キングスマン ゴールデン・サークル
映画『キングスマン ゴールデン・サークル』(キングスマン2)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Kingsman: The Golden Circle 
製作国:イギリス 
製作年:2017年 
日本公開日:2018年1月5日 
監督:マシュー・ヴォーン 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★

あらすじ

イギリスのスパイ機関キングスマンの拠点が、謎の組織ゴールデン・サークルの攻撃を受けて一瞬にして壊滅した。残されたのは、一流エージェントに成長したエグジーと教官兼メカ担当のマーリンのみ。2人は同盟関係にあるアメリカのスパイ機関ステイツマンに協力を求めるが…。

ネタバレなし感想

下品な英国スパイが帰ってきた

2015年はスパイ映画の豊作年で、「007」シリーズや「ミッションインポッシブル」シリーズの続編が出たり、ガイ・リッチー監督が手がけた『コードネーム U.N.C.L.E.』が公開されたりしました。そんな中でもひときわ個性を放ち、見事に存在感を発揮したニューフェイスが『キングスマン』でした。


私も『キングスマン』は非常に気に入って、その年のベスト10に入れたいくらい魅了されたひとり。何が良いのかいえば、やはり昔ながらのバカでアホな軽いスパイ映画のノリが久しぶりに見れたことです。当時はスパイ映画に限らず、映画全体がシリアス一辺倒になり始めてきた中で、観客も重苦しい雰囲気に嫌気がさしていたと思います。そんなとき、2014年の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のようにシリアスを蹴飛ばすようなポップで明るく、ノリノリの音楽で暴れまわるような作品が顔を出してきました。この『キングスマン』も完全にその系統ですね。

「007」シリーズがイギリスの上流階級を主軸にした保守的なスパイ映画であるのに対し、『キングスマン』はイギリスの労働者階級にあえて主人公を設定した斬新な対比構造も皮肉が効いていました。かといってポリティカル・コレクトネス的な真面目さは皆無なのが素晴らしく、基本は徹底的にふざけまくっているのがまた良くて。

まさに往年の伝統的ノリと現代の新しい価値観が奇跡の融合を果たしたスパイ映画です。

そんな作品の続編が本作『キングスマン ゴールデン・サークル』。新年早々一発目に鑑賞する映画として、本作ほどピッタリなものはないでしょう。

監督の“マシュー・ヴォーン”は意外ですけど、自身の作品の続編を手がけるのはこれが初めてらしいですね。確かに『キック・アス』(2010年)は、続編もありましたが、あれは別監督でした。

それで肝心の本作の中身ですが、安心してください。あの「キングスマン」です。前作どおりのノリは継続…というか盛大にパワーアップしています。ふざけまくった“グロ”や“エロ”、そして悪役も相変わらず。世界各地を舞台にしたり、アメリカの諜報機関が登場したりしていますが、あくまで「キングスマン」らしさは変わりません。

ただ、前作ありきのネタが非常に多いので、前作を鑑賞するのは必須かもしれないですね。言い方を変えると、前作の思い入れがあるほど今作も楽しめる要素が劇的に倍増するので、ぜひ前作を観てください。これはポスターや予告動画にばっちり映っているからネタバレじゃないと思うので書きますけど、“あの人”も復活しますしね。一番のテンション上がりポイントなのに、前作知らないと「誰? こいつ…」ってなりますから。

そうとう監督も気に入っているのか、すでに3作目の構想も練られているそうで「キングスマン」シリーズは長い付き合いになりそうです。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

