ダークタワー
映画『ダークタワー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Dark Tower 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2018年1月27日 
監督:ニコライ・アーセル 

【個人的評価】
 星 3/10 ★★★

あらすじ

ニューヨークで暮らす少年ジェイクは不思議な夢に導かれ、時空を超越する荒廃した異世界に迷い込んでしまう。現実世界と密接するその世界では、世界の支柱である「タワー」を巡り、タワーを守る拳銃使いの戦士(ガンスリンガー)のローランドと世界の崩壊をもくろむ黒衣の男ウォルターが壮絶な戦いを繰り広げていた。

ネタバレなし感想

スティーブン・キング・ユニバース

2017年のホラー映画は“スティーブン・キング”が席巻していました。確かに『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』はヒットしていたけど、それだけでは? いやいや、Netflixでしか配信していない『ジェラルドのゲーム』『1922』といった新作映画もあったのです。
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これらの映画を観るとあらためてスティーブン・キングの創り出す世界の独創性は凄いと実感します。

そんなスティーブン・キングの中でも特殊な一作が「ダーク・タワー」です。大学時代から構想を温め、第一巻の発刊から22年を費やして完結させた、全7部からなる超大作…という点でも特筆は出来ますが、ユニークなのはその設定。

これまでの彼の作品は日常の現実世界の中にフッと現れる不可思議な現象や恐怖を描いてきました。しかし、「ダーク・タワー」は思いっきりファンタジーな世界が全面に出てきます。ストーリーだけを簡潔に書くと、荒廃した世界を舞台に、ガンスリンガーと呼ばれる男が“暗黒の塔”を探索するという物語なのですが、これだけ聞いても何のことかさっぱりわかりません。

ところがこの世界観、実はキングの他作品と共有しているらしく、不思議な力を持つ“暗黒の塔”の存在が影響を与えているというかなり壮大な裏があるようで…。つまり、『IT』のピエロも、『ミスト』の怪物も、キング作品に登場する多くの怪奇事件は“暗黒の塔”が関与しているということ。いわば、スティーブン・キング・ユニバースですね。

そんなことを聞いたら俄然興味が湧いてくる「ダーク・タワー」ですが、ついに実写映画化しました。それが本作『ダークタワー』

これまでJ・J・エイブラムスやロン・ハワードなど大物が実写化を試みましたが、頓挫。それがやっとのことで実現です。キャスティングも、“イドリス・エルバ”“マシュー・マコノヒー”が対決して豪華。ちなみに“イドリス・エルバ”は『ズートピア』でアフリカスイギュウの声を、“マシュー・マコノヒー”は『SING/シング』でコアラの声だったので、動物対決です(なんだその見方)。

とまあ、ここまで期待を煽っておいてあれですが、本作を観ても、『IT』のピエロの謎がわかるとかそういうスッキリ展開はありません。あくまで薄っすらと関係性を匂わす程度です。というか、ますますキングの世界観がわからなくなるかも。

日本の宣伝はなぜかお笑いで攻めているのですが、笑いの要素はゼロです。お馴染みの恐怖演出もありません。キングの世界の核心に迫るファンタジーの始まりの物語として楽しんでください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

ダークな事情を察してあげて

最初に言っておくと私は原作は未読。そんな私の懸念事項は、ファンタジーなら専門用語だらけだったらどうしよう…というものでした。「ガンスリンガー」などいかにもな用語もあらすじの時点で飛び出していましたし…。

しかし、その点についてはそれほど問題はありませんでしたね。というのも、この作品は最初から広大な世界観を一気に見せて観客を放り出す系のタイプではなかったから。どちらかといえば少しづつ異変を見せていき、徐々に異世界の実態を露わにしていく、いわば実にスティーブン・キングらしいテイストです。やはりキング作品はどんな作品であれ、この語り口は変わらず、引き込まれる魅力はあります。

地震、絵…と不吉感を小出しにしていき、ついに人ならざる者に追われてたどり着くことになる中間世界。この序盤のパートは個人的にまずまず楽しかったです。

ところがそれ以降の展開はなんだかイマイチ。原作をどれほど集約したのか、またはアレンジしたのか、それはわかりませんがやはり1本の映画に整理するのは大変だったのでしょうか。本作は上映時間が95分と短めで、かなり取捨選択をしたことが窺えますが、あまり上手くいっていないような…。

じゃあ、本作を手がけた監督が未熟なのだろうと思うかもしれませんが、監督は“ニコライ・アーセル”。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(ハリウッド版ではなく本家スウェーデン版)の脚本で有名な人で、18世紀のデンマーク王室を舞台に王と王妃、侍医の三角関係を描き、ベルリン国際映画祭では銀熊賞(男優賞)と脚本賞を受賞した『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』なんかも手がけています。とくにこの『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』は素晴らしい作品で、私もかなり好きな一作。経験や実力の乏しい人では決してないことは断言できます。 


ではなぜ?と考えると、本作のアクション&ファンタジー満載な作品性に“ニコライ・アーセル”監督は合っていないのが一因かな。それと他の脚本家ですよね。調べると個人的には全く楽しめなかった『フィフス・ウェイブ』の脚本を手がけた人も関わっていて、これ以上深入りはよそうと察してあげることにします。
『フィフス・ウェイブ』感想(ネタバレ)…第5の波は別にいらなかった

ダークタワー

ダークタワー、攻略できず

ストーリーはあれでも俳優の魅力でカバーできないかと思ったのですが、もちろん豪華な俳優陣は凄いです。“イドリス・エルバ”と“マシュー・マコノヒー”のビジュアルのパワーはさすがのものです。でも、作品内で輝いていたかといえば、言葉を濁さざるを得ない…。

まずこの両者のキャラクターは少し似ていますよね。“ガンスリンガー”のローランドは常に暗い雰囲気を漂わせてローテンション、対する”黒衣の男”のウォルターは常に怪しげな匂いと何をするかわからないクレイジーさが、対比になっていると言われればそうなんですけど。ちなみに“マシュー・マコノヒー”いわく『時計じかけのオレンジ』の主人公アレックスを参考にしたそうです。

ただ、二人とも影を背負っていることは感じるものの、バックグラウンドが見えてこないため、最後の対決も観客は置いてけぼりを食らうばかりで、盛り上がりにつながらないのが残念。

本作の白眉…と言っていいのがわからないですが、終盤の対決はアクションの大見せ場で確かに派手ですけど個人的にはあまりヒットはせず。

敵のウィルターは超能力で攻めますが、ローランドの銃撃もじゅうぶん超能力レベルで、ゆえに結構、互角で戦えていますが、基本は現実無視のファンタジーバトル。跳弾2発が跳ね返り弾道を変える最後の決め技でウォルターに命中させるのは意外でしたけど。ここの「あっ、当たっちゃった」みたいなウォルターの顔といい、こいつ、案外、弱いのか。そのあとは動揺したのかバンバン撃たれてお陀仏です。

リアル寄りのアクションが重視される中で、ファンタジーバトルは軽視されがちですが、それでも本作のものは飛びぬけてユニークではなかったですね。とりあえず二丁ショットガンでバンバン撃ちまくる中二病的要素を楽しめるだけでいいなら最高でしょうけど。

そんな大物俳優がバトっている中、少年ジェイクが見せ場から完全に蚊帳の外なのも…。

続編の提案もあるようですが、どうなるのでしょうか。適切な監督と脚本家を集めないと、この難攻不落のダークタワーは攻略できないですよ。

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