シンクロナイズドモンスター
映画『シンクロナイズドモンスター』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Colossal 
製作国:カナダ 
製作年:2016年 
日本公開日:2017年11月3日 
監督:ナチョ・ビガロンド 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★

あらすじ

失業して酒浸りなうえ、同棲中の彼氏ティムに愛想を付かされ、故郷の田舎町に戻ったグロリア。そこで韓国・ソウルの街が謎の巨大怪獣に破壊されたというニュースを知る。そのニュース映像を見て違和感を感じたグロリアは、巨大怪獣と自らの行動がシンクロしていることに気が付く。

ネタバレなし感想

アン・ハサウェイ、怪獣になる

“アン・ハサウェイ”といえば“大人”のガールズ・ムービーの代表格的存在であり、日本でもこのタイプの映画ファンには一定の人気を持つ女優。個人的には、“頑張っているけどダメな結果しか生めない”女性を演じさせればピッタリとハマる人だと思いますし、『レイチェルの結婚』(2008年)や『マイ・インターン』(2015年)なんてまさに名演でした。

そんな“アン・ハサウェイ”が「怪獣」になった映画が制作されたと聞いたときは、「えぇっ!?」と耳を疑ったのと同時に、「ああ、でも、“アン・ハサウェイ”なら怪獣にもなりそうだな」と思ったりも。

その異色作が本作『シンクロナイズドモンスター』です。

韓国・ソウルの街に突如出現した謎の巨大怪獣。実は遠く離れたアメリカにいる、何かも上手くいかず酒に溺れるグロリアというイマドキな若い女性と動きがシンクロしていたという衝撃の事実が…こんなお話。

怪獣映画ファンからしてみれば「なんでソウルなんだ!」という感じですが、しょうがないんです。企画初期に『ゴジラ』に似すぎていると東宝に訴えられ、舞台も東京からソウルに変わったという事情があるのですから。そんな本作の日本での配給がパクリB級映画を多数手がける「アルバトロス・フィルム」というのも良いオチじゃないですか。

一方で、ストーリーはパクリなのかというと、それは全くないです。むしろ独創的すぎるというか…。本作、あらすじからは予想もつかない展開に発展していきます。もう『ゴジラ』どころじゃない、「そうなるの!?」とびっくりすることが…。まさかアレも登場するとは…。これはぜひともネタバレは一切見ずにしてほしいところ。

怪獣映画ファンと“大人”のガールズ・ムービーファン。全く違う客層が入り交じるこの不思議な映画は、いろんな視点で語りあえる作品です。唯一無二のヘンテコ映像&物語を体験しましょう。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

怪獣好きの夢が叶った

本作を観終わって、正直言って気になる点はたくさんありますよ。

まず、怪獣とシンクロしていると気づく展開がやけに早過ぎますし、根本的に怪獣とシンクロする設定もご都合主義的。そして、巨大怪獣(グロリア)、そして巨大ロボ(オスカー)のデザインは、子どもの作ったものという設定上、あんなものなのはわかるとして、ウルサイ怪獣映画ファンは他の部分も気になるでしょう。例えば、あそこまで大暴れしているわりにはソウルの街が思ったほど破壊されてる気がしないとか、軍隊がもっと出てこないのはオカシイとか。そもそもモンスターパニックというジャンルで見れば、シーンのボリュームが物足りないです。

まあ、でもこれは本作が低予算映画だという事情が鑑みれば許してあげたくなるので、私はOKです。

それら不満点を払拭するくらい感動するのは、「怪獣になる」という、怪獣映画好きなら誰しもが子供の頃、夢想したであろうことが実現していること。こんな映像、見たことない…そんなシーンの連続で楽しかったです。謝罪文を書く展開は笑っちゃいました。ちなみに「Internet Movie Database」によれば、グロリア(巨大モンスター)が地面に書いた謝罪文には元ネタがあって、なんでもスペイン国王のフアン・カルロス1世が財政が大変な時に、ボツワナでゾウ狩りをして豪遊していたことが発覚した際の「謝罪コメント」そのままらしい…。うん、すごくどうでもいいトリビアだ…。

それになんといっても、最後のシーン。怪獣がロボを倒すという逆『パシフィック・リム』展開は、全国の対怪獣ロボに苦汁を飲まされている純怪獣ファンはガッツポーズなんじゃないでしょうか。

シンクロナイズドモンスター

怪獣がロボを倒す意味

本作にノレるかノレないかは、あとは“大人”のガールズ・ムービー要素をどこまで受け入れられるかどうかにかかっている気がします。

そうじゃないと、怪獣&ロボが大暴れして死傷者多数なのに、何でこいつらはこんなプライベートな問題に悩んでいるんだ!と怒る人も出てくるでしょうから。まあ、ウルトラマンだって活躍中の人身被害は昔から気にしないことになってますし、そこは大目に…。でも、本作の人身被害問題については、中盤で問題視して扱ったわりには、後半はいつのまにかフェードアウトしてて、上手くいってない感じもしましたが…。

それで、肝心なのは、本作の怪獣要素はあくまでグロリアの自立を表現するアイテムにすぎないということ。グロリアは基本、仕事も恋も人間関係も全部流されているだけの女性。とくに力で圧する男性にはとことん弱いです。そんな女性が最後は「ふざけんな!」と言わんばかりに男の力の象徴のような「巨大ロボ」をぶん投げるのは、これ以上ないカタルシスでしょう。

いわゆる“アン・ハサウェイ”版『ワンダーウーマン』ですね。

対するオスカーのキャラ付けが極端すぎて引っかかりますが、これは“ナチョ・ビガロンド”監督のクセかもしれない…。前作『ブラック・ハッカー』の時といい、この監督はキャラのリアルさよりもシーン展開のカタルシスを優先する人な雰囲気がしてましたから。本作が気に入った人は『ブラック・ハッカー』もオススメです。

↑アッと驚く展開が待っているハッキング・サスペンス。

それにしてもソウルはただただ“とばっちり”だったな…。次は別に日本でもいいですよ。ただし、私たち日本人は自力で怪獣を倒せますから、覚悟してくださいね。

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