乱暴すぎるパワーアップ

「盛大にパワーアップしています」と書きましたが、本作、良くも悪くもそのパワーアップのスタイルが“やっつけ”感さえあるぐらい、横暴

なんていったって、序盤で前作のキングスマン組織が壊滅しますから。正直、「えっ、前作であんなに凄かったのに、こんな攻撃で全滅しちゃうの!?」と思わざるを得ないのですが、それだけには終わらない。加えて、前作で同じキングスマン候補生としてあんなに友好を深めたロキシーや、愛犬のパートナー“JB"まで爆死する事態に驚愕。「ジョン・ウィック」だったら世界中の人間を八つ裂きにしているレベルだよ…。
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それでいて前作で死んだと思われていたキャラクターがひょっこり生きていたりしますからね。前作で偉そうな態度をとっていたキングスマン候補生のチャーリー・ヘスケスが生存していた理屈は、まぁ、わかる。一方の、“コリン・ファース”演じるハリーが生きている展開の無理くりさといったら…。つまり、この世界では頭を撃ち抜かれたぐらいでは蘇生できるってことですか。それに対する皮肉なのか、今作では敵が死ぬときはしっかりミンチ肉になるのですが。これなら生き返らないでしょう(だよね?)。

あと、意外だったのが、前作のオチ担当だと思っていたスウェーデンの王女とエグジーが真剣に交際していて、本作のラストで結婚まで遂げる点。そこを引っ張るの!?と誰もが思うところ。みんな前作の時点であれはギャグだと思ったでしょう。そんなにアレが気持ちよかったのかな…。

このままの流れでキャラクターを語っていきますが、スウェーデンの王女以上に、“チャンニング・テイタム”よりも“エルトン・ジョン”の方が出番が多いことが最大の衝撃でした。もう後半は“エルトン・ジョン”なくしてキングスマンは勝てなかったと言っていい。「FRIEND」のパワー…。

酔いつぶれるマーリン、「Manners Maketh Man.」からのボコボコ(される側)のハリー…と、旧キャラがへっぽこ具合を見せるのも新鮮。このへんは前作ファンなら楽しいところです。

とまあ、こんな感じでパワーアップの仕方が斜め上。でも、このメチャクチャが「キングスマン」らしいといえばらしいのでOKなんですね。

キングスマン ゴールデン・サークル

インフレ現象を発症しました

そんなパワーアップしまくりの本作。しかし、前作がとてもハマった私の最終的な感想は「まあ、こうなるか…」みたいな熱くも寒くもないテンションです。

結局、この「キングスマン」も、シリーズもの特有のインフレ現象を発症しているのですよね。「トランスフォーマー」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のようにどんどん映像的に派手にせざるを得ないし、続編のためなら前作設定をどんどん上書きしていくことにもなる。結果的にファン向けのキャラクター映画になっていきます。それも宿命といえばそれまでですけど…。

アクションやスパイグッズのインフレはその最たる事例であり、今作ではハイテクメカ化が著しく、これなら「ターミネーター」もそのうち出てくるでしょう。ステイツマンの投げ縄もやりすぎ感あるなと。オーバーテクノロジーではなく、前作の“ソフィア・ブテラ”演じる悪役ガゼルのような体技で見せるシーンがあれば、また評価も違ったのですけど。

また、前作にあったイギリス階級社会の風刺は、キングスマン壊滅によって消滅したぶん、今作はアメリカ社会の風刺に転換。これは良かったし、物語のメインとなるドラッグ問題への言及も可笑しかったですが、いかんせん敵の“ジュリアン・ムーア”演じるポピーが退屈だったかな…。ちなみに本作のクズなアメリカ大統領は、もろにドナルド・トランプを意識してましたね。これもちょっと露骨すぎて、ポリティカル・コレクトネス感が出ているのがあんまり好きになれない部分です。

音楽もそこまでノれず。前作のチャーチル・ファイト場面でのレーナード・スキナードの「フリー・バード(Free Bird)」のような斬新さもなく…。マーリンの死に際で歌うジョン・デンバーの「故郷に帰りたい(Take Me Home, Country Roads)」は本作のメイン曲みたいなものですが、『ローガン・ラッキー』でも使われていたり、ちょっと食傷気味。そもそもこの曲で哀愁を匂わすのは演出として普通すぎるよねと。
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次の3作目はぜひ日本を舞台にお願いします。「キングスマン」ならヘンテコ・アジアでも許せる気がするので。

3作目が待ち遠しい人、本作が合わなかった人は、ぜひ“マシュー・ヴォーン”製作で「キングスマン」制作陣で作られた、日本劇場未公開作『イーグル・ジャンプ』がオススメです。
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