雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Demolition 
製作国:アメリカ 
製作年:2015年 
日本公開日:2017年2月18日 
監督:ジャン=マルク・バレ 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★
 

あらすじ

ウォール街のエリート銀行員として富も地位も手にしたディヴィス。しかし、ある日、車に乗っていると突然の交通事故に遭い、同乗していた妻が亡くなってしまう。ディヴィス自身は大きな怪我もなかったが、妻の死に一滴の涙も流すことができず、悲しみにすら無感覚な自分に気付く…。

壊れて、壊す、物語
アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』に邦題への不満を書いた私ですが、本作『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』に対しては、もはやなぜこんな邦題をつけたのか謎すぎて何も言えない…。全く無関係じゃないのはわかるけれど…。

原題は「Demolition」。「破壊」や「解体」という意味です。映画を観ればそのまんまなタイトルであることがすぐにわかるでしょう。

思えば監督のジャン=マルク・ヴァレは、“Demolition”なストーリーの映画ばかりを撮り続けてきた人でした。

エイズで余命わずかと診断されたカウボーイが、トランスジェンダーとの出会いをきっかけに人生の意味を見い出す『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013年)。母の死、薬と男への依存、離婚と数々の苦悩により自暴自棄に陥った女性が、数千マイルを一人で歩き通す『わたしに会うまでの1600キロ』(2014年)。


いずれもある出来事がきっかけで人生がバラバラに破壊された人が主人公でした。そして、本作も実にジャン=マルク・ヴァレ監督らしい作品です。ジャン=マルク・ヴァレ監督過去作が好きな人は期待してもいい…と言いたいところですが、本作はアメリカでは評判はよろしくないんですよね…。アカデミー賞常連になるかと思ったジャン=マルク・ヴァレ監督も、こういうときもあるということで。

まあ、ともあれ映画の中身が合うかどうかはあなたしだいです。






↓ここからネタバレが含まれます↓





マイマイガの意味

ジャン=マルク・ヴァレ監督作は地味なドラマであるがゆえに、役者の演技力がいつもモノ言うのですが、その点では主演にジェイク・ギレンホールを起用したのは大正解。おそらくこれは皆が口を揃えて言うことだと思いますが、ジェイク・ギレンホールの無感情に陥った動く人形状態のような演技は素晴らしく、最後にメモを見つけて感情が蘇るシーンなんかはさすがです。

目立たない演出も効いていました。例えば、劇中で何気なく登場する「マイマイガ」ですが、なんでマイマイガなのか?と思いましたが、よく考えるとマイマイガも“Demolition”な昆虫です。害虫として有名で、森を食い尽くし山を丸ごと枯らすほど。マイマイガに食われてボロボロになり、そして自身もマイマイガのように周囲を壊していく…そんな主人公を象徴する存在でした。

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

本作の伝えたいドラマはすごくよく理解できます。

ただ、どうでしょう。感情移入しづらいんじゃないでしょうか、とくにアメリカ人にとっては。

というのも、主人公・デイビスの職業が銀行員であるということがひっかかります。ウォール街の大手企業の高層タワー上層階で働く、いわば社会の上流の人生をおくるデイビス。しかし、ウォール街の金融業界というのは、今の大多数の底辺に生きるアメリカ人にとって、格差を作り出した悪人として憎しみの対象です。そんなデイビスが妻の死という悲劇により破壊衝動に憑りつかれる様子は、もちろんどんな立場の人間であっても辛いことであることには変わりないのですが、冷めた目で見る人がでてもおかしくない気も…。

『ダラス・バイヤーズクラブ』や『わたしに会うまでの1600キロ』に比べて、ちょっと一般受けしづらい設定だったのが、低評価の理由かもしれないなとは思いました。

デイビスは妻に無関心でしたが、社会全般に無関心な人でした。それこそ、妻の交通事故死に関して、加害者である衝突した車側の運転手がいたことも忘れるほど。デイビスが社会に生きる多くの人々とのつながりを認識していくのはきっと映画の先の話なんでしょう。それでも、自分が破壊した社会のつながりを自覚する要素が映画内でもっと描かれていれば、最後のオチも違った印象でより多くの人の心に届いたかもしれません。

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