ジョン・マカフィー 危険な大物
ドキュメンタリー映画『ジョン・マカフィー:危険な大物』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Gringo: The Dangerous Life of John McAfee 
製作国:アメリカ 
製作年:2017年 
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信 
監督:ナネット・バースタイン 

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★

あらすじ

世界的に有名なアンチウイルスソフト「McAfee」の開発者にして、セキュリティ大企業「マカフィー」の創設者であるジョン・マカフィー。IT界の天才と評される彼には、恐るべき裏の顔があった。カルト、武装、レイプ、拷問、殺人…大富豪ジョン・マカフィーの衝撃の実態が暴かれる。

マカフィーの闇

ウイルス対策ソフトは使っていますか? もし使ってないよという人はインストールしてください。このブログが乗っ取られて不正行為に悪用されていたら、防御できませんからね(無責任な文章)。ウイルス対策ソフトにはいろいろなメーカーのものがあります。「ウイルスバスター」「ノートン」「カスペルスキー」「マカフィー」とかとか。

しかし、このブログはウイルス対策ソフトの宣伝サイトではありません。今回、語るのは、そのとあるウイルス対策ソフトの開発者に迫った『ジョン・マカフィー:危険な大物』というドキュメンタリーです。

“ジョン・マカフィー”は、その名から一目瞭然のとおり、ウイルス対策ソフトのなかでも超有名な「マカフィー(McAfee)」を開発した人物です。現在の「マカフィー」はインテルの子会社ですが、当初は小さな企業であり、コンピュータウイルスがそこまで認知されていなかった時代にウイルス対策ソフトに注目して、誰よりも先に手を付けた先進性がありました。その当たりによって“ジョン・マカフィー”は大富豪になり、今や世間では初期IT界の成功者として名を馳せています。

本作は、そんな輝かしい“ジョン・マカフィー”の成功の軌跡を追いかけたドキュメンタリー…ではないのです

実はこの“ジョン・マカフィー”、驚くべき裏の顔があった!というのが本作の主題。セキュリティに携わる人だから正義感溢れる人なのかななんて思っているなら、とんでもない。予想の斜め上どころか、最悪中の最悪。知らない人が本作を観れば相当ショッキングを受けると思います。

コンピュータウイルスよりも危険かもしれない“ジョン・マカフィー”の闇をぜひその目で確認してはどうでしょうか。ちなみに、ウイルス対策ソフト「McAfee」を悪く言う作品ではないので、「McAfee」利用者の人はそのままお使いください。






↓ここからネタバレが含まれます↓





この脅威は駆除できない

本作、冒頭が良いです。警察に捕まるおっさんをとらえた車内カメラの映像。えっ、こいつが“ジョン・マカフィー”?と思うと同時に、警官は全然知らないのが面白い。本作でひたすら恐ろしい裏の顔が暴かれる彼ですが、ここで単なるおっさんでもあるという姿を見せるこの対比がシニカルでGOOD。逆に言えば、普通(に見える)おっさんが実は…という恐怖もあるのですが。

本作は、“ジョン・マカフィー”のドキュメンタリーをとろうと思い立った監督のナネットが“ジョン・マカフィー”へコンタクトを試みながら彼の軌跡を辿る、リアルタイム感のあるドキュメンタリーとなっています。そのため、結構スリリングで引き込まれます。

まず、“ジョン・マカフィー”のスタート地点であるシリコンバレー時代。ウイルス対策ソフトを成功させて大儲けした彼の企業の内情について、「ユニークな社風」「カルト集団」と語られます。セックスで点数を競ってたなんていう証言もあり、なかなかの“ハジケ具合”。まあ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ですよ。是非はともかく、これくらいなら莫大な収益をあげている企業だったら、やってるところは普通にあるだろうなと思って観ていました。ビジネスから足を洗い、コロラド州に移り住んでヨガと瞑想に熱中する姿も、カルトだと形容する人もいましたが、そこまで衝撃ではないですよね。この時点では。

しかしです。中央アメリカ北東部のユカタン半島の付け根に位置するベリーズという国に“ジョン・マカフィー”が舞台を移すと、不穏な空気がムッと増します。

地元警察や政府への異様なほど多額な寄付によるコントロール、“ジョン・マカフィー”のベンチャー事業で雇われた女性の微生物学者が体験する恐ろしい出来事、“警備”どころではないギャングさえ仲間にして組織化する“ジョン・マカフィー”の私設武装集団、スカトロ趣味に付き合わされながらも決して彼への執心を止めない地元の元は貧しい女性たち。

“ジョン・マカフィー”の支配欲と暴力性がこれでもかと際立つエピソードばかり。本作を観てると、よく中東とかで地域を独裁する権力者がいたりしますが、そういう人たちが地位を得ていく過程はこういう感じなんだろうなと実感。きっと世界中で“ジョン・マカフィー”のような人間がたくさんいるのでしょうね。

そして、ついに起きる殺人事件。この事件は現在も捜査中なので不確かなことは何も言えませんが、劇中でナネット監督がどこまで踏み込むのかハラハラでした。

ジョン・マカフィー:危険な大物

“ジョン・マカフィー”は、一見するとよくいる保守的な白人キャラなのかなと思わせておいて、内面に底知れぬ不気味さを持っている…「なんなんだコイツ」感がとにかく恐ろしい。現実に存在しているのが怖いです。しかも、セキュリティーの専門家としてビジネス界に返り咲いているわけですから、何なんでしょうか、この世の中は。

くすぐりを観ても思うことですが、危ない奴が金持ちになるとロクなことがないですね。もう大富豪の人には精神鑑定を義務付けても良いのではないか(暴論)。それにしても、こういうアレな人はなんでアメリカ大統領選に出たがるのか…。

本作がどこまで真実かはもちろんわかりません。ただ言えることは、本作を制作したナネットという女性監督の、恐ろしい権力や暴力にものともせずジャーナリズム精神で立ち向かう姿勢は称賛します。私なんかマカフィーに「総力を結集して君をつぶす」なんて言われたら、もうガクブルで、ネット使えなくなりますよ。

危険人物を見抜けるウイルス対策ソフトが欲しいなぁ…。