ブライト
Netflix映画『ブライト』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Bright  
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信 
監督:デヴィッド・エアー 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★

あらすじ

様々な種族が一触即発の空気の中で暮らすロサンゼルスの街。人間のウォードとオークのジャコビーの警官コンビはいつものように荒んだ街で治安を守るべく、仕事に奮闘していた。ある日、世界の秩序を崩壊しかねない絶大な魔力を持つ物体に遭遇。その事件を機に、種族間の激しい抗争に巻き込まれていく。

ネタバレなし感想

相棒はオーク

2016年に喧々諤々の論争を巻き起こした『スーサイド・スクワッド』。その監督を手がけたのが“デヴィッド・エアー”です。こちらの映画の評価は芳しくなく、その理由に監督の本来やりたかったことが製作企業側のパワーで消されてしまったのではないかという指摘もありました。
『スーサイド・スクワッド』感想(ネタバレ)…だから楽しくいこうと言ったのに
そして、その“デヴィッド・エアー”監督が次に作品を生み出す場になったのがNetflixでした。ご存知、映画界で存在感を強めるNetflix。その特徴の一つに大手映画製作・配給会社と違って作り手側のクリエイティブを最大限に尊重し、口を出さないことが挙げられます。監督にしてみれば夢のようだと思いますが、“デヴィッド・エアー”監督の場合は直前の過去作がああなだけに、これで本領発揮できるねと私も思ったわけです。

で、“デヴィッド・エアー”監督×Netflixのコンビで生まれたのが本作『ブライト』

ところがこの作品、単なる本領発揮以上に、かなり新しいことに挑戦している映画になっています。それはポスターを見れば一発で丸わかり。まず『スーサイド・スクワッド』でも主演した“ウィル・スミス”が警官の姿で映っています。これは普通。でも、その隣にいるのは…んっ? 青い…あれっ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』から紛れ込んだ人かな?

そう、本作はこれまで“デヴィッド・エアー”監督が手がけてきた『エンド・オブ・ウォッチ』や『サボタージュ』の舞台であった“治安最悪のストリート”で仕事する警官たちを主役にしつつ、そこにファンタジーの要素をぶっこんできているのです。具体的には、オーク、エルフ、ドワーフ、フェアリーなど非人間の種族が当たり前に存在している世界で、“ウィル・スミス”演じる主人公とコンビを組む青い警官はオークという設定。

荒んだ底辺の人間社会にSF的な異種族が当然のように混ざり合っているといえば、『第9地区』を連想しますが、個人的には『エンド・オブ・ウォッチ』に『スター・トレック』を合体した感じに思えました。

とにかく変わった一作であり、気軽に観られるお手頃な作品なので、お暇な時間にぜひどうぞ。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

世界観は壮大だけど

世界観が世界観なだけにちょっと専門用語が連発してイマイチ全体像の把握が難しい本作。あたらめて整理すると、こんな感じ。

2000年前に、9種族が団結して「ダーク・ロード」というヤバそうなものを封じ込めたが、「インファーニ」と呼ばれる勢力がその復活を謀っている。それでこの世界には、魔法を使う希少な存在がいて、そいつらは「ブライト」と呼ばれる。そのブライトだけが触れることができる、強力な「魔法のワンド」というアイテムがあると「預言」に書かれていて、FBIの「魔法捜査官」がそれを追いかけている…。

びっくりするほど壮大な設定です。

でもわからなくても大丈夫。なぜならこの映画の主人公である警官もよく理解していないから。彼らは日々の職務をこなすのに精一杯。「これ以上の殺人を防げたらコーヒーをおごる」と上司がグチを言うぐらい治安最悪なこの街ではそんな大仰な話は知ったことではないのです。この巨大な世界の流れとは関係なしに黙々と汚れ仕事に努める奴らを描く姿勢は、“デヴィッド・エアー”監督作品に一貫していますね。

世界観というか、街の描写も、監督らしく生々しくて非常に良かったと思います。冒頭のグラフィティ・アートが連続して映し出される映像に始まり、種族を鼓舞したり、差別したりする汚い言葉のオンパレードから、「フェアリー駆除」「オーク語OK」「エルフ特別区」といったパワーワードの数々が日常風景に溶け込んでいるビジュアルは、観客に“凄い世界を見ている”感覚を与えてくれます

あと、劇中のウォードとジャコビーの会話がいちいちしょうもないのも監督っぽいノリでしたね。移動中の車内での顔ギャグとか、銃撃戦で応戦中の“穴”の話とか、どうでもよすぎるのが笑えます。

ブライト Bright

魔法はお呼びじゃない

一方で、明確な不満点もあって、序盤は世界観にワクワクしたのに、「魔法のワンド」が登場して以降の魅力の著しい低下はなぜなのかと。

これについては考えてみると、一応、曲がりなりにも最初はリアリティのある世界にファンタジーの要素を違和感ないレベルで持ってきていたのに、魔法のワンドの存在で一気にそのバランスが崩壊してファンタジー成分過多になったのが原因じゃないかなと思うのです。

この「魔法のワンド」問題は他にも弊害があります。“デヴィッド・エアー”監督作品最大の魅力と言っても過言ではない「ゴア表現」。今作もウォードがいきなりフェアリーをぶっ叩き殺すシーンで「おおっ、今回も楽しい映像を見せてくれそう!」とテンション上がったのですが、魔法が出てくるとゴアじゃなくてファンタジックな表現に力が入り始めるのですよね…。しかも、魔法の力で死さえも克服してしまったら、緊迫感ゼロです。

どうせ魔法があるなら、内臓を全部えぐりだすとか、手足が一瞬でもげるとか、そういう魔法ならではのゴア表現を見せてほしかったなぁ…というのが正直な気持ち。

でも、この魔法については作品自体がメタ的に冷笑している部分もあって、散々酷い目に遭ったウォードが終盤に「Fuck Magic」って言ってますから、そこまで真面目に向き合うことないのかも。

あとは主役の二人ですね。いや、全く魅力がないわけではないし、こいつ等の成長を見ていたい気分にはなるくらい楽しんだのですが、意外性が全くないのが残念。

“ウィル・スミス”は案の定、相変わらず“良いパパ”っぷりを冒頭から見せてくれるし、絶対に良い奴だと決まりきってます。加えてオーク(純潔ではない)のジャコビーも、いわゆる“見た目は怖いけど中身は良い奴”の典型で、悪いわけがない。結局、このバディは良心的コンビなので、物語が勧善懲悪のような雰囲気が出てしまうのが惜しいです。ただでさえ“ウィル・スミス”主演ですから、子ども向けにさえ見えてきます(まあ、子どもには見せられないのですけど)。

私が思うに本作はドラマシリーズ向きな気がします。一話一話でキャラクターを掘り下げ、世界観を小出しにすれば、面白そうです。

Netflix側は続編を作る気満々なようですし、とりあえず気楽に待っていようかな。

©Netflix