バーニング・オーシャン
映画『バーニング・オーシャン』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Deepwater Horizon 
製作国:アメリカ 
製作年:2016年 
日本公開日:2017年4月21日 
監督:ピーター・バーグ 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★
 

あらすじ

2010年4月20日、メキシコ湾沖約80kmに位置する巨大な石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」。トランスオーシャン社のエンジニアのマイク・ウィリアムズは、いつものように仕事をする作業員と呑気な上司に苛立っていた。そして、ついに海の底から惨劇がやってくる。

油断できない監督ピーター・バーグ

2016年12月に新潟県糸魚川市で起きた、約1万坪を焼きつくした大規模火災。まだ憶えているでしょうか? では、その原因は答えられますか? 火種の発端は「ラーメン店の鍋の空焚き」でした。

ちょっとした油断があそこまでの甚大な被害に発展するということを、まざまざと見せつけた一件だったと思います。でも、人間っていうのは愚かなもので、しばらくしたら忘れちゃうんですよね…。

そんな油断の怖さをしっかり身に刻み込むためにピッタリなのはディザスターパニック映画。人類は教訓を残すためにも定期的にディザスターパニック映画を作り、そして観るべき!と断言したいくらいです。

しかし、ディザスターパニック映画のなかには、割と教訓とかどうでもよく、勢いまかせで問題解決するエンタメ系の作品もあるので、あれなんですが…。

そこで、2017年、ちゃんと教訓にもなる良質なディザスターパニック映画としてオススメできるのが本作『バーニング・オーシャン』です。

本作は、2010年4月に発生した「メキシコ湾原油流出事故」を題材にした作品。簡単にこの事故を振り返ると、2010年4月20日にメキシコ湾沖合80kmの海上で海底油田掘削作業中だったBP社の石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」が爆発炎上。湾岸戦争に次ぐレベルともいわれる、約490万バレルもの原油が海に流出し、推定数百億ドルの被害金額ともされる原油流出事故として史上最悪のものでした。

本作を監督するのは“ピーター・バーグ”。監督作『ハンコック』(2008年)や『バトルシップ』(2012年)では半笑いにされた彼も、『ローン・サバイバー』(2013年)で高い評価を獲得する大逆転。まさに映画ファンが油断していたところに、思わぬ名作をぶっこんできた人でした。


↑アカデミー賞にもノミネート。

『ローン・サバイバー』は、実際に起きた惨劇的なネイビーシールズの作戦を描いたものでしたが、今度は実際に起きた惨劇的な海上原油流出事故を描きます。あのピーター・バーグ監督がディザスターパニック映画をつくるというだけで凄そうだなと期待膨らみます。

主演も『ローン・サバイバー』と同じマーク・ウォールバーグ。『ローン・サバイバー』級の生々しいリアルなディザスターパニック映画で、油断の怖さをその身に刻み込んでください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





舞台は大炎上だけど映画はクール

本作は、非常にリアルかつ丁寧な映像化であり、極めて洗練されたディザスターパニック映画に仕上がっていました。ディザスターパニック映画の王道的一作です。

これこそピーター・バーグ監督の特徴なのかもしれませんが、ドラマが最小限なのがいいですね。

邦画によくありがちな、主人公たちの人間関係(恋愛やら友情やら)にしょっちゅう脱線することもないですし。かといって、全くドラマ性ゼロのエンタメに吹っ切れてもいない。ベストなバランスじゃないでしょうか。 

また、ディザスターパニック映画は確かに教訓になりますが、得てして説教臭くもなりがち。いわゆる「人災…人間は愚かだ…」みたいな視点です。日本だったら本作を観て、真っ先に原発事故を連想するでしょう。

しかし、本作はそういう要素は比較的抑えめで、善悪を強調しすぎていません。そのためか、原油回収や賠償責任など事故後の話も全然描かれません。もちろん、史実では事故後の方が長いドラマがあるんですが、本作では語らず、あとは観客にまかせています。『ローン・サバイバー』でも似た感じでしたが、ピーター・バーグ監督の史実に対するこの俯瞰した冷静な描き方は、私は良いと思います

バーニング・オーシャン

まるでジュラシック・パーク

教訓的なメッセージはさておき、あくまでディザスターパニック映画として楽しませてくれる本作。見せ場はやはり惨劇までのサスペンス、そして事が起こってからの阿鼻叫喚の地獄絵図です。

まず、序盤からの少しずつ、でも確実なフラグ立てが不穏感をこれでもかと煽ってきます。いい意味での嫌な感じです。

そして、ついに事態がドカーンと動く展開は圧巻。一気に大炎上する石油掘削施設が映るシーンでは、「終わった…」と劇中の登場人物同様に私も茫然自失になります。現場のスタッフは暴噴(ブローアウト)になすすべもなく、虫けらのようにもがくばかり。指揮できる者たちが唯一やれるのは「撤退」。本作が中盤以降描くのは脱出劇というよりは撤退劇でした。ここも完全に『ローン・サバイバー』と同じ。『ローン・サバイバー』も本作も、「プロフェッショナルと世間では呼ばれる人たちでさえ、最悪の事態にはなすすべもないんだ」ということを、これでもかと見せつけてくる作品でした。

主人公の娘が原油を恐竜に例えていましたが、まさに本作は『ジュラシック・パーク』的な解釈もできます。太古からあるモノに対して、人間の悪しき心と油断が間違った扱いにつながり、一気に牙をむく…恐竜も原油も同じです。そういう意味では『ジュラシック・パーク』っぽいパニック映画とも読み取れるかもしれません。

「プロフェッショナル」というキャリアに油断しないようにしたいものです。

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