ザ・マミー 呪われた砂漠の王女
映画『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Mummy 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年7月28日 
監督:アレックス・カーツマン 

【個人的評価】
 星 3/10 ★★

あらすじ

古代エジプトの王女アマネットは次期女王になる約束を裏切られた怒りから闇に堕ち、生きたまま石棺に封印されてしまう。それから2000年後、中東の戦闘地帯で石棺が発見される。発掘に立ち会った米軍関係者ニックは、考古学者のジェニーらとともに輸送機で石棺をイギリスに運ぼうとするが…。

ネタバレなし感想

「ダーク・ユニバース」始動

アメリカ映画界では「ユニバース」が空前の大ブームです。

「ユニバース」というのは、同じ世界観の中で複数の作品を展開させて、本来作品の異なるキャラクターが共演したり、ストーリーがリンクし合ったりする映画企画のこと。単発のクロスオーバー作品とは違い、かなりの大規模なシリーズ展開を見せるのが特徴です。「シェアード・ワールド」とも呼ばれます。

『アベンジャーズ』でおなじみの「マーベル・シネマティック・ユニバース」の大成功がきっかけとなり、バットマンやスーパーマンなどからなる「DCエクステンデッド・ユニバース」が後を追って続くなど、この前までアメコミが主流でした。

しかし、最近はワーナー・ブラザースが配給するゴジラとキングコングからなる「モンスターバース」が始まり、アメコミの枠を超え始めています。また、スプリットのM・ナイト・シャマラン監督や、コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団のケヴィン・スミス監督など、個人レベルでユニバースを企画し出す人も現れ、ちょっとしたカオスです。もう「あれっ、これもユニバース?」とか疑っちゃいますね。

そんなユニバース・バブル時代にて、ユニバーサル・スタジオもまた「ダーク・ユニバース(Dark Universe)」という企画をスタートさせました。

これは往年のクラシック・モンスターホラー映画の数々を現代版にリブートして、ユニバース化させようというもの。

現時点で公表されているリブート予定の作品群は以下のとおり(ただ、まだ企画がはっきりしていないようで、追加されたり、削除されたりと、変更はあると思います)。
『オペラの怪人』(1925年)
『ノートルダムのせむし男』(1923年)
『フランケンシュタイン』(1931年)
『魔人ドラキュラ』(1931年)
『ミイラ再生』(1932年)
『透明人間』(1933年)
『フランケンシュタインの花嫁』(1935年)
『狼男』(1941年)
『大アマゾンの半魚人』(1954年)
公開の時期が古いので観ていない人も多いでしょうが、誰しも名前だけは聞いたことがあるような、どれも超有名な古典的名作です。

このモンスターたちがどう関わり合っていくのか、全くの予測不可能ですが、たぶんアベンジャーズみたいに全員集まって戦ったりはしない…と思いたい。このユニバースには、大物映画製作人から有名俳優までが名を連ねており、かなり力の入った企画になると考えられます。

その「ダーク・ユニバース」の記念すべき第1作が本作『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』です。本作は『ミイラ再生』(1932年)のリブート。実はこの原作映画はすでに何度もリブートされていて、有名なのは1999年からの『ハムナプトラ』シリーズでしょう。

↑日本でも興行収入が18億円の大ヒット。

最新ミイラ映画の主演はハリウッドの知らぬ人はいない暴れん坊中年“トム・クルーズ”。肝心のモンスター“ミイラ”を演じるのは、『キングスマン』でも活躍が目立った“ソフィア・ブテラ”。彼女は相変わらず抜群の体操的動きを本作でも魅せてくれます。そして、もうひとりの暴れん坊(こっちはオヤジの年齢だけど)の“ラッセル・クロウ”も登場。何役か書くだけでネタバレになるので書きませんが、“ミイラ”にも負けないクセの強いキャラです。

「ダーク・ユニバース」のプロローグ的位置づけとなる本作。じゅうぶん注目に値する一作ではないでしょうか。

  





↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

始めの一歩でコケた

こんなことを言うのもあれですが、事実なのでハッキリ書きますけど、本作は本国アメリカでは大不評でもって迎えられました。

「発想がダメすぎるブロックバスター」「他のユニバースの粗悪なコピー品」「トム・クルーズ主演映画史上、最低の出来」「この映画自体が墓荒らしだ」と、批評家からは散々な言われよう。しかも、酷評しているのは批評家だけではなく、一般観客も反応はイマイチなのでした。

