LOGAN ローガン
映画『LOGAN ローガン』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Logan 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年6月1日 
監督:ジェームズ・マンゴールド 

【個人的評価】
 星 9/10 ★★★★★★★★★

あらすじ

ミュータントの大半が死滅した2029年。長年の激闘で疲弊したウルヴァリンことローガンは、アメリカとメキシコの国境付近で雇われリムジン運転手として働き、ひっそりと暮らしていた。そんなある日、ローラという少女をノースカロライナまで連れて行ってほしいと頼まれる。

ご苦労さまでした

17年…それだけあれば生まれた子どもが高校を卒業して大人になるのに充分な時間です。

2000年に『X-メン』でウルヴァリン役としてブレイクした“ヒュー・ジャックマン”も、17年の時を経ていよいよ卒業の時が来ました。“ヒュー・ジャックマン”がウルヴァリンを演じるのは最後だと表明した本作『LOGAN ローガン』の公開は感慨深いものがあります。

この17年間、『X-MEN』シリーズでウルヴァリンを一貫して演じ続けたわけですが、他のアメコミを見渡しても同じ役者がずっとひとつのキャラにとどまることはなかなかありません。まさにウルヴァリンの設定と同じく、その身でアメコミ界を長年渡り歩いてきたベテランといった感じです。“ヒュー・ジャックマン”の俳優人生はウルヴァリンと共にありました。

本作『LOGAN ローガン』の監督は『ウルヴァリン: SAMURAI』から続投する“ジェームズ・マンゴールド”

↑ヤクザ、忍者、侍と戦うローガンの話。

“ジェームズ・マンゴールド”監督といえば、私の中では器用な監督というイメージです。『君に逢いたくて』(1995年)や『17歳のカルテ』(1999年)のようなドラマもあれば、『ニューヨークの恋人』(2001年)のようなタイムスリップ系の恋愛コメディもあるし、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005年)のような伝記映画もあり、『3時10分、決断のとき』(2007年)のような西部劇さえも手掛ける。さらに『コップランド』(1997年)ではシルヴェスター・スタローン、『ナイト&デイ』(2010年)ではトム・クルーズと、大物俳優の主演起用もなんなくこなす。ウルヴァリン並みの手練れです。

ただ、“ヒュー・ジャックマン”関連でいうと、『ニューヨークの恋人』にてウルヴァリンでヒットしたばかりの“ヒュー・ジャックマン”を主演にしているという縁深さが特筆点。そう考えると本作『LOGAN ローガン』の監督が“ジェームズ・マンゴールド”なのも運命的なものを感じます

本作はデッドプールに続いて映倫区分が「R15+」。下ネタがあるから…なわけなく、もちろん残酷だから。とくに今作で登場するローラという少女が凄い凄い。幼げな少女が残忍な殺しをしまくるといえば『キック・アス』のクロエ・グレース・モレッツが演じるキャラがいましたが、それ以上です。刺す刺す刺す刺す首チョンパの乱れうち。よくぞここまでやってくれた!と褒めたい。

こうやって聞くと初見お断りなマニアックな映画なのかなと思うかもしれないですが、実は内面は誰にでも普遍的に突き刺さる話だったりします。個人的には近年のアメコミ映画のなかでもトップクラスに良く出来た脚本だと思うくらい。『X-MEN』シリーズを観ていなくても感動できるドラマだし、無論『X-MEN』シリーズを知っていれば感涙は不可避。

最後の「X」の男の雄姿をぜひその目に刻み込んでください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





老老介護

とりあえず“ヒュー・ジャックマン”は忘れよう(前半で書いたし)。

“パトリック・スチュワート”ですよ。彼もまた『X-メン』でチャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)を演じ続けてきた歴史深い俳優。本作は『LOGAN ローガン』というタイトルではありますが、実はチャールズの映画でもありました。

ミュータントのための学園を作り、力の使い方がわからないミュータントの子どもたちを正しい道へ導いてきた彼ですが、2029年ではすっかりおじいちゃん。最強のテレパス能力を有する頭脳がアルツハイマーでボケたことで危険人物扱い。事実上の隔離生活を強いられています。

ローガンとチャールズの関係は完全に老老介護そのもの。本作はアメコミという枠こそありますが、その内部は誰にでもわかる普遍的なお話しなのがいいですね。老老介護する側される側、双方の苦悩がときにコミカルそして悲痛に表現されていました。

“パトリック・スチュワート”の役作りもさすがです。

こういう老人キャラは脇役としてあっさり死んでしまう作品も多いなかで、本作はチャールズの最期として最大級の尊敬が込められたこれ以上ない手向けだと思います。

父と娘

続いて、本作で鮮烈な登場を果たしたウルヴァリン・ガールのローラ。これぞ「メッタ刺し」、ストレートな残酷アクションで観客の目を奪います(まあ、敵は目どころか手も足も頭も奪われてるのですが)。かと思えば、ときおり見せる子どもっぽい仕草がギャップでひときわ愛くるしくたまらない。後半のしゃべりだしてからの一生懸命な感じも良かったです。

演じた“ダフネ・キーン”は12歳で本作で映画デビューだそうですが、素晴らしい存在感。演技力もベテラン勢に劣らない大人顔負けのもの。ローガンの最期を看取る表情なんて、こちらの涙を容赦なく誘う迫真の演技でしたよ。

今後、伸びていってほしい逸材です。

ローガン

ヒーロー! カムバック!

本作の何が感動したかって、ヒーロー映画としてここまで全てを詰め込んで完結した作品は他にあっただろうかというくらい、アメコミ映画の集大成的な作品だったということ。

レゴバットマン ザ・ムービーのようなレゴというチート技なんか使わなくとも、ヒーロー論に迫れるんだと示しただけでも凄いことです。

ちゃんとヒーローとして「人助け」することに立ち返る展開があるのが最高です。逃亡旅の途中、とある一家を助けて一晩泊めてもらう場面で、ヒーローの仕事である人助けのやりがいとヒーローだからこそ忘れてきた家庭の温かみをもう一度取り戻す。そう、ヒーローの存在意義ってこれですよね。

そして、コミックが物語のキーワードになる展開もニクイものです。確かにコミックはフィクションです。でも、それで未来に希望を持ち、前に進もうとするこどもたちもいる。こんなにもアメコミを肯定してくれる作品だとは…。

加えて、ローラは西部劇映画の名作『シェーン』を観ることで、正義のための殺しの意義と重みについて学ぶ。この展開も、映画好きとしてはグッときますよね。

ローラが最後にローガンの墓の木の十字架を傾けて「X」にしたとき、次世代へのバトンが確かに受け継がれたことを実感させる…完璧な終わり方でしょう。本作は138分と長尺ではあるけれど、よくぞここまでまとめたなと、監督・スタッフ・俳優全員に称賛を送りたいです。

そういえば、終盤に国境を越えようとするミュータントの子どもたちと、それを阻止する敵という構図は、移民問題を思わせます。こういうさりげない社会風刺も本作は見事です。

喪失感と寂しさが滲む映画でありながら、希望も感じた本作。アメコミはまだまだやれますね。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation