キング・アーサー
映画『キング・アーサー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:King Arthur: Legend of the Sword 
製作国:アメリカ・イギリス・オーストラリア 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年6月17日 
監督:ガイ・リッチー 

【個人的評価】
 星 4/10 ★★★★

あらすじ

路地裏のスラムで育った貧しい青年アーサー。実は彼は王の子であり、暴君ヴォーティガンに謀反を起こされたユーサー王が、殺される直前に幼かったアーサーを船で逃がしたのだった。そのアーサーが伝説の聖剣エクスカリバーを手にし、救世主として存在感を強めていく。

昔も今も2次創作が好き

キング・オブ・エジプトグレートウォール「史実をぶっとんだフィクションに改変しちゃった」シリーズと名付けて楽しんだ私ですが、最も歴史があって人気が高い「史実をぶっとんだフィクションに改変しちゃった」作品は「アーサー王伝説」でしょう。エクスカリバーとか円卓の騎士が出てくる、あれです。

アーサー王の物語は今ではファンタジー系のゲームや小説などでは定番中の定番であり、よく知っている人も多いかと思いますが、「アーサー王伝説」が確立し出したのは中世まで遡ります。そもそも、有名なアーサー王の物語はフィクション。6世紀初めにローマン・ケルトのブリトン人を率いてサクソン人の侵攻を防いだ人物がアーサー王のモデルと言われていますが、実在は不確か。ここから騎士要素や恋愛要素などを盛り盛りに加えていって生まれたのが「アーサー王伝説」です。まさに「史実をぶっとんだフィクションに改変し続けてる」作品といえます。きっと、大昔からサブカルな人間たちはこういうのが趣味だったんだろうなぁ…。時代が違ってもオタクはいるんですね。良いこと、良いこと。

さて、そんな2次創作の格好の材料である「アーサー王伝説」。当然、映画化も数えるのが大変なくらいされていて、代表的な作品を挙げると、ディズニーアニメーションの『王様の剣』(1963年)、ジョン・ブアマン監督の『エクスカリバー』(1981年)、ジェリー・ザッカー監督の『トゥルーナイト』(1995年)、アントワーン・フークア監督の『キング・アーサー』(2004年)などなど、よりどりみどり。しかも、今年は「トランスフォーマー」シリーズの最新作『トランスフォーマー 最後の騎士王』さえもアーサー王要素を入れてきたのだから、皆どれだけアーサー王好きなんだという感じです。

個人的には1975年の『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』が好き。ただ、これを観ちゃうと他のアーサー王映画がギャグっぽく見えてくる副作用があるので、要注意。

そして、2017年。現代の映像技術でド派手に生まれ変わった「アーサー王伝説」が見られるのが本作『キング・アーサー』。一時期までは邦題に「聖剣無双」と付いていたのですが大人の事情で消滅。ただの「キング・アーサー」になりました。でも、ちゃんと劇中で“聖剣無双”しますから、期待してください。

ファンタジー世界で豪快アクションが見たいなら、普通に楽しめる作品ではないでしょうか。中世から現代に続く2次創作の歴史を噛みしめながら観賞しましょう。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ガイ・リッチー無双

本作を特徴づけるのはやはり監督のこの人、“ガイ・リッチー”でしょう。

『シャーロック・ホームズ』(2009年)や『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015年)を手がけてきた“ガイ・リッチー”監督は、オリジナルをためらいなく大胆にアレンジすることにかけては“やり手”。もはや2次創作のプロです。

↑シャーロック・ホームズがガンガンアクションする大胆な作風。

本作は“ガイ・リッチー”監督史上最もスケールのデカイ世界観ですが、やっぱり“ガイ・リッチー”監督らしさが炸裂。相変わらずのケレン味、相変わらずの落ち着きのない映像…いつもどおりで安心しました。聖剣の力を発揮し、まさに無双して一掃する場面で、仲間の皆が棒立ちなのが笑えます。

ただ、全体的に「ぶっとんだフィクションに改変しちゃった」感が弱めなのが気になる。

一番ぶっとんでたのは冒頭の巨大なゾウが襲ってくるシーン。ここはオープニングの掴みとしては最高。でも、なんだったのだろう、あれ…。聖剣よりも大問題だろうに…。

スローとスピードアップを多用する“ガイ・リッチー”アクションが好きな人は堪らないはず。でも私としては、アクションとしての面白みは薄いかなというのが正直な印象。身も蓋もない言い方をすれば、派手なエフェクトで剣を振り回しているだけですから。映像的に「そうくるか!」みたいなアクションはないです。「新感覚ソードアクション」と宣伝されてますが、たいして“新感覚”はなかった…。

今作はキャラの魅力が薄く感じたせいかな? アーサーを演じた“チャーリー・ハナム”は頑張ってたんですけどね。「スラムのガキから王になれ!」というキャッチコピーのとおり、アーサー王がスラムの売春宿で育ったというのが本作の大きな改変ポイントなのですが、“スラムのガキ”描写が早回しであっさり終わったのはびっくり。もっとこう、ドラマのカタルシスとして子ども時代を描いてもよいのではと思ったりも。

スラム設定は良くも悪くも“ガイ・リッチー”っぽい部分なので、これをどう展開させていくのかは気になりますが…。だって、最後の円卓に集まったメンバーの様子は、ロンドンの下町の労働者階級の若者たちの決起集会にしか見えないからね。

“ガイ・リッチー”監督はファンタジーよりもリアルな世界の方が合ってる気がします。

キング・アーサー

6作も続くのか!?

本作は観てのとおり、プロローグ的な雰囲気です。

それもそのはず、企画では6作からなるシリーズの第1作として製作されたそうです。確かにアーサー王の物語はまだまだ描く内容にはネタ付きません。というか、これからが面白いところです。

そう考えると、第1作というシリーズの土台となる重要な作品を、“ガイ・リッチー”監督の作家性全開で塗りたくってしまったのは良かったのかとも思わなくもない。もっと堅実にシリーズらしさを構築することに務めるべきではと思うのは、私の安易な所感だろうか。“ガイ・リッチー”監督は、3作目や4作目あたりで新しい味付けをしたいときに使えばよいのでは…。

世界的な評価は微妙な本作。スラム版アーサー王の2次創作は続くのか。個人的には見てみたいですよ。

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