れられます。あれっ、なんかした? 人を呼んだだけでここまで待遇されるのも変だし、どうせならもっと後に発揮されるニックの暴力性で刑務所を脱出する派手なシーンでも入れれば良いのに。これは明らかに「切腹」の描写を入れたかっただけですね。

また、終盤、オロチの裏切りで、組長をめった刺しにされ、スナイパーの狙撃で足を撃たれるニック。でも、その後、割と歩けていて、それどころか身長以上の壁を乗り越えることもやってのけてました。自動回復能力持ちだったのかな。

極めつけは、刀を持って敵陣に単身で乗り込むニックが、俺にオロチを殺させてほしいやら、お前は外人、アウトサイダーだやら、問答している間に、あっさり斬られるオロチです。迂闊! 周囲の敵もなぜか棒立ち。きっとショックだったのでしょうね。

こういうサスペンスにおける「?」な部分が多くて、外国人受けする日本要素を出しました以外の魅力が乏しいのが残念。ある海外の批評家が本作を「generic yakuza story」と評していたのですが、全くそのとおりです。確かにヤクザ映画ですけど、全然新しくない。

三池崇史が監督していれば…と悔やまれます。

日本人俳優はアウトサイダーじゃない

ただ、良かった点もあります。それはちゃんと日本人俳優を起用している部分。これは大きな進歩です。

本作は思った以上に日本語が頻繁に登場して、英語至上主義なところがあるアメリカ映画界では異例です。しかも、舞台が大阪なので関西弁になっているのもまた新鮮。だから、日本語しゃべらんかいと言われていたくらい“ジャレット・レト”があまり日本語を話さないのも、正直、正解だったなと。だってひとり標準語を話すのも変ですし。まあ、関西弁をしゃべる“ジャレット・レト”が見たかったのも密かに思ってましたけど。「ほんまかいな」とかね。

メインキャストの浅野忠信、椎名桔平、忽那汐里が出席した、ロサンゼルスのNetflix本社で開催されたスペシャルスクリーニングイベント。ちなみに主演を務めたジャレッド・レトは、ヨーロッパでの音楽活動が理由で欠席(彼はロックバンドもやってます)。

そこで忽那汐里は、「(ハリウッド映画で)アジア人の役者がちゃんと役を貰えるということ自体は、すごくポジティブなこと。日本人の役は日本人ができたらいいな。オーディションで勝ち取っていけるように頑張ります」と発言したそうです。こういう意見の発信を、20代の若手日本人俳優がするようになったこと自体、時代の変化じゃないですか。

今のハリウッドは雇用機会均等の観点から、これまで日の光を浴びていなかったマイノリティな人種が活躍するチャンスがどんどん生まれようとしています。もはや日本人俳優をハリウッド映画界では「アウトサイダー」にはさせません。

だから日本人俳優の皆さんもガンガン英語を学んで頑張っていってほしいです。応援してます。

©Netflix