gifted ギフテッド
映画『gifted ギフテッド』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Gifted 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年11月23日 
監督:マーク・ウェブ 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★

あらすじ

生まれて間もなく母親を亡くした7歳のメアリーは、独身の叔父フランクとフロリダの小さな町でささやかながら幸せな毎日を送っていた。しかし、メアリーに天才的な特別な才能が明らかになることで、静かな日々が揺らぎ始める。メアリーの特別扱いを頑なに拒むフランクのもとに、フランクの母エブリンが現れ、孫のメアリーに英才教育を施すため2人を引き離そうと画策する。

ネタバレなし感想

教育の在り方を問う

今、小学校で英語教育が本格化しようとしています。2020年度から施行される新しい学習指導要領では「英語」が教科になります。つまり、成績がつくということです。私が子どものときはせいぜいローマ字を学ぶ程度(しかも遊び感覚)でしたが、今の子たちは英語テストの勉強が必要になって大変ですね。きっと中学受験なんかでも英語が問われるのだろうし…。2000年代になり低学年の塾通いの割合が増加している傾向がありましたが、ますます子どもたちは“勉強漬け”を余儀なくされるでしょう。

そんな子どもを“勉強漬け”にする日本社会にも一石を投じるような映画が本作『gifted ギフテッド』です。

物語はとてもシンプル。7歳の女の子、メアリーはどこにでもいる普通のキュートな少女…のように思えますが、実は大人の数学者にも匹敵するほど非常に頭脳明晰な才能を持っていました。そのメアリーに対して親権争いが起こるのが本作の主軸なのですが、この親権争いがそのまま「普通の一般的な学校教育を受けるべきか、独自の英才教育を受けるべきか」という教育の在り方をめぐる対立と重なる…という構成になっています。

この問題は人によって考え方がかなり変わってくると思います。というか正解はないです。それでも「勉強することは正しい」と思ってしまいがちな中で、そうした固定観念に対して「本当にそうだろうか」と疑問を投げかけ、本当に正しい教育を模索するこの映画は、アメリカとか日本とかそんなの関係なしに心に響く作品ではないでしょうか

まあ、そんな小難しいことを考えなくても、本作は出演している俳優陣が魅力的なので、それだけ見ていても楽しいです。キャプテン・アメリカ以外の役では久々に見た気がする(まあ、アメコミ映画でも『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』以来、影が薄くなっているけれど)、“クリス・エヴァンス”が本作では独身の叔父という設定で女教師を誘っちゃいます。ここでもイケメン筋肉パワーは健在なのか…。
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また、知られざるNASAの黒人女性の功労者を描き、非常に高い評価を集めた『ドリーム』にもメインで出演していた“オクタヴィア・スペンサー”も本作に登場。地味な活躍ながらも、持ち前の安心感ある存在はホッとします。
そして、なんといっても天才少女を演じる“マッケンナ・グレイス”。とにかく「可愛い」の一言に尽きる。公式サイトにある「大好きなポケモンとアニメの国の日本に、すごく興味を持っていたので、今こうやって日本にいることが信じられないぐらいうれしいです」のコメントにほっこりですよ。

観終わった後は穏やかな気持ちになれるとても良い映画です。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

ミレニアム問題より難しい問題

メアリーをめぐって対立する叔父のフランクと祖母のイブリン。かなり大局的な二人です。

フランクは見てのとおり自由人。彼も彼なりにある事情を抱えているのですが、あくまで傍観者として極端な干渉はせずに見守ることに徹しています。終盤で保健所に安楽死処分されそうになっていた猫のフレッドを間一髪で引き取った際、他の猫も引き取っているあたり、きっと面倒見がとにかくいいんだろうなと思わせます。ボニー先生と寝ちゃうのも…面倒見の良さということにしましょう。メアリー曰く「悪く思われるけど良い人」

一方のイブリンはもういかにもな学歴至上主義。ケンブリッジ大学卒のバリバリのエリートなわけで、しかもこちらもある事情で英才教育にこだわる理由があります。イブリンが娘のダイアン(メアリーの母)に対して行ったことはさすがにやりすぎですけど、MacBookをプレゼントとか、基本的に金にものを言わせて近づこうとする感じは、祖父母によくいるタイプ。モノをくれるだけなら、良いのだけど…。メアリー曰く「好き、でも厳しいから一緒には住みたくない」

