KUBO クボ 二本の弦の秘密
映画『KUBO クボ 二本の弦の秘密』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Kubo and the Two Strings 
製作国:アメリカ 
製作年:2016年 
日本公開日:2017年11月18日 
監督:トラビス・ナイト 

【個人的評価】
 星 8/10 ★★★★★★★★

あらすじ

片目の少年クボは、体の弱い母と2人で静かに暮らしていた。そんなクボには、魔法の三味線で奏でる音楽によって折り紙を自由自在に操る特技があった。不吉な子どもとして一族から命をねらわれていたクボは、ある時、邪悪な伯母たちに見つかってしまう。

ネタバレなし感想

ストップモーションは衰退していない!

アニメーション映画といえばすっかりCGアニメが主流。そんな2Dの平面から3Dの立体への転換はあるとき一瞬で起こったわけでなく、橋渡しになる存在がありました。それが「ストップモーション・アニメ」です。

静止しているモノを1コマ毎に少しずつ動かしてカメラで撮影し、あたかもそれが連続して動いているかのように見せる撮影技術で、簡単に言ってしまえばパラパラ漫画の立体版ですね。このストップモーション・アニメの歴史は古く、映画との付き合いも長いです。例えば、1933年の『キングコング』のコングの動きだったり、『スター・ウォーズ 新たなる希望(エピソード4)』の巨大な四足歩行ロボット(AT-AT)の動きなど、非現実的な存在の表現にはストップモーションは欠かせませんでした。

そして、CGの発達によってストップモーション・アニメは衰退していった…というのが世間的な一般論。

ところが、アニメーション映画の世界では最近はストップモーション・アニメの存在感が増しているような感じもします。大ヒットはしませんが、少なくとも批評家の評価はうなぎ登りです。CGの興隆への反発なのでしょうか…手間暇かけて精巧に作り上げるそのスタイルは確かに称賛したくなります。

ストップモーション・アニメといえば、『アノマリサ』のようなインディペンデント作品の印象が強いところ。
『アノマリサ』感想(ネタバレ)…日本人には素直に評価しづらいある事情
でも、大手もいます。昔からの代表的な存在だと、クレイアニメで有名な「アードマン・アニメーションズ」があります。『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』や『映画 ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』など、私も大好きです。

そして、2000年代に入り、急速に存在感を増していった新星が「ライカ」です。ライカの第1弾長編映画、2009年の『コララインとボタンの魔女』を観たとき、私も衝撃的でした。世界観が常に独創的なのがいいんですよね…。

そんなライカの最新作が本作『KUBO クボ 二本の弦の秘密』。舞台はなんと日本です! もうこれだけで感激。あのライカがどんな風に日本を表現するのか…ワクワクですよ。

これほど日本人が観なければいけない映画もないです。老若男女誰でも盛り上がれること間違いなし。ぜひ鑑賞して「ライカ」の名前を憶えていってください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

瞬き、厳禁!

まず何と言っても映像です。いまどき映像なんかで驚く時代じゃない…そんなことわかっているのにこの映画は「圧巻」の一言でしか言葉にできないような映像をみせてくれるわけですから。

キャラクターの喜怒哀楽豊かな表情、ところせましと駆け巡る縦横無尽のアクション、スクリーンいっぱいに広がる巨大な怪物たち。

誰もが「これほんとにストップモーション・アニメなのか…」と呆然するのも無理ないクオリティです。

でもメイキング映像を見てください。ほんとに作ってる…。動かしてる…。



私自身、こういう細かい作業の過程を見るのが大好物なので楽しい、楽しい。

念のため言っておくと本作はオール・ストップモーションではありません。キャラの触れることのない背景はCGが使われています(グリーンバック撮影)。3Dプリンタという最新テクノロジーも活用されていますし、パペットもただの人形というよりは高度化したギミックになっているものもあります。そのため、純粋なストップモーション至上主義の人からは批判的な風を受ける場合もあるようです。確かにライカのやっていることはストップモーション・アニメの現代的バージョンアップであり、その方向性は議論あるのかもしれません。

でも、私のようなペーペーには何もわからないので!(元も子もない文章)

とりあえず楽しめたから良し!

本作はストップモーション・アニメの歴史においても記録に残るトップ級の作品となっています。ストップモーション・アニメ史上最長の映画時間、ストップモーション・アニメ史上最大のパペット(巨大骸骨の身長は4.9m!)。

少なくとも今はこの進化をただただ拍手で迎えたいところです。

KUBO クボ 二本の弦の秘密

日本人も忘れていた日本らしさ

とまあ、技術だけでも「凄いな〜」となる映画なわけですけど、私たち日本人の心をここまで高まらせるのはもうひとつ理由があります。これも言わなくてもわかることですが。

それは「溢れんばかりの日本へのリスペクト」です。

中国を舞台にパンダがカンフーを駆使して痛快にアクションするCGアニメ映画『カンフー・パンダ』が公開されたとき、本場の中国でも大ヒットしたのですが、その際、「なぜ我が国ではなくアメリカでこんな作品か生み出せるんだ!」と中国国民は嫉妬半分尊敬半分だったそうで…。
それと全く同じ心境を日本人として体験できる日がこようとは…。

本作のそれは例えば『ブレードランナー』のような格好だけのアジア・オマージュではないのです。
ガチなのです。研究しつくされています。文化、民謡、昔話…日本人でもここまで知らないのじゃないかと思うほど。『沈黙 サイレンス』のような外国人が日本舞台の原作を手がけることはこれまでいくつもありましたが、完全オリジナルでここまでのものはあったでしょうか。

他人に愛されているというのは嬉しいもので…。

それと同時に思うのです。最近ハリウッド的な映像などばかりを意識しがちな邦画大作は、自国のリスペクトを忘れているのではないかと。説教するつもりはないですが、私も含めてもう一度日本の良さを見つめなおすことも大事かなと、本作は客観視させてくれました。そういう意味でもありがとうですね。

ライカの伝統

本作の欠点として挙げられそうなのは、ストーリーがあっさりしすぎじゃない?って部分かと思います。でもこれはライカ作品の恒例というか、一種の個性だと私は思っているのであまり気にならず。ライカ作品は毎回、世界観は違えど芯の部分はいつも同じです。

例えば、メタ視点。本作ではクボが三味線で音楽を奏でると折り紙が生き物のように動き出す…つまり、モノに命を与えるわけですが、これはまさにストップモーション・アニメそのもの。この要素はライカ初長編作品『コララインとボタンの魔女』にもありました。こちらはズバリ“人形”でしたが、今作では少し変化球をつけた感じです。そして、もうひとつ特徴をあげるなら、死生観。本作の死との向き合い方などはまさに日本らしさですけど、これは何も本作から登場したものではありません。『コララインとボタンの魔女』では死者との交流が物語の糸口になりますし、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』にいたっては死者と話せる能力を主人公が持っています。なぜこんなにも死者との交わりを重視するのか謎なんですけど、ライカ伝統ですね。

ピクサーや最近のディズニー作品はストーリーテリングで評価を得るという流れを鉄板にしましたが、ライカは真逆。“モノと命をつなぐ”…実にクリエイティブなテーマが一貫しているのです。

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