本作を駄作にしている理由は山ほどあるのですが、一番の原因は本作が「ユニバース」だからだと思います。本作はユニバースありきの脚本であり、単体としてはびっくりするほど消化不良で終わります。加えて、ユニバースとして横に展開するための要素が遠慮もなく顔を出すので正直、邪魔です。その最大の犯人が、対モンスター組織「プロディジウム」。ユニバースにはこの手の組織が付き物ですけど、「モンスターバース」のような怪獣映画なら元から研究機関が出てくるのでまだわかりますが、本作の場合はどうなの…。ちょっと安易すぎやしませんかね…。しかも、本作の場合はジキル博士が後半、大暴れするので、メイン怪物のはずのミイラのアマネットの立場が薄れて可哀想なことに。“ラッセル・クロウ”、怖いんだよ…。

本作を観てよくわかりましたが、ユニバースに向いている作品の特徴ってありますよね。まず、単品でも世界観が確立していて充分面白いこと。次に、キャラクター人気が非常に高いこと。本作はそのどれも兼ね備えていません。ミイラは確かに有名ですけど、特定のキャラクターではないですからね。

あらためて他のユニバースは上手く配慮しながらやっているんだなと。「マーベル・シネマティック・ユニバース」みたいに、エンドクレジットの最後にさりげなく映像が…で良かったのに…。

ザ・マミー 呪われた砂漠の王女

アドベンチャー魂はどうした?

前のリブートである『ハムナプトラ』シリーズは、アメリカでも日本でもヒットしましたが、それは当時の最新の映像技術を駆使したアドベンチャー大作にアレンジしたからでした。

本作にもそういう要素を期待するのは当然。でも、そんなワクワクの気持ちで宝箱を空けると中身は空です。未知の世界を大冒険!という展開は詰まってません。

じゃあ、アクションはどうかというと、これも地味。“トム・クルーズ”主演「ミッション:インポッシブル」シリーズと比較するのはあれにしても、アクションに新鮮さはなく、どこかで見たことあるようなものばかり。序盤の銃撃戦からの空爆とか(遺跡が頑丈です)、飛行機墜落とか(飛行機が頑丈です)無駄に派手なのですが…。

個人的には、カラスやネズミが大量に襲ってくるB級映画的場面は好きなんですけど。

ギャグは子ども向け

オリジナルの面影はゼロですが、本作は一応モンスターホラー映画が原作。恐怖演出に頑張って面白さを探してみるものの、そもそも本作は全年齢が見られる映画になっているだけあって、尖った表現はないです。残酷なことをしているシーンもあるのですが、そこでは異様に画面が暗い。「ダーク・ユニバース」のダークってそういう意味なのかな…。

というか、本作は一体どんな観客をターゲットにしていたのでしょうか。この映画、予想外にギャグが挿入されるのです。それも小学生向け漫画かというくらいの幼稚なコメディ。霊安室で目を覚ました全裸のニック、ワンパンでまさしく漫画のように吹っ飛ぶニック、アマネットに襲われてくすぐったくなるニック…。“トム・クルーズ”、お前は子どもか…。でも、この無邪気さ、作品評価は別にして、嫌いになれない。アイツ…。

クリス・ヴェイルは死体になってからの方が存在感を発揮していましたね。

ニック、ジェニー、アマネットの三角関係を匂わす演出には、大人も苦笑ですよ。

登場人物でいえばアマネットを演じた“ソフィア・ブテラ”が輝いていましたが、私の勘ですが、“アレックス・カーツマン”監督、“ソフィア・ブテラ”のファンなんじゃないか。意味もなく彼女が映るシーンが多かったような。鎖で縛られている姿が見たかったのかな(邪推)。

ザ・マミー 呪われた砂漠の王女

呪いは続く(評価的な意味で)

完全に今年のゴールデンラズベリー賞(最低な映画に贈られる賞)の筆頭候補になってしまった本作。まあ、それでも本作だけなら「駄作だったね」の一言で忘れられるのでよいのです。本作だけなら…。

問題は「ダーク・ユニバース」の行く末ですよ。企画が大きく修正されなければ、第2弾は『フランケンシュタインの花嫁』のリブートになる予定で、監督は日本でも大ヒットを記録した実写美女と野獣を手がけた“ビル・コンドン”。

これは「ユニバース」の失敗例になってしまうのか。本作が解放してしまった“面白くないという呪縛”を次作に引き継がせないでほしいものです。

でも、ほら、どうしても収拾がつかなくなったら「ゴーストバスターズ」に来てもらったらいいんじゃないかな(会社が違う)。

(C)Universal Pictures