ブラッド・ファーザー
映画『ブラッド・ファーザー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Blood Father 
製作国:フランス 
製作年:2017年 
日本公開日:2017年6月3日 
監督:ジャン=フランソワ・リシェ 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★

あらすじ

かつて犯罪の世界に身を置き、現在はアルコール中毒のリハビリをしながら、トレーラーハウスで暮らすジョン・リンク。彼のもとに数年前から行方不明となっていた一人娘のリディアが駆け込んでくる。ギャングと起こしたトラブルにより、警察や殺し屋から追われるリディアを守ることを決意するが…。

老体アクションのススメ

「geriaction」という言葉があります。

これは「geriatric(老人の)」と「action(アクション)」を組み合わせた単語で、「老齢の人間(たいていは往年のアクションスターが演じる)が主役で活躍するアクション」のこと。最近だとLOGAN ローガンがズバリそれですね。

コアなアクション・ファンは「ああ、それね、大好物です!」と手を叩いて喜んでくれるし、理解してくれると思いますが、キャリアを積みに積んで年季の入ったアクション俳優はそれだけで見ていて楽しいものです。そりゃあ、若い俳優のほうが体力もあるだろうし、客も呼べるでしょうが、問題はそこじゃない。ストーリーが単純だとしてもノー・プロブレム。「時代の変化に逆境を感じながらもあの俳優がアクションしている!」というだけで「応援しないと」心情を掻き立てられます。

本作『ブラッド・ファーザー』も典型的な「geriaction」です。

正直、アル中で生活が荒んだ親父が娘を危機から守るという設定は、凡百の映画で散々観てきました。オリジナリティは無いに等しいです。でも、「geriaction」好きはそんなこと気にしないはず。

なんていったって本作の主演は“メル・ギブソン”ですよ。この人ほどつい最近まで“時代の変化に逆境を感じていた”人はいるでしょうか。『マッドマックス』で脚光を浴び、『リーサル・ウェポン』という次作にも恵まれた彼はアクション俳優として最高のスタートを切った…はずでした。しかし、不倫、暴力、差別的言動と目に余る問題の塊がボロリと飛び出ると、当然ながら世間も黙ってはいません。映画人生をあっという間に転落させてしまいました。

それでも『復讐捜査線』(2010年)や『キック・オーバー』(2012年)で主演をつとめるとやっぱり魅力にあふれている。人間性は欠陥だらけでも、俳優として凄いなと実感するわけです。

↑賢すぎるメル・ギブソンが活躍。

そんな“メル・ギブソン”久しぶりの主演作である『ブラッド・ファーザー』は、アクション俳優として完全復活という宣伝に偽りなしです。同じ年に『ハクソー・リッジ』で監督としても完全復活してますから、もう凄い。なんだ、イエス・キリストなのか、この人…。

“メル・ギブソン”の復活を待ちわびた人も、その名を知らなかった人も、気持ちよく楽しめる「geriaction」。全編88分と短く、感傷的なドラマもほどほどにテンポ良く展開していって観やすい。しかも、思った以上にコミカルで、普段この手の映画を観ない人にもオススメの一作です。






↓ここからネタバレが含まれます↓





血まみれだけど血は通ってるオヤジ

主人公ジョンは、もう設定が完全にイコール“メル・ギブソン”なくらいそのまんまですが、アウトローな存在感は“メル・ギブソン”史上最高クラス

荒野の真ん中にポツンとあるボロボロトレーラーハウスに暮らし、近所の仲間たちにタトゥーを入れて生活している刺青師。そのわりには、風貌が明らかにコイツ“ただものじゃない”感が満載なのが可笑しい。

実際、娘のリディアがジョンのもとに逃げ込んできて、トレーラーハウスに悪どもが攻めてくれば本領発揮。容赦なく刺す撃つの反撃。これに対して、敵側もトレーラーハウスに車を突っ込ませて横転させる容赦なさも良いですね。

暴力アクションだけでなく、頭も切れるジョン。敵の正体を看破し、罠を張り、刑務所生活で培った犯罪者とのネットワークを駆使していくのも面白いです。最後のオチも、この映画のコミカルさがよくでている終わり方で良いのではないでしょうか。ただ、終盤のバイクの下に爆弾を仕掛けるくだりは、作戦として行き当たりばったりすぎて、賢さに疑問符が付きましたが…。

暴力しかできないけど、人間味はある感じが堪らないオヤジでした。

バイクの後ろに私も乗りたい…。

ブラッド・ファーザー

オヤジの血が確かに通ってるムスメ

そんな父の娘リディアを演じた“エリン・モリアーティ”もキュートでした。

今年公開された『はじまりへの旅』に出演していましたが、一番の活躍の舞台は海外ドラマ(『ジェシカ・ジョーンズ』など)。映画での出番が増えると良いですね。

凶暴オヤジに動じない強さと、映画館でスマホを鳴らしちゃうようなガサツさが、あの父の娘だなと思わせます。表情演技も良くて、序盤のジョナーに住民を撃てと迫られるシーンで、動転してジョナーを撃ってしまったときの「撃っちゃった!」な顔がGOOD(ちなみにここのジョナーの「撃たれちゃった」な顔もいい)。父や他の男たちとの掛け合いも楽しそうでした。父と隣り合うことで可愛さが倍増しますね。つまり、“メル・ギブソン”は女の子を可愛くみせるアイテムだった!? そういうことにしよう。

父から娘への継承の物語としても綺麗にまとまってました。

父娘以外にも、ジョナーを演じたローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリーでおなじみの“ディエゴ・ルナ”も良かったし、カービーを演じた“ウィリアム・H・メイシー”はさすがのベテランの貫禄でした。

ひとつ文句を言うなら、「“メル・ギブソン”、完全復活!」のノリで観てる観客としては、劇中のジョンは最後ひっそり人生から引退してしまう展開に、若干の「あれれ…」と興をそがれる気持ちもなくはないですが…。ま、いっか。

次の“メル・ギブソン”、楽しみです。マッドなマックスとかでないかな…。

(C)Blood Father LLC, 2015