IT イット “それ”が見えたら、終わり。
映画『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:It 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年11月3日 
監督:アンドレス・ムシェッティ 

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★

あらすじ

静かな田舎町で児童失踪事件が相次いで起きていた。少年ビルの弟が、ある大雨の日に外出し、おびただしい血痕を残して姿を消した。悲しみにくれるビルの前に現れた「それ」を目撃して以来、ビルは「それ」の恐怖にとり憑かれてしまう。そして他の少年少女たちも「それ」に遭遇していた。

ネタバレなし感想

27年の時を経て帰ってきたピエロ

日本では「ピエロ」は恐怖の対象になることは起きにくいですよね。まずピエロが身近にいませんから。私にとって一番身近なピエロはマクドナルドの「ドナルド」ですよ。もう子どものときも嫌いどころか好きでしたよ。ハンバーガーやポテトをくれる“いい人”です。

でも欧米では「道化恐怖症」という言葉があるくらい、ピエロは恐怖の象徴にもなりうる存在です。その「ピエロ=恐怖」というイメージをあらためて強烈に植え付けた作品が、ホラー小説の重鎮“スティーブン・キング”の代表作「IT」でしょう。

1986年のこの小説はファンの中でも好きな人が多い作品であり、しかもなかなかのボリュームのある大長編。あんまり中身について言及するとネタバレになるので避けますが、実はジュブナイル・ファンタジーと言っていいくらいのノスタルジックな少年少女成長物語となっています。純粋なよくあるスリラーを期待すると「あれっ?」となるかもですが、逆にホラーが苦手な人でもジュブナイル系が好きなら見れば楽しい一作なのは間違いありません。

↑原作小説。

そんな「IT」は、1990年に映画化およびTVドラマシリーズ化されました。公開時はピエロ恐怖症の人が増えたみたいですね。

そしてそれから「27年」が経過した2017年(この27という数字は大事。詳しくは作品を見ればわかります)。なんと再びリメイクされて映画化となりました。

それが本作『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』。正直、この邦題の副題はあんまり上手くない気もしないでもないですけど、まあ、いいか。

注目すべきはやっぱり映像ですかね。最新の映像技術で見せるホラー表現は素直に見ごたえがあります。怖いシーンはたくさんありますし、それに結構容赦なく残酷に死にます。全体的にピエロなだけあってオーバーな演出が多め。だからシリアスなホラー演出が好きな人はあんまりお気に召さないかも。派手さを楽しんでください。

また、本作でピエロを演じた“ビル・スカルスガルド”(兄はターザン:REBORNでターザンを演じた“アレクサンダー・スカルスガルド”)の怪演。兄と同じくイケメンなスウェーデン人なのですけど、そんなカッコよさは微塵もない、不気味なピエロを徹底して体現してみせています。批評家も絶賛する彼の演技力は大きな注目ポイントです。

先にも書いたとおり、ホラーが苦手な人でも少年少女成長物語としても楽しめる一作ですので、ぜひ鑑賞を検討してみてはどうでしょうか。『SUPER8/スーパーエイト』や『アタック・ザ・ブロック』などのジュブナイル群像劇が好きな人にはオススメです。

あと上映時間が135分もあるのでトイレは忘れずに!






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

子どもたちが抱える恐怖

本作は子どもたちの物語です。

その子どもたちですが、わりと登場人物が多くて最初は混乱しがち。主人公グループとなる「Losers' Club」のメンバーだけでも7人いますからね。

簡単に整理がてら紹介するとこんな感じ。

まず、ビル。冒頭で弟のジョージに船を作ってあげて、そのままジョージは行方不明に。自責の念にかられて必死に弟を探します。吃音の症状があるのが特徴で、成長を示す要素としてドラマでも活かされていました。

スタンは、ユダヤ人で潔癖症。なのですが、劇中ではだいたい汚いところに行くことになり、汚い目に遭います。彼が汚なさを半ばやけくそで受け入れ始める展開は、ちょっと笑っちゃいました。地下では予想外のディープキス(噛みつかれているともいう)をされるしで、踏んだり蹴ったりです。

