ザ・ギフト
映画『ザ・ギフト』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Gift 
製作国:アメリカ 
製作年:2015年 
日本公開日:2016年10月28日 
監督:ジョエル・エドガートン 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★
 

あらすじ

新たな転居先で幸せな生活を送る夫婦の前に、夫・サイモンの同級生と名乗る男・ゴードが現れた。再会を喜んだゴードから、2人に1本のワインが贈られ、妻のロビンも最初は喜ぶ。しかし、何度も続くゴードからの「ギフト」により、夫婦の日常は少しずつ崩れ始める。


ギフトの意味

「ギフト」という言葉を聞いて嫌なイメージを連想する日本人はいないでしょう(贈り物で苦い思い出がある場合を除く)。

「ギフト」はもちろん英語(gift)で「贈り物」のことであり、「才能」の意味もあります。

ところが、ドイツ語では「gift」は「毒」を意味するそうです。なぜそうなったのかはよく調べていないのであれですが、同じ“与えられたもの”でもこうも違うとは…。

本作『ザ・ギフト』は、贈り物によって展開される物語ですが、この「gift」の意味は何なのか…それが鍵となります。ネタバレは絶対にしない方がいい映画なので、これ以上は魅力を語れないのが悔やまれます。少なくとも言えることは「gift」の意味が物語の進行に合わせて変化します。最後の「gift」が意味するものは良い「gift」か悪い「gift」か…それは観てのお楽しみ。人によっては胸糞悪すぎる!と吐き気を及ぼすくらいのスリラーにも感じるかもしれません。

本作は俳優ジョエル・エドガートンの初監督作としても注目できます。俳優としては最近は『ジェーン』や『ラビング 愛という名前のふたり』が目立つ主演作でした。『ジェーン』では脚本も担当していて、正直あんまり面白いシナリオではなかったので、大丈夫…?と半信半疑だった私。

↑ナタリー・ポートマン主演作の西部劇。

ところが、本作では見違えるように洗練されて綺麗にまとまっていたからびっくり。実際、映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で批評家の93%から好意的なレビューを得ているくらい、満足度の高い作品に仕上がってます。

ただ、満足とはいっても、後味がズーンと重く残るタイプの映画なので、ノれるかどうかは人によって結構別れる作品だと思います。

ひとりでじっくり観るのがオススメです。






↓ここからネタバレが含まれます↓





素敵なプレゼントでしょう?(笑顔マーク)

いきなり苦言から書きますが、本作、オチ含めて非常に綺麗にまとまっている良く出来たシナリオだと思うのですが、綺麗にまとめすぎた感じもします。

どういうことかというと、劇中の2つの疑惑にあえてツッコんでいないのが気になる。例えば、学校時代にゴードが性的虐待を受けたというサイモンのウソ。さすがに児童へのこのような事件は警察も重くみて調査するでしょうし、調べればウソが簡単にバレるはず。また、最後のロビンの子の父親はゴードかも?という疑いも、DNA鑑定すれば一発でバレるので、あんまり復讐としては長期的な実用性はないです。

しかし、そんな欠点は無視したくなるくらいストーリーテリングと演出が巧みでした。正直、オチは読みやすいのですけど、ぐいぐい引き込まれます。

初監督でここまでのものを作れるのは、ジョエル・エドガートン、素直に凄いと思います。ジョエル・エドガートンは本作とよく似たストーリーの短編を制作したことがあるらしく、もしかしたら自分の中で相当熟考を重ねていたのかもしれません。

とにかく最後のオチに至るまでの勢いは素晴らしいです。リベンジものとしても、ロジックの整った綺麗な復讐が成立してます。残酷な行動無しで、ここまでの復讐を完結するのはなかなかです。

本作は最後の「gift」の解釈が夫と妻で別れてしまい、まさに夫婦の関係性の崩壊とシンクロします。本作は胸糞悪いストーリーだと言われがちですが、事実上はそこまで嫌な事態にはなっていません。ゴードがロビンをレイプしたように匂わせますが、あれはかつて自分がサイモンに嘘をつかれたことの意趣返しとして素直に解釈するなら、レイプというのはハッタリでしょう。というか、本作の別エンディングでは、はっきりとゴードはロビンをレイプしていないと描写されているそうなので、これは確定事項ですね。サイモンにとって赤ん坊は疑心暗鬼という名のギフトとして残っただけです。

一方の妻・ロビンは、天からの授かりもの(ギフト)である赤ん坊を念願かなってやっと手にできました。しかも、夫の醜い実態を知ったロビンにとって、真に愛すべき存在(赤ん坊)を見つけたわけですから、もう迷うこともないでしょう。きっと精神安定剤も必要ないんじゃないでしょうか。

ザ・ギフト

じゃあ、いじめによって人生が崩壊して今回復讐を遂げたゴードはどうか。たぶん「ざまあみろ!」とは思っていない気もするし、そもそもゴードは復讐に積極的ではなく和解の機会も窺っていたような雰囲気さえあります。メッセージの「笑顔マーク」も嫌がらせとかではなくただ不器用なだけかもしれません。ゴードにとってあの赤ん坊は、復讐の道具としての「gift」でもあり、未来の希望としての「gift」でもあるのでしょう

「gift」を多角的に解釈できる練られたシナリオを支える役者陣も良かった。サイモンを演じた“ジェイソン・ベイトマン”、ロビンを演じた“レベッカ・ホール”、それぞれ表情の変化が見どころでした。そして、それと対比するかのようなゴードを演じた“ジョエル・エドガートン”の表情の無さ。魅入りました。

これだけ成功すると、ジョエル・エドガートンは今後、監督業も続けるのかな? 今のところ俳優の仕事ばかりみたいですが…。才能のある俳優はどんどん監督に挑戦していってほしいですね。

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