KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV
原題:KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV
製作国:日本
製作年:2016年
日本公開日:2016年7月9日
監督:野末武志

【個人的評価】
 星 5/10 ★★★★★
 
あらすじ

ニフルハイム帝国との戦争が続く魔法国家ルシスは、レギス国王の直属部隊「王の剣」に所属するニックスたちの活躍により、なんとかニフルハイム軍の侵攻を防いでいた。しかし、圧倒的な戦力を前にレギス国王はルシス王国を守るためにある決断を迫られる。

これこそリサージェンス

昔は「映画みたい」がゲームの評価における褒め言葉だった時代もありました。でも今はゲームが映画化されたり、映画がゲーム化されたりすることは珍しくなく、ゲームと映画の境がなくなってきました。「ゲームの映画化」の例では、最近では『ウォークラフト』(2016年)が公開されましたし、今後も『アサシンクリード』(2016年12月に米公開)など続々展開される予定です。

そんな今では当たり前の「ゲームの映画化」に先陣切って挑戦したのが『ファイナルファンタジー』(2001年)でした。

「ファイナルファンタジー」シリーズは「ドラゴンクエスト」シリーズと並んで2大RPGとして日本のみならず、世界でも有名なゲームです。とくにゲームの映像表現における最先端にたつ作品として評価されていました。

フルCGによる「ファイナルファンタジー」の映画も、『トイストーリー』のようにいかにもアニメっぽいキャラクターばかりだった当時の時代に、リアルな人間によるドラマをCGで描くという難題にチャレンジした作品でした。

しかし、評価は惨敗。大赤字をだした失敗作として記憶に残ることに…(ちなみに「最も赤字を出した映画としてギネス記録に載った」と言われたりしますが、間違いです。これ以上に赤字となった映画は他にもたくさんあります)。

映画はコケましたが、リアルな人間をCGで描くという挑戦は受け継がれ、今の映画界では当たり前になりました。成否はどうであれ、『ファイナルファンタジー』は今の映画界に大きな影響を与えた作品といえるのではないでしょうか。

一方で、「ファイナルファンタジー」はリベンジを2005年に果たします。歴代シリーズのなかでも人気の高い「ファイナルファンタジー7」というゲームの続編をフルCG映像作品『ファイナルファンタジー7 アドベントチルドレン』として製作したのです。劇場公開はせず、DVDで販売されたこの作品は、90%を超える販売率を記録し、大ヒット。ヴェネツィア国際映画祭にも招待されました。要するに、ちゃんとターゲットを絞って作れば成功するということですね。


そして、2016年。3度目の挑戦となる本作『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』。何が挑戦的かといえば、それは「まだ発売されていないゲームのスピンオフ的ストーリーの作品をゲーム発売前に公開する」ということ。これはなかなか異例です。狙いとしては、新作ゲームの販売を前に「ファイナルファンタジー」に触れたことのない新規層を開拓することにあるようです。実はかつてはゲームの最先端をいっていた「ファイナルファンタジー」も、今では巨額の予算を投じている海外のゲームに押され気味でブランド力の低下が問題になっており、その状況に対する挑戦だと製作者も語っています。そういう意味では、同日公開の『インデペンデンス・デイ リサージェンス』よりも「リサージェンス(再起、復活)」の言葉が相応しい作品かもしれません

では、気になる内容は?

映画を見た後の私の感想から言えることは、「ファイナルファンタジー」を知らない人が見ても“普通に”楽しめる程度には良くできているとは思いました。いわゆる「ファン向けの作品」にならないように配慮されていると感じました。もちろん、「ファイナルファンタジー」のファンはじゅうぶん満足できるでしょう。一方で、映画通の方々はいろいろ言いたいことがでてくるとも思いますが、ジャンル映画としては一定の評価はされるのではないでしょうか。

あまり警戒せず、「ファイナルファンタジー」を知っている人も知らない人も気軽に見に行って大丈夫です。大画面でみるほうが絶対に良い作品ですので、近くの劇場で公開されている人は鑑賞を検討してみるのもよいでしょう。





↓ここからネタバレが含まれます↓




さらなる挑戦で進化を続けてほしい

最初に言っておくと、私はこの記事では、本作をゲームとの関連性で語ることせず、あくまでひとつの映画作品として評価を書き綴ります。ゲームの情報について知りたい人はゲーム情報サイトとかを見てください。

