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『シン・ジョーズ』感想(ネタバレ)…直ちに影響はありません?

シン・ジョーズ

直ちに影響はありません?…映画『シン・ジョーズ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Atomic Shark
製作国:アメリカ(2016年)
日本では劇場未公開:2017年にDVDスルー
監督:グリフ・ファースト(A.B.ストーン?)
シン・ジョーズ

しんじょーず
シン・ジョーズ

『シン・ジョーズ』物語 簡単紹介

太陽が照りつけるカリフォルニア州、サンディエゴのビーチ。その平和な場所に突如、焼死体が浮かび上がり、さらには焼かれた魚の死体も散乱する。誰かが海で魚を料理したわけではないことはすぐにわかる。その不審な事件は謎が多く、本格的な調査に取りかかる必要があった。ライフセーバーのジーナとカプランは死体を調べていくうちに、核実験の影響により進化したサメの犠牲者だと判明する。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『シン・ジョーズ』の感想です。

『シン・ジョーズ』感想(ネタバレなし)

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シン・ゴジラ第ゼロ形態

福島原発事故以来、水産物の放射性物質検査が定期的に実施され続けています。思い出してみれば、世界で唯一の被爆国だなんだと言っておきながら、いざ原発事故で放射能汚染が起きると、放射能のことを何も知らないことが浮き彫りになったかのようなパニックでした。何が正しい情報かもわからず「放射能」という言葉が一人歩きしたものです。

放射能ってなに? 被爆ってどうやったらわかるの? 人に移るの? 食べ物は危険なの? 瓦礫もダメ? 土も? 水も? シーベルト? ベクレル? は?

しかし、さすがに本作『シン・ジョーズ』のような勘違い妄想をしている人はいなかったでしょう(多分…)。この『シン・ジョーズ』、それくらいぶっとんでます。

サメ映画といえば去年は『ロスト・バケーション』という真面目な正統サメ映画の新たな名作も公開されたりしましたが、本作は、まあ、名前から察しのとおり、数多あるB級サメ映画のお仲間です。

B級サメ映画界隈では、もはやサメはフリー素材。頭が2つ・3つになったり、幽霊になったり、宇宙に行ったり、気象現象になったり、怪物や巨人と闘ったり、頑張り過ぎです。次は何がくるのか、ネタを楽しむのがB級サメ映画ウォッチャーの嗜みですが、本作『シン・ジョーズ』は、核実験によって放射能を有した体に変異したサメが暴れ回ります。はい、ゴジラです。きっと『シン・ゴジラ』のゴジラも生まれたときは『シン・ジョーズ』のサメみたいな奴だったんだと思うと愛着がわく…かもしれません。

そう考えると、『シン・ジョーズ』という邦題は話題性も含めて完璧でしたね(ちなみに原題は『Atomic Shark』)。ただし、このサメは光線は発しません。あと、巨大化はしません。それだけは言っておきます。その代わり、とんでもない武器というか能力を持っています。これを思いついた奴を正座させてどういうことだと小一時間問いただしたいくらいの意味不明な能力です。発想としてはゴジラと戦った公害怪獣「ヘドラ」に近いことをするのですが、なんでこんなにも安っぽさが漂うのだろう…。作り手が完全にギャグだと思って作っているからなのかな。

本作はB級サメ映画のなかでも、最低クラスを競い合えるレベルですが、頑張って挑んでみてください。たぶん、鑑賞しても、健康に直ちには影響はありません。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『シン・ジョーズ』感想(ネタバレあり)

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漫才コントをお楽しみください

いきなり全然違う話をしますが、こういうB級映画の感想を書くのって難しいですよね。考察しがいのある深いテーマの映画や、みんな大好きな大作映画は、書きやすいですよ。でもB級映画はもう語るにもそれ自体のモチベーションを削ぐ、強烈なパワーがあるので、書き手は試されます。というか、書いている最中に「自分は何をしているのだろう」と我に返る瞬間が2、3度はあります。それでもユーモアたっぷりに感想を書きている人を見ると本当に尊敬します。自分も頑張ってこの強敵に勝たないと。気持ちで負けちゃダメだ。よし(気合を入れる)。