この二人の争いの火種であるメアリーは「ギフテッド(顕著に高度な知的能力を持った人)」です。ですが、特殊な設定ではあっても、本作のテーマは先にも言ったように「子どもにとって本当に必要な教育って何?」という普遍的なものでしょう。だから、全ての子どもにあてはめて考えられますよね。

そして、この問題こそ、劇中で取り上げられる、数学上の難問で解決に懸賞金がかけられているミレニアム問題のひとつである「ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさ」なんかよりも、はるかに答えを出すのが難しい問題なのです。

本作は「子どもにとって本当に必要な教育って何?」という難問を解こうとする話です。

結局、お話的には「大学で講義を受け、その後は子どもたちと遊ぶ」というところに着地したメアリー。正直、この最終的なオチはありきたりというか、まあ、そうなるよねという予想の範疇なんですけど、大事なのはメアリーが最後は友達ができていることだと思います。

メアリーは、近所のおばさんのロバータと飼っている片目の猫のフレッドくらいしか友達がいませんでした。それがいろいろあってラストは友達と笑い合っている。これが「子どもにとって本当に必要な教育って何?」の答えです。教育は、フランクの考えていた「一律的に平等な扱いをすること」でもなく、イブリンの考えていた「学歴のようなキャリアを手に入れるための優生思想」でもない。その子の“幸せ”につながりさえすれば何でもいいじゃないですか。映画の最後のメアリーの笑顔で、そう思っちゃいますよ。

映画のオチよりも個人的には、さすがに論文発表時期を指定する遺言は無理やりな感じはあるなと気になってしまいましたが、細かい事なのでいいか。

gifted ギフテッド

ロリ・ビッチ、ここにあり

バチバチと火花を散らすフランクとイブリンをよそに、渦中のメアリーは割とマイペース。取り乱すこともありますが、大人にも動じず、我が道を突っ走っている感じです。「ギフテッド」だからというのもありますが、でも肝が据わってますよね。

本作の監督“マーク・ウェブ”の過去作『(500)日のサマー』では、恋する主人公をひたすら振り回す女性が登場しますけど、本作のメアリーもまさにそんな感じ。「ロリ・ビッチ」ですよ。

このロリ・ビッチことメアリーの愛嬌に観客の99%はメロメロになる…かは断言できないですが、少なくともこの映画の魅力を大きく支えているのは間違いなし。

学校でのいかにも退屈そうな素振りも良いし、あの学校シーンでの、子どもがよく言う間延びした「Good morning Miss Stivenson」の言い方に付き合わされたのちの、フランクと寝たばかりの先生を目撃してからのニヤッと笑いながらの“返しセリフ”も最高。そりゃあ、先生も「ハイ…」しか言えなくなりますよ。

全体的に“賢いのだけどでも子ども”という感じが本当にキュート。「我思うゆえに我あり」に「当たり前でしょ」と返答するかとも思えば、「神様っているの?」とか「ピアノ買ってくれる?」とかの子どもらしい質問も飛び出す。それに対してフランクもちゃんと考えて答えることもあれば、そっけなく即答することもあるのがまたいい。

あの趣味の偏りは心配になりますけど…。

これは単に可愛いという話だけでなく、つまるところ、メアリーは「ギフテッド」じゃなくて「メアリー」としての自我をすでに獲得しているのですよね。映画でもステレオタイプな“子ども”として描くことなく、ちゃんとひとりの人格としてキャラクターを体現させており、子役の力と製作陣の配慮がよく感じ取れました。

“マーク・ウェブ”監督は、大人でも子どもでもビッチを描くのが上手いということが判明しました(結論はそれでいいのだろうか…)。

ちなみ“マーク・ウェブ”監督は2017年にはもう1本、インディペンデント映画で『The Only Living Boy in New York』という作品を撮っているのですが、こちらは日本では劇場公開予定はないようです。

(C)2017 Twentieth Century Fox