光をくれた人
映画『光をくれた人』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Light Between Oceans 
製作国:イギリス・ニュージーランド・アメリカ 
製作年:2016年 
日本公開日:2017年5月26日 
監督:デレク・シアンフランス 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★
 

あらすじ

第1次世界大戦後のオーストラリア。孤島ヤヌス・ロックに灯台守として赴任した帰還兵トム・シェアボーンは、明るく美しい妻イザベルと平穏で幸せな日々を送りはじめる。しかし、ある日、生後間もない赤ん坊を乗せたボートが島に流れ着き、その子を育てることに決めるが…。

映画の恋が現実の恋に

多くの観賞者の心に恋愛トラウマを巻き起こした、カップルや夫婦で観るには相当な覚悟がいる映画『ブルーバレンタイン』。私もエンディングは「ひぃぃぃ」となりながら椅子に磔にされた気分で観た記憶があります。

↑映画としては素晴らしい出来です。

そんな『ブルーバレンタイン』を手がけた“デレク・シアンフランス”監督の最新作『光をくれた人』がいよいよ日本でも公開です。公開に至るまでちょっとあれがありましたが、気のせい気のせい。公開されたのだからOKですよ。

本作は2012年に出版されたM・L・ステッドマンの小説「海を照らす光」が原作。

再び恋愛を扱うということで、また“ブルー”が再燃するのかと不安になりますが…安心してください! 少なくとも言えることはカップルで観ても問題ありません! 内容は結構大人しめです。監督の前作『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命』では激しい緊迫感もありましたが、ガラッと変わりました。これを期待外れととるか、新鮮ととるかは人しだいですが、万人に観やすい作品であることはいえるでしょう。

ただ、本作、ストーリーとか作品の出来以前に、特筆せざるを得ない話があって…。

それは、本作で夫婦を主演したマイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルの二人が本作がきっかけで交際をし始めた…というなんともロマンチックな展開があったこと。映画の恋が現実の恋になるとは。そのため、このエピソードを知ったうえで本作を観ていると、お話しに集中する前に、「なんだ二人とも!ちゃっかりして!ほんと幸せそうじゃないの!」みたいな気分に終始なってきます。まあ、でも良かったですよ、日本公開時点で二人が別れていなくて…。

あと、公式サイトにも載っているガーディアン紙の批評…「ティッシュ会社の株価が上がるほど、観客は泣くに違いない」っていうのは、褒めているのかふざけているのか謎なのが、気になりました(どうでもいい話)。

幸せを分けてほしい人にオススメです。







↓ここからネタバレが含まれます↓





イチャイチャを見守る

本作では前半はトムとイザベルの出会いから仲睦まじい夫婦生活にいたるまでが実に美しく丁寧に描かれていました。

いかんせん主演の二人が現実でも付き合っちゃったがために、このパートは、フィクションなのかリアルなのかよくわからない感じで観てました。もはや結婚パーティとかで流れる新郎新婦たちの写真スライドショーを見ている気分。マイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルの結婚の際は、本作のダイジェスト映像を流せばいいんじゃないですか。

二人は今最も輝く役者ですから、演技力も申し分なく、安定しています。そういう高い演技力があるからこその、イチャイチャを見守れる余裕なんですけどね。これに“デレク・シアンフランス”監督の得意技である実在感のある人物描写が加わるわけですから、完璧です。なんでも実際に撮影地となった人里離れた半島でスタッフと役者たちが共同生活しながら撮ったそうで、徹底したリアルを求める“デレク・シアンフランス”監督らしいこだわり。最初は嫌がっていたマイケル・ファスベンダーもすっかり島生活にハマっていたとか。

幸せオーラがスクリーンの外にまで飛び出てきて、イチャイチャを見守っている観客側の心も癒すという、『ブルーバレンタイン』と真逆の効果を与える本作。『ブルーバレンタイン』が“結婚したくなくなる”映画なら、本作は“結婚したくなる”映画ですね。

光をくれた人

孤島だからこその平凡さ

ただ、ストーリーに関してはそもそものプロットが平凡というかベタなので、退屈になりがちです。この手の「他人の子を育てる」系の話だと、日本でも是枝裕和監督作の『そして父になる』なんかがありましたが、どうしても既視感を拭えません。展開も予想どおりであり、予定調和で淡々と進むため、監督の過去作と比べると特別な個性はない感じにも受けました。

物語にサスペンスが入ってくる…例えば、流産するとか、赤ん坊が流れてくるとか、グレース(ルーシー)が行方不明になるとかの場面も、比較的盛り上がらずに収束するのも、単調さに拍車をかけている気がします。

中心となる夫婦への感情移入もしづらいです。これでは他人の子を奪うイザベルに不快感を持つ人も出るでしょうし、そのイザベルをかばうトムも理解しにくいでしょう。一応、トムには第1次世界大戦を兵士として経験したというバックボーンがあってこその葛藤があったわけですが、そこもわかりにくいですし。

これらは“孤島”という特殊な環境下ゆえの難しさな気もします。シャチの見える灯台を観たときも同じく思いましたが、人のいない悠々とした自然だけがある空間で映画を展開させると、どうしてもフィールドに引っ張られて映画ものんびりしてしまいますね。

“デレク・シアンフランス”監督、次はどんな実在感あるキャラクターを創造するのでしょうか。楽しみです。

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