グリーンルーム
映画『グリーンルーム』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Green Room 
製作国:アメリカ 
製作年:2015年 
日本公開日:2017年2月11日 
監督:ジェレミー・ソルニエ 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★
 

あらすじ

パットがボーカルを務める極貧な若者バンドは、とあるライブハウスでようやく出演にこぎつける。ところが、そこはネオナチだらけで、しかも楽屋で殺人の現場を目撃してしまう。楽屋に閉じこもったバンドメンバーたちは、ネオナチ集団の狂気の魔の手から逃れようと画策するが…。

グリーンは、嫌な感じだよ!!

「緑色」というと現代ではすっかり自然豊かな「エコ」のイメージが強いです。しかし、英語の「Green」は、嫉妬、陰湿、青臭いなどネガティブなイメージもある単語だそうです。

本作『グリーンルーム』はまさにネガティブな方の緑色そのものな内容の作品。若者たちが陰惨な恐怖に襲われます。決して観葉植物でいっぱいなお部屋の話ではないのです。舞台は出演者控え室となる楽屋。もともと楽屋は、なんでも壁が緑で塗られていることが多かったことから、英語で「green room」というらしく。本作のタイトルは、楽屋の「Green」とネガティブの「Green」をひっかけているわけですね。

ちなみに本作の監督ジェレミー・ソルニエの前作は『ブルー・リベンジ(原題:Blue Ruin)』。色シリーズみたいになっているのは偶然なのでしょうか?


本作はライブハウスという閉鎖的空間でのシチュエーション・スリラー。このジャンルといえば、2016年は恐怖の盲目老人の家に閉じ込められた若者たちの脱出劇を描いた『ドント・ブリーズ』が注目を集めました。

本作も『ドント・ブリーズ』に似ている…と言いたいところですが、結構違う点も多いです。まず、バイオレンスが際立っています。要所要所でショッキングな映像が飛び込んできて、残酷描写が苦手な人は「ウワッーーー」となるし、好きな人は「ヤッホーーイ」となります。

そして、もう一つの違いは…これは実際に観て雰囲気を味わってほしいところ。私はコレはブラックコメディなんじゃないかと思いながら楽しみました。ピリピリした緊張感が時間とともに増長していくサスペンス・スリラー…ではなく、ブラックユーモアを交えた血みどろ青春劇という印象。こういう青春ドラマもありです。






↓ここからネタバレが含まれます↓





犬だって帰りますよ、嫌だもん

観る前は“ゴア表現”が見どころのサスペンス・スリラーだと思っていた本作。確かにアントン・イェルチン演じるパットが腕をズタズタにされるシーンはかなり痛々しく、主人公たちを襲う最初の人体破壊描写ということもあって、インパクト大です。

でも生々しいのはバイオレンスだけじゃないのが本作の魅力。むしろバイオレンスは効果音であり、メインメロディは人間模様にありました。

本作に登場する人物たちは皆、私たちと同じボンクラ市民。ひとつの事件をきっかけにそんな人間たちの虚勢が脆くも崩れていくさまを描いた作品が『グリーンルーム』でした。

まず、音楽では威勢のいい罵詈雑言で強がっていた主人公たちバンドメンバーは、殺人事件を目撃してしまい「ヤベぇよ、超ヤベぇよ…」状態。自分たちも盗みなど違法行為を平気でしてたのに、いざ窮地になると「警察が来るまで俺たちは部屋から出ないからな!」と国家権力に泣きつくのみ。警察は望み薄とわかると、もうオロオロの右往左往。「どうすんの?どうすんの!」と言っているうちに、次々仲間が殺されていきます。その姿は同情するくらい可哀想だけど、どこか滑稽。

グリーンルーム

対する敵であるネオナチ集団。こいつらは序盤こそ得体のしれない雰囲気が漂っており、さぞ極悪なプロフェッショナル軍団なんだと思っていたら、あれれ…。見張りの大男はあっさり若い奴らに逆に人質にされてしまい、事件を大事にしないために少数ずつ送り込む作戦もジリ貧に。あげくに恋愛沙汰で裏切者が発生する始末。この裏切者も「俺はあいつらの動きを熟知している!」と言った瞬間に撃ち殺されるという死亡フラグの回収っぷり。

ネオナチ集団のリーダーであるオーナーがだんだん情けなく見えてきます。ネオナチってだいたいネタ扱いだよね…。

最凶兵器に思えた犬もノイズ音で帰っちゃうという、犬までボンクラなのが、もう別の意味で痛々しい…。『ドント・ブリーズ』の犬と全然違う!

いや、でも私は本作の登場人物のことを馬鹿にできないなと思ったり。たぶん同じ目に遭ったら、これよりひどい醜態をさらすだけです。普段、映画を観て、そこはこういう行動をとるほうがいいだろうとか文句言ってるくせにね…。

最後の気の抜けた終わり方を観て、主人公と一緒に「俺たちってちっぽけな人間だよな」とあらためて胸に刻んだのでした。

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