上記で「ジャンル映画としては一定の評価はされる」と書きましたが、本作のジャンルは何でしょうか。私はこの答えはもはや「ジャパン・ファンタジー」ともいうべき独立したジャンルを確立していると思います。

本作を見ていて何が楽しいかといえば、随所にある「日本っぽさ」です。それは日本語が使われているとか建物が日本っぽいとかそういう意味ではありません。例えば、「剣と魔法」という要素はもともとは西洋のものですが、それらを表面的に引っ張ってきて大胆にアレンジする…なんならそこに「怪獣」要素まで加えちゃう…。このマッシュアップこそ日本らしいと思います。完全に欧米が製作するようなファンタジー映画とは一線を画しています。日本は行事とか料理とかでも、とにかくマッシュアップが得意だなとつくづく感じますね。

おそらく見た人の多くが言及するであろうCG映像のクオリティですが、確かにフォトリアルな描写は綺麗で、モーションや表情も綿密に作り込まれていました。でも、これくらいのフォトリアルなCGはハリウッド映画ではありふれているので、決して世界最高峰というほどではありません。褒めるべきは製作期間です。なんでも製作をスタートしたのは2015年夏、つまり1年でここまでのクオリティのものを作ったということになります。世界各地のスタッフと協力して製作したようですが、日本が先導してここまでの映像が作れるということは素直に凄いと思いますし、同じ日本人として誇らしいです。CG映像を手掛けた「VISUALWORKS」というクリエーターチームは、少なくとも日本トップレベルでしょう。

そんなハイクオリティなCG映像ですが、戦闘シーンはゴチャゴチャしすぎな気も…。本作の独特なアクションを代表するものといえば、ルシス王国の王族や直属部隊「王の剣」の面々が使える、刃物の武器を投げると投げた先にワープするという能力。この特異な能力が駆使されまくるため、カメラが激しく切り替わります。ゆえに何が起きているか全体把握が極めて難しいのです。このへんの派手さ重視は、マイケル・ベイ監督っぽいノリですね。まあ、これは好みの問題かもしれません。願わくば、もう少しカット割りや見せ方を練ってほしかったところ。『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』なんかは非常に乱戦の見せ方が上手いので、このへんをぜひお手本にしてほしいです。

ところどころ見られる実在企業の広告や、傷ひとつ付かないアウディの車も、物語の緊迫感を削ぐので、若干気になります。
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一番残念というか、気になったのは物語上のキーとなる「移民」という要素です。「移民」という要素は昨今の流行りで、いろいろな映画で語られています。しかし、フィクションであるファンタジーの世界で「移民」を扱う場合、注意がいると思うのです。なぜなら、現実の世界では「移民」の歴史や背景は語るまでもない常識として流せますが、仮想世界では「移民」がどういう位置づけなのかわかりません。

本作では「王の剣」のメンバーは「移民」の集まりとのことで、その葛藤が物語を動かしていくのですが、どうしてもわかりづらかったです。どういう「移民」なのかバックボーンが説明不足ではないかなと思います。

現実では「移民」といっても必ずしも苦境に立たされているいわゆる「底辺」の人というわけではありません。なかには裕福な人も普通に存在します。でも、本作では「移民」=「底辺」みたいなステレオタイプに偏り過ぎだと感じました。一種の偏見で物語が作られているように見えかねません。

「移民」という要素を本気で語りたいなら、ニックスの故郷が二つの大国の間で翻弄されつつ、ニックスがルシス王国に仕えるまでの過程を物語の導入部で見せるべきでした。それならば、ルナフレーナのナレーションという味気ないやり方よりも、世界観を上手く説明できたとも思います。

それに関連して、未来に託すという本作のオチもイマイチのりにくいものになっていました。今後発売するゲームに持っていきたいのでしょうが、やはりノクティス王子を映画に出すべきです。少なくとも、ノクティス王子は移民に理解があるみたいな描写がないと、未来の王になるノクティス王子に託そうと思った説得力がありません。これはルナフレーナも同じで、ノックスがあそこまで彼女の気持ちに応える理由が見えにくいです。
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結論ですが、いろいろ言いましたが、私は楽しめました。何よりもこういう世界に挑むクリエイティブ精神は大切です。クリエイティブ精神が衰退し、テレビ資本の商業主義に甘んじる邦画界を見てるとなおさらそう思います。

さらなる進化を期待します。