キアヌ
映画『キアヌ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Keanu 
製作国:アメリカ 
製作年:2016年 
日本では劇場未公開:2017年にDVDスルー
監督:ピーター・アテンチオ 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★
 

あらすじ

恋人に振られて失意の底にいた冴えない男性レルは、自宅に現れた子猫にひと目で魅了され、キアヌと名付けて一緒に暮らしだす。ところがある日、レルの家に強盗が入り、キアヌが誘拐されてしまう。レルは愛するキアヌを取り戻すべく、従兄弟のクラレンスと共にギャング団に潜入する。


主演の彼は今年注目の天才映画監督?

「アクション」「サスペンス」「ホラー」とさまざまなジャンルが映画にありますが、底知れぬ根強い支持を集めるジャンルが「ネコ」です。

日本でも今年もネコ映画がいくつか公開されます。スマホアプリを映画化した『ねこあつめの家』とか、ネコと忍者が共演する『猫忍』とか。

海外もネコ映画は盛んです。2016年には『メン・イン・キャット』という「ケビン・スペイシーがネコになってしまう」なんとも珍妙なコメディが公開されました。こちらはニューヨークが舞台だけどフランスと中国が製作した映画でしたが、今回紹介する本作『キアヌ』は正真正銘アメリカの製作したネコ映画です。

明らかに犯罪とは無縁で悪いことが全くできそうにない黒人男のコンビが、自分たちの飼っていた一匹の子猫をギャングに奪われてしまい、びびりながらも「俺たち、悪だぜ!」と精一杯の虚勢を張って、いかにも悪そうな黒人だらけのそのギャングに極悪な殺し屋として入り込む…ストーリーはこんな感じ。

すごくアメリカらしいネコ映画です。

映画に登場する子猫がとにかくカワイイ。これだけでもネコ好きは幸せを満喫できるでしょう。

一方で本作はネコとは別の観点から映画ファンにも見逃せない一作ともいえます。それはアメリカの人気お笑いコンビ「キー&ピール」が主演しているということ。「だから何?」という反応が返ってきそうですが、この「キー&ピール」のひとり“ジョーダン・ピール”は映画監督として今年デビューしたのです。しかも、そのデビュー作である『Get Out』が、なんとまさかの映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で99%のスコアを獲得するほど超高評価で大ヒット! 『Get Out』は白人の恋人との結婚を控えた黒人の男が恋人の両親に挨拶しに行ったところ、恐ろしい目に遭わされるというホラー・コメディ。日本では現時点で劇場公開予定はないのですが、楽しみすぎる…。

他にも本作『キアヌ』は主人公二人が映画好きという設定なため、やたらと映画のパロディがあったり、人気ゲーム「グランド・セフト・オート」のオマージュがあったりと、オタクに寄り添った作品になってます。

キアヌ
↑『キアヌ』のワンシーン。何の映画のネタかは一目瞭然。

こんな楽しい映画なのに、日本では本作は劇場未公開でDVDスルーです…。ぜひ暇なときでいいのでレンタルして観てみてください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





夢中なことは悪いことじゃない

最初に言っておかなければならないことがあります。

なんでこの映画に出てくる奴らは揃いも揃ってあのネコにこだわるの?」なんていう野暮な質問は無しですよ。

その理由は極めてシンプル。この世の真理と言ってもいい。それは…“子猫はカワイイ”。このニュートンの運動法則に匹敵する力こそがこの映画の登場人物たちの行動を説明する唯一にして絶対の全てです。

えっ、私はネコがあまり好きじゃない? そういう人はそこは目をつぶってください。クラレンスを演じた“キーガン=マイケル・キー”だってネコアレルギーのなか頑張ったんですから。

それにしても本作はネコ好きの人しか登場しないです。『メン・イン・キャット』がネコ嫌いな主人公だったためネコに対する愛情が驚くほど乏しい作品だったのに対して、本作の溢れるネコ愛。メイキング映像からも愛情が垣間見えます。


一方で、本作は子猫のキアヌをただのカワイイ癒しアイテムとして出しているだけでないのも良いところ。物語はボンクラ男二人が己の趣味を貫き通す話であり、オタクを全力応援する映画です。そんな中でネコという存在はオタク心を共有できる唯一の武器。凡人も、ギャングも、警察も、誰にだって夢中になれるものはあるよね…という極めて真っ当なメッセージでした。

キアヌ

個人的にはネコに負けず劣らず可愛いと思う、ジョーダン・ピールとキーガン=マイケル・キーが演じるレルとクラレンスのコンビが最高です。序盤のなんともだらしないレルのキアヌとの私生活や、頑張って悪になろうとするアホな姿、そしてなんだかんだでギャングたち下っ端と仲良くなるクラレンス…どれも愛らしい。コミュニケーションだ!とか、元カノの写真をキアヌに攻撃させる指示とか、地味でばかばかしい伏線回収も好きです。

あと、クスリでのトリップシーン。トリップシーンが面白いコメディ映画は名作です。本作のクラレンスが「ホーリー・シット」を吸ったことで展開される、謎空間でのジョージ・マイケルとの雑な共演(?)、そしてキアヌ・リーブスの声でしゃべりだすキアヌ(猫)。トリップシーンは、“なんだこれ感”が多いほど良いですね。

「キアヌはずっと子猫のままの珍しい病気なの」という潔い開き直りと、不死身のアレンタウン兄弟で終わった本作…続編をつくるときは、キアヌ・リーブス本人も出演にぜひ期待します。

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