ロスト・シティZ 失われた黄金都市
映画『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Lost City of Z 
製作国:アメリカ 
製作年:2016年 
日本公開日:2018年1月27日 
監督:ジェームズ・グレイ 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★

あらすじ

20世紀初頭、イギリス。探検家パーシー・フォーセットは、周りに馬鹿にされながらも、アマゾン奥地にあるという黄金で覆われた古代都市エル・ドラードの存在を信じていた。過酷なジャングルで度重なる命の危機にもひるむことなく、アマゾンの秘境に何度も足を踏み入れるフォーセット。一方、旅を共にした仲間達や、協力的だったフォーセットの妻や息子達さえも、次第に彼に愛想を尽かしていく。

ネタバレなし感想

B級映画ではありません

全国の「食人族映画」好きの皆さん、新しいご飯の時間ですよ。といっても、今回のメニューは『グリーン・インフェルノ』のようなテンション高めでも、『マッドタウン』のようなアート系でもありません。結構、真面目です。

それが本作『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』

この映画、正直いってタイトルで損をしています。なんかB級映画に見えますよね。とくに「Z」の部分が。加えて「失われた黄金都市」とくれば、完全にアクションたっぷりの秘境探索アドベンチャーに思えるじゃないですか。遺跡で突然ゴロゴロ転がってきた大岩から逃げたり、針がびっしりの落とし穴に落下しそうになったり、蛇だらけの暗い部屋から脱出したり、謎の摩訶不思議パワーで動き出した骸骨と戦ったり…。

しかし、本作はそんなファンタジックなアクションは一切ないのです。

本作は実在の探険家「パーシー・フォーセット」を描くノンフィクション小説が原作となっています。パーシー・フォーセットという人物は聞き覚えがなかったのですが、実はかなりの有名人です。アーサー・コナン・ドイルの「失われた世界(ロストワールド)」や、ジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグの『インディ・ジョーンズ』シリーズといった有名作に登場する探検家のモデルだと言われています。探検家という職業のステレオタイプなイメージを確立するうえで素材になった人なのです。

本作はそんな彼が探検家として活躍し始める1900年代初めから物語はスタートし、探検家としての葛藤や苦悩、社会からの扱われ方を非常に丁寧に描き出していきます。

製作したのは『ムーンライト』など傑作を生み出している“ブラッド・ピット”率いる「PLAN B」。クオリティについては保証できます。主人公を演じるのは、『パシフィック・リム』や『キング・アーサー』でおなじみ“チャーリー・ハナム”。『スパイダーマン ホームカミング』の“トム・ホランド”も出番が少なめながら印象的に登場します。

で、それより食人族はどこにでてくるのかと気になっている人、大丈夫、ちゃんと出てきます。ジャングルに潜む秘境のような隠れた名作をぜひ探索してみてください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

探検家のリアルな姿

本作で一番興味深いのは、リアルに描かれていく当時の時代の中で「探検家」という職業がどういう位置づけだったのかが明らかになっていくことです。

探検家という職業に対して現代の世間が抱くイメージは「情熱と冒険心で危険をものともしないチャレンジャー」という感じではないでしょうか。しかし、少なくともこの映画の時代ではそういうものではなかったことがわかります。

パーシー・フォーセットは軍人でした。なぜ軍隊に所属する人間が探検家になるのか。それは功績をあげるためだったんですね。冒頭で伝統的なシカ狩りをして優秀な成績をおさめる彼ですが、とくに戦争もない時代では高まる向上心を持て余すばかり。そんな彼に舞い込んできたのは、アマゾン上流のブラジルとボリビアの国境線を測量するという任務。成功すれば軍人としては勲章ものだという魅力に惹かれて未開の地へ旅立ちます。

このように軍人としてのキャリアアップが目的であり、探検自体には何の興味もないのでした。

ちなみに軍人以外に当時探検家になる人といえば宣教師がいました。その目的はもちろん察しのとおり、宗教の普及です。探検は二の次なんですね。

ところがパーシー・フォーセットは最初の探検で危険な目に遭いながらもその魅力に憑りつかれていきます。そして、しだいに軍人としてのキャリアアップはどうでもよくなり、探検そのものが目的になってしまいます。

それがハッキリ示されるのが、“ソンムの戦い”のシーン。当初は戦争もないので探検して功績をだそうとしていましたが、探検途中で第一次世界大戦が勃発。皮肉なことに探検なんかしなくても軍人として名を残す格好の機会を得ます。そして、パーシー・フォーセットが駆り出されたのは、第一次世界大戦における最大の会戦といわれる“ソンムの戦い”の激戦地。ところが、彼は戦闘中にも関わらず上の空。もうすでにジャングルに戻りたくてしょうがないという、探検中毒になっているのでした。

ロスト・シティZ 失われた黄金都市

差別のない黄金都市はあるのか

また、本作は「探検する側」だけでなく「探検させる側」も描いています。

そこで重要になってくるのが「王立地理学会」という組織です。この組織はあの進化論で有名なチャールズ・ダーウィンも所属していた由緒ある学術組織なのですが、“王位”とあるだけあってその構成員や支持層は上流階級の人間たちでした。

感の良い方ならわかるように、この時代の探検は「植民地支配」と密接に関係があります。言い方が悪いですが、雑に表現するなら、王立地理学会は「上流階級層が外国で発見したものを自慢するための同好会」みたいなものなんですね。今の科学者主体の学会とはかなり異なる存在です。

そんな組織ですから当然のように未開のジャングルに暮らす先住民なんてものは“下等”だと思っています。しかし、パーシー・フォーセットは高度な文明が存在する証拠を目撃したと報告。一方で、王立地理学会はその発見を信じようとはしません。自分たち白人が散々差別してきた民族(動物扱いなのですけど)が文明を持っていたなんて信じられないわけです。

それでもパーシー・フォーセットは現地で出会った食人族とも対等に交流し、ひとつの文化を持った民族として尊重します。実に良いやつです。

ところが、本作は食人族には優しいパーシー・フォーセットでさえも差別している存在があることを匂わせています。それは女性です。実は王立地理学会はもともと女性の入会を認めておらず、非常に男尊女卑なコミュニティでした。そして、パーシー・フォーセットもまた御多分に漏れず、妻に対して偏見たっぷりな発言をしてしまいます。

このように探検をとりまく隠された差別の問題をしっかり浮き彫りにした真摯な一作でもありました。

監督の“ジェームズ・グレイ”は、1900年代初期にアメリカに渡る移民を主題にした『エヴァの告白』で高く評価された人です。今回、題材が探検家となって本人もどう映画化すればいいかそうとう悩んだそうですが、ちゃんと作家性をフルに発揮して堅実に作品に仕上げているあたり、素晴らしい実力だと思います。

“ジェームズ・グレイ”監督過去作もぜひおすすめです。

↑『エヴァの告白』は、マリオン・コティヤール主演作。

(C)2016 LCOZ HOLDINGS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.