リッチーは、メガネをかけたビルの親友。よくしゃべる子で、仲間が真剣に探索してようが、怖い状況にあろうが、トークが止まりません。自分の行方不明チラシを見つけたときはパニック、ピエロだらけの部屋に閉じ込められたときは余裕さが吹き飛び、見ていて飽きません。

エディは、常に薬を携帯し、時計のアラームを合図に決まった時間に服用する子。実はそれは偽薬で、病気だと思い込んでいるだけ(心気症)。腕が折れてしまうも、過保護な酷い母親から脱出する場面は彼の大きな成長を印象付ける、いいシーンでした。

ベンは、転校生で序盤でビルたちと知り合って仲間になる小太りな子。メンバー内ではまさかの知能派で、27年周期で惨劇が起こっていることを突き止めます。それにしてもベンのお腹はどうなってるんでしょうか。傷つけられまくりなんですが、わりと平気です。

マイクは、黒人の子で、ヘンリーら虐めグループに暴力を受けているところを、ビルたちに救われます。家畜の“と殺”の仕事をしており、終盤は彼のもってきたボルトガンが大活躍。原作小説でも年代設定は1957年ということで、黒人差別の負の歴史を強く感じさせるキャラです。

ベバリーは、紅一点の女の子。学校でもビッチという扱いで虐められていますが、実際は父親から性的虐待を受けているのでした。本作随一のド派手シーンである“血ドバァー!”シーンは、“性”の暴力を連想させるものなのでしょう。そんな彼女も、愛に触れ、変わっていきます。

以上、負け犬たちですが、彼ら彼女らは虐められているスクールカースト底辺であると同時に、それぞれが内に固有の恐怖を抱えているのが特徴です。この個々の恐怖を乗り越えるというのが本作のドラマの肝であり、成長の鍵でした。

IT イット “それ”が見えたら、終わり。

ピエロはまだ続く

本作は常に緊張感が維持されるわけではないため、そこまでホラーとしては怖くありません。むしろ息抜き的なほっこりするシーンもたびたび挿入されて、なんか癒されます。ヘンリーたちからマイクを救うときの石投げ合戦とか、ベバリーの真っ赤っか浴室を皆で清掃するシーンとか。重要なのはいずれの場面も「全員が揃っている」ということ。終盤で強調される「団結すること」の価値を印象付けるものでもありました。

その団結を破壊しようと企む「ペニーワイズ・ダンシング・ピエロ」。繰り返しになりますけど、“ビル・スカルスガルド”の怪演は素晴らしく魅力的でした。どこまでがCGかはわかりませんが、実際にプロの道化師からトレーニングを受けたというあの演技はさすがの出来栄え。これだったらピエロ恐怖症になるなぁ…子どもの時にこの映画を観なくて良かった…。

ジュブナイルとしてはオーソドックスですが全体的に役者・脚本・映像どれをとってもクオリティも高く、じゅうぶん満足できる一作だったと思います。

ただ、苦言というか、残念な点があるとすれば、カタルシスの乏しさかな。負け犬たちの成長は確かにグッとくるし、ラストでそれぞれが恐怖を克服した皆でピエロをフルボッコにするシーンも快感なんですけど、映画単体としてはちょっと…。

それもそのはずエンディングでわかりますが本作は「チャプター1」。このあと続きがあるのですよね。劇中で子どもたちが言っていたように大人になったビルたちの物語が用意されています。まさに最近に邦画でよくある「前後編」スタイルです。

やっぱり大人のストーリーが語られてこそ最大のカタルシスになるわけで、なんかお預けを食らった気分…。

続編の映画は、27年後…じゃなくて2019年公開だそうです。短いようで長いなぁ。

ウズウズするよ!という人は、Netflixでオリジナル配信中の同じく“スティーヴン・キング”原作小説を映画化した新作ジェラルドのゲーム1922を観て、空腹をしのぐといいと思います。せっかくですから“スティーブン・キング”の世界観にたっぷり浸ってください。

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