僕のワンダフル・ライフ
映画『僕のワンダフル・ライフ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:A Dog's Purpose 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年9月29日 
監督:ラッセ・ハルストレム 

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★

あらすじ

ゴールデン・レトリバーの子犬ベイリーは、自分の命を救ってくれた少年イーサンと固い絆で結ばれていく。少年から青年へと成長していくイーサンの傍にはいつもベイリーがいた。そんな二人の関係も寿命によって終わりがくる。ところが、ベイリーは愛するイーサンにまた会いたい一心で生まれ変わりを繰り返すようになる。

ネタバレなし感想

犬と、犬を愛する人へ

劇場で映画を観ていて最後のエンドクレジットまでしっかり見る人は気づいているでしょうか。ハリウッド映画のほとんどでは、たいていエンドクレジットの終わりのほうに「American Humane Association」というロゴと「この映画の撮影では動物を傷つけたり苦しめることはしていません」という感じの文章が表示されているのを。

「American Humane Association」という聞きなれない名称。これはアメリカの非営利組織で、動物と人間の健全な関わりを実現するために活動しています。映画においては、動物虐待はもちろん、撮影に参加した動物が不当な扱いを受けていないか監視しています。これは英語では「Animal Welfare」(“動物福祉”と和訳されます)と言って、欧米では映画に限らず動物が関わる業界では常識です。要するに動物版のレイティングをしているんですね。そのため、昔は映画撮影で動物が酷い扱いを受けることは珍しくありませんでしたが、今では動物虐待なんて起きにくい(というか起きたら大変な騒ぎになる)状況なのです。

そうしたなか、犬がメインで登場しまくる本作『僕のワンダフル・ライフ』にて、とあるひと悶着が起きました。というのも、映画撮影中の様子をおさめたとされる動画が流出、そこには主演している犬をスタッフがまるで水に溺れさせようとしているような光景が映っていたものだから、世間は大騒ぎ。毎度過激なパフォーマンスで知られる動物愛護団体「PETA」は上映中止を求める動きまで扇動し、映画がお蔵入りするのかとさえ思うほどの混乱状態に。結局、「American Humane Association」の調査の結果、動画は意図的に編集されたもので、虐待の事実はないということが発表され、無事、公開されました。こういうこともありますから、やっぱり「American Humane Association」のような監視の仕組みは映画のためにも必要だなと思ったエピソードでした。

で、話を本作『僕のワンダフル・ライフ』に戻します。といっても事前に語ることはないんですよね。作品の中身はあらすじのとおりだし、そもそも予告動画がストーリーの出だしからオチまで含めた映画全部がわかってしまう総集編みたいになっているのです…。今さらですが、ネタバレが嫌な人は予告は見ない方がいいでしょう。

まあ、ストーリーよりも、ひたすら犬を愛でるのがメインの映画ともいえますから、気にしなくていいのか。犬好きは幸せいっぱいになれます。

また、原作は、ベストセラー作家のW・ブルース・キャメロンが、愛犬を亡くして辛い思いをしていた恋人のために書いた小説とのことらしく、ペットロスに陥っている人は、本作を観れば元気がもらえると思います。いや、そんな人が観たら、尋常じゃないくらい号泣してしまうのじゃないだろうか。とにかくペットを失って辛い気持ちを抱えているなら、本作は絶対に必見でしょう。






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

犬たち、よくできました

本作は完全なる「犬好きの犬好きによる犬好きのための映画」でした。

猫がメインになる映画はメン・イン・キャットキアヌなど最近もありましたが、こちらはコメディが主な楽しみ要素。対する本作はもうがっつりハートフル・ドラマですから、犬を愛でて愛でて愛でまくる。それが至高…そんな作品です。

主人公犬ベイリーは最初はゴールデン・レトリバー、続いてジャーマン・シェパード、コーギー、最後はセント・バーナードとオーストラリアン・シェパードのミックスと生まれ変わりを繰り返し、その各パートでその犬種らしいエピソードが盛り込まれるのが、犬好きにはうれしいです。やっぱりコーギーは短足をからかわれてこそコーギーなんだなぁ。

劇中に登場する犬たちは当然のように皆、可愛らしく“演技”していて楽しそうです。犬に動きを指示するトレーナーの技術、そして『HACHI 約束の犬』など過去にも犬映画を手がけた経験のある“ラッセ・ハルストレム”監督の手腕のなせることなのでしょう。でも、それ以上に、こんな「映画」という人間の趣味に付き合ってくれた犬たちに「ありがとう」と伝えたいです

本作の犬の魅力は動きなどの演技だけでなく、声も大きな役割を果たしています。その犬のベイリーの独白も、犬好きならずともクスリと笑えるものばかり。オリジナルで声を担当しているのは、世界的大ヒット・アニメーション『アナと雪の女王』でオラフの声を演じ、実写版美女と野獣ではル・フウ役を演じた“ジョシュ・ギャッド”。相変わらず憎めない感じが上手い人ですね。

ただ、個人的には犬よりも、老齢のイーサンを演じた“デニス・クエイド”の、長い人生を辿ってきた男の面影が匂いたつ存在感一発で、ドラマに頼らない謎の説得力がある感じに一番感動しましたけど。

僕のワンダフル・ライフ

愛ゆえにドラマの不備が…

そんな犬好き歓喜の本作ですが、冷静に観るといろいろ言いたいこともあって。

全体的に「犬に甘すぎる」のですよね。

例えば、猫の扱いが冷たいのは(猫は死体ギャグに使われてました)、まあ、小さいことだとして許しましょう。でも、犬の行動をただただ優しく、言い換えれば無責任に全肯定しているようなドラマともいえ、そこは気になりました。とくにベイリーによって人生をめちゃくちゃにされている人がいる点です。イーサンの父は直接的な原因を辿ればベイリーの行動によって仕事に失敗し、酒と暴力に溺れるようになったわけで、そこに何のフォローもないのはさすがに可哀想でした。また、イーサンの家に火を放つ友人も、放火は絶対にやってはいけないことですが、これも元をたどればベイリーの軽率な行動で尊厳を傷つけられたわけで、簡単に悪い奴と切り捨てていいものなのかと。ベイリーの行為の責任は、当然、飼い主であるイーサンの責任です。この映画ではイーサンがベイリーをしつけるシーンが明確にはないため、かなりマナーの悪い飼い主にも見えかねません。

そこをもう少し物語のバランスをとっていれば溜飲が下がるのですけどね。例を挙げるなら、老齢イーサンがベイリーに気づいた後、父の墓参りに一緒に行って墓前で謝るとか。はたまた、放火友人ともう一度出会い、仲直りするとか(この際、友人が犬を飼っているとなお良し)

あと、踏み台ジャンピングキャッチでベイリーだと気づくのも、ご都合主義的というか、もっと工夫はなかったものかと。あれくらいのアクションなら他の犬も才能があればできますし、こう、ベイリーとイーサンにしかできない二人だけの秘技を見せてほしかったし、その秘技を完成させる過程をもっと時間をかけて見せれば、最後はさらに感動するはずなのにな…とか。ラストにやっぱり猫にひっぱたかれるベイリーが映れば、猫好きも“良し”となりますよ(えっ)。ここをこうしていたらと思うことはたくさんあります。とにかく惜しい映画です。

これからは動物愛と映画愛が溢れて、かつ面白い作品が生まれることを期待しています。

(C)2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC