SPY スパイ
原題:Spy
製作国:アメリカ
製作年:2015年
日本では劇場未公開:2016年にDVDスルー
監督:ポール・フェイグ

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★
 
あらすじ

CIAでエージェントをサポートする分析官として働くスーザン。ある日、核爆弾の売買を阻止する任務を遂行中に、パートナーのファインが冷酷な武器商人・レイナによって撃たれる。レイナに全てのエージェントの顔が知られてしまい打つ手なしと思われたなか、スーザンは自ら志願して現場のエージェントになることを決意する。

おばさんでもスパイになれる

スパイアクション映画『007』シリーズの最新作で主人公ジェームズ・ボンドを演じてきたダニエル・クレイグが次回作には降りるとの情報が流れたとき、次は誰がジェームズ・ボンドになるのか?と話題になりました。さまざまな俳優の名前が飛び出す中、女性のジェームズ・ボンドを求める声も。

でも、本作『SPY スパイ』がやってくれちゃいました。

女性大活躍なスパイ映画の誕生です。

ただ、女性といっても、本作の主人公スーザン・クーパーは内勤のおばさん。スパイとして活動するにはいささか不安ですが、心配ご無用。バッサバッサと敵を倒し、スマート(?)に任務をこなします。

見どころは女性だけではありません。とくにジェイソン・ステイサムに注目。かつてないほどバカキャラを演じています。

おばさんが主人公ってことはコメディでしょう? どうせ映像はB級映画みたいなチープなやつだろう」なんて思っているなら、大間違いです。キレのあるアクションあり、派手な大激戦あり、カーチェイスあり、大物ゲストあり、縦横無尽に世界を舞台に展開します。さらに『007』シリーズ風のオープニングクレジットもあってサービス満点。爆笑と爽快感を味わえる楽しい映画です。まるで映画自体が偏見を跳ね飛ばすかのようなパワーに満ちています。

監督は2016年公開のリブート版『ゴーストバスターズ』の監督でもあるポール・フェイグ。冴えない女性の大活躍を描くなら、この人の右に出るものはいません。


残念なことに本作はDVDスルー。2016年リブート版『ゴーストバスターズ』を見るなら、ぜひ本作も合わせて見ておくと良いです。





↓ここからネタバレが含まれます↓




女性賛美&男性批判の映画ではない

主人公スーザン・クーパーはとにかく他者からの評価に恵まれていません。一番のパートナーであるエージェントのファインは仕事を評価してくれていますが、スーザンを女性とは見ていない。これが一番辛かったりしますよね。

ところが周囲の評価とは裏腹にスーザンは実は非常に優秀。

分析官として的確にサポートする能力があるのはもちろん、射撃や体術、バイク・車・飛行機・ヘリの操縦、外国語、とっさの判断力や危険察知力、コミュニケーション、度胸、どれをとってもバツグンの才を秘めていました。

ここで問題なのが、スーザン自身も自己評価が低いこと。この扱いが当然だと思っています。意外に優秀だということが判明し、上司になぜ隠していたのと聞かれても、スーザンはそれが普通だし、サポートのほうが向いていると思ったと控えめな言い分にとどまるばかり。

ジェンダー問題に詳しい専門家によれば、こういう傾向は女性によくみられるそうで、男性は昇進や自己推薦に積極的で、女性はその逆の特徴を示すことが統計的に示されています。つまり、本作で描かれていることは、多少オーバーな味付けがされていますが、科学的な根拠に基づく事実なのです。

そんな抑圧されてきたスーザンがエージェントになってやりたい放題しまくる展開は痛快。とくにナルヒス・ファクフリ演じる“緑女”・リアとの対決シーンは迫力ありました。
SPY
この映画のいいところは、決して女性だけに焦点を当てた「女性賛美&男性批判」にはなっていないという点だと思います。

確かにジェイソン・ステイサム演じるフォードはアホなんですけど、ローズ・バーン演じるレイナ・ボヤノフもわりとアホです。というか、この作品は登場人物全員がなにかしらマヌケな一面があります。

つまるところ、男だからとか女だからとか関係なしに「誰だって優秀な点もあれば、ヘマすることもあるでしょう?」という極めて真っ当な平等精神が込められています。

この映画を見た後は、優秀なはずなのに評価されない…そうした隅でくすぶる人が身近にもいないか気にしてみましょう。人材不足だなんだとぼやく前にすることがあるでしょう。そして、自分に自信がない人は、臆せず自身の能力や意見を表に出してみませんか?