ということで『シン・ジョーズ』ですが、数多あるB級サメ映画たちが最近は絶妙に雑なVFXとCGで派手さを重視しているなか、本作は割と抑えめ。本作は「Syfy」というアメリカのケーブルテレビ・チャンネルで放映されたTV映画だったようで、だからなのか、一際シンプルな映画でした。スマホゲームとかしながらダラダラ流し見する前提で制作されている感じです。それにしても「Syfy」ムービーのなかでも、一際チープでしたけど…。

放射能を究極までに勘違いして生まれたかのようなサメのインパクトは、小学生が考えたみたいな設定で嫌いになれません。赤く熱されたように光る背びれが海面を疾走するさまは、もう意味不明です。本作のサメはあれですね、物理系で攻めるのではなく、能力系で攻めることもできるタイプですね。小型船くらいならひと噛みで爆発炎上させる(でも船は原型を留めたまま焦げないけど)とか、ケレン味が効いてました。たぶん、あれですよ、生命体だけを熱することができる、非常に配慮の行き届いた攻撃能力なんでしょうね。ちゃんと周囲に迷惑をかけない、シン・ジョーズは偉いなぁ。

そして、意味不明の極みは、放射能汚染された魚を食べた人間が赤く膨れ上がって爆発するという、謎の描写。サメよりこっちの方が問題だろう…。さすがにこんな発想をしている人は、原発事故時にはいなかったかな(いなかったよね?)。まあ、放射能汚染されて赤く発狂している時点でリアルもクソもないのですが、食べて爆発ならとっくのとうにみんな爆発しているし、それはサメ以上にどう解決すればいいんだ…。

起こっていることだけを取り上げれば、サメ映画史上類をみないヤバい状態なのですが、あまりにも想像を超える異次元のヤバさにこちらの感覚もマヒ。あ~、食べたら爆発するんだ、そっか、へぇ~(思考停止)…みたいな感じです。うん、ダメだ、これ以上なにも考えられない。

もしかしたら「被災地を食べて応援!」という姿勢に対するアンチテーゼなのかもしれない。よし、そういうことにしよう。こういうのは強引なこじつけが大事なんです。そうやって書き手である自分を騙すのです(必死に自分に暗示をかける文章)。

そんな異常事態のオンパレードに観客は大混乱するなか、本作の登場人物たちはどこか平凡。人が死のうがなんだろうが、終始、サメそっちのけで漫才コントが展開されます。BGMギャグとか実にくだらないです(良い意味で)。要所要所入るギャグが、サスペンスもロマンスも全てぶち壊していく…あれっ、本当に恐ろしいサメに脅かされているんですよね? というか、こんなのでサメをどうやって倒すのだろうかと思ってたら、サメ、勝手に自爆しました…

主人公たち、別にいらなかった…。“漫才コントしている間にサメが死んでいた”サメ映画なんてなかなかないんじゃないでしょうか。普通のB級サメ映画(なにが普通なんだという話ですが)は、それでも一応人間側がサメと戦うためにあれこれ悪戦苦闘していくものなのですが、本作はそれを全否定するかのようなスタイル。

そもそも爆発オチのフラグはたっていたし、何をしなくてもサメは倒せるのなら、この映画で描かれていた大半のドラマは何だったんだ…。

いや、これは放射能騒動の真理かもしれない。人間たちは騒ぎに騒ぐけど、そんな喧騒とは裏腹に勝手に事態は収束しているというリアル。人間の行動の無意味さ。サメという人間にはどうしようもない脅威のメタファー。「ゴジラ」よりもある意味リアルを追求した、放射能の恐怖。それは真面目に戦ったら負けだという教訓。深い、深いぞ、この映画!(少し頭がおかしくなっています)

教育的なサメ映画だったなぁ。

『シン・ジョーズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience 16%
IMDb
3.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 2/10 ★★
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関連作品紹介

どうかしているサメ映画の感想記事です。

・『シャークネード4(フォース)』
…サメが竜巻と合体して、謎の能力に目覚めていく(意味不明)。

・『PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星』
…サメが海に覆い尽くされた地球で覇者になっていく(意味不明)。

以上、『シン・ジョーズ』の感想でした。

Atomic Shark (2016) [Japanese Review] 『シン・ジョーズ』考察・評価レビュー