チェイシング・コーラル
映画『チェイシング・コーラル 消えゆくサンゴ礁』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Chasing Coral 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信 
監督:ジェフ・オーロースキー 

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★

あらすじ

魚たちの暮らしの基盤であり、海の豊かさを支えるサンゴ礁。ところが、ダイバーと科学者、写真家らが結成したチームが海底で目にしたのは、地球温暖化などの気候変動により枯れ果てゆくサンゴの姿だった。サンゴが消滅していく衝撃の映像とともに、その問題に迫っていく。

ネタバレなし感想

サンゴの大量殺戮現象

夏休み真っ最中、観光地は人で賑わっていると思いますが、夏気分を満喫できる観光スポットといえば「沖縄」です。とくに南西諸島特有の豊かな自然は魅力的。そんな場所ですが、今、日本は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」を自然遺産の候補として推し進めています。早ければ来年2018年の夏にも自然遺産として登録される見込みです。

「観光客誘致につながる!ヤッホーイ!」と地元は自然遺産登録に期待と喜びでいっぱいかもしれませんが、大事なのはその自然を守っていくこと。残念なことにこの地域の自然は深刻な脅威に直面しています。そのひとつが「サンゴの減少」です。今年の7月にも環境省が沖縄の海でサンゴの状態を調査した結果、一部の海域でサンゴが壊滅的に激減していることが判明したと発表されていました。要はサンゴの大量殺戮みたいなことが起こっていたのです。

この「サンゴの減少」、実は世界規模で発生しています。そして、それに焦点をあてたドキュメンタリー映画が本作『チェイシング・コーラル 消えゆくサンゴ礁』です。

監督は“ジェフ・オーロースキー”というアメリカ人で、2012年に『Chasing Ice』というドキュメンタリーを撮って、世界で高く評価されました。この『Chasing Ice』は、地球温暖化によって消滅していく氷河の姿を長年に渡って撮り続けた人を追いかけた作品。当時、まだまだ地球温暖化に懐疑的な世論も一部であったアメリカに対して、衝撃を与えた映像でした。

「氷河」の次は「サンゴ」ということで、本作『チェイシング・コーラル 消えゆくサンゴ礁』も流れは同じ。ダイナミックな映像とともに、地球温暖化の問題がその目ではっきりわかる非常に良く出来た教育的ドキュメンタリーとなっています。

海に面した島国ですけど、地球温暖化による海洋の変化への関心がイマイチ低い気もする日本。この作品を見て、意識を高めることは決して無駄ではないでしょうし、教育の現場でも見せるべき映像だと思います。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

映像で大衆に訴える

“ジェフ・オーロースキー”監督の前作『Chasing Ice』にて氷河を撮影する男性がこんなことを言います。

「人々に必要なのは統計の数字やコンピュータモデルじゃない。心をわしづかみにするような目に見える証拠なんだ」

確かに、科学者の研究はそれ自体とても価値あることですが、大衆を動かす力は乏しいです。難しい計算やグラフを見てもピンとこないし、そもそも科学者は“大衆に訴える”プロではないですから、要領がわからないのも無理ありません。しかし、とくに環境問題は現象の解明ができても、結局、“大衆に訴える”ことができなければ意味がなく、近年は“大衆に訴える”能力の重要性が増しています。

そんな中で、“ジェフ・オーロースキー”監督、そして彼の作品を手がける映画製作会社「Exposure Labs」(凄い名前!)は、“大衆に訴える”プロといえるでしょう。彼らの武器とは、ずばりシンプル。「映像」です。

映画を普段観ている人ならわかるように、映像のパワーは凄まじいものがあります。論争が噴出する話題でも映像を見せつけられると“ぐう”の音も出なくなったり…。本作もまさにそんな映像のパワーをフルに発揮するシーンが終盤にあり、バカな感想ですが、映像って凄いんだなとあらためて思ってしまいました。

チェイシング・コーラル

サンゴは永遠にあると思ってた

「映像は凄い」というのはわかりましたが、ただ映像を流してもつまらないものです。そもそもサイエンス・ドキュメンタリー映画というと、もともと興味がある人は好んで観ますが、それ以外の人はどうしても「小難しい」「堅苦しい」「眠くなる」ような作品もチラホラと…。

対する本作は映像ありきに頼ることもなく、全体を通してとても見やすく仕上がっており、ドキュメンタリー映画のお手本みたいな作品でした。

例えば、登場人物の配置。まず、ダイビングを趣味にしていた一般男性が主人公となります。この導入部分は敷居をぐんと下げた構成。続いて登場する研究者ですが、サンゴの生態を紹介しつつも、難しすぎる話はしない。ずいぶんフレンドリーな会話を映していて、これも敷居を下げる意図を感じます。

そして、いよいよ後半。感情を揺さぶるシーンの連続です。サンゴが白化していく映像も突き刺さるものがありますが、その後に映る大勢のダイバーが呼びかけに答えてサンゴの現状を報告してくれる映像、このままでは世界のサンゴは30年で絶滅するという言葉…とにかく焦らされますね。

あと、世代交代を見せるシーンも印象的でした。環境問題は世代を越えて取り組まなければいけないことですから。

サンゴ研究界の巨匠と紹介されていたジョン・チャーリー・ベロン博士が言っていた「あの頃はサンゴ礁は永遠にあると思ってた」という言葉が耳に残ります。今の私たちは同じことは言えませんね。

©Netflix