BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント
原題:The BFG 
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年9月17日
監督:スティーブン・スピルバーグ

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★
 
あらすじ

ロンドンの児童養護施設で暮らすちょっと変わり者の好奇心豊かな少女ソフィーは、ある夜に窓から巨人を目撃したことで「巨人の国」に連れて行かれてしまう。ソフィーを連れ去ったのは、巨人のなかでは小さい体格である優しい巨人、その名も「BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)」だった。

巨人と巨匠の記念作

イギリスの児童小説といえば、今では誰もが「ハリーポッター」と答えるでしょう。

しかし、「ハリーポッター」が世界中で大ヒットする以前、イギリスで最も名を馳せていた児童小説家がいました。

それが“ロアルド・ダール”という人物です。

ロアルド・ダールは数多くの児童文学作品を手掛けており、そのいくつかは映画化もされています。『マチルダ』(1996年)、『ジャイアント・ピーチ』(1996年)、『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)、『ファンタスティック Mr.FOX』(2009年)など…聞いたことがある、見たことがある人は多いのではないでしょうか。

そして、2016年。彼の作品がまたもや映画化です。

映画になったのは1982年に発表した「オ・ヤサシ巨人 BFG」という児童小説。少女と巨人の心温まる交流を描いた物語です。

その映画を監督するのは、巨人ならぬ巨匠であるスティーブン・スピルバーグ。彼の生み出した名作の数々は言わずもがなですが、子どもと異生命との交流を描くといえばなんといっても『E.T.』(1982年)です。「オ・ヤサシ巨人 BFG」の映画化『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』も似たような作品ですから、スピルバーグ監督にうってつけの作品なのは間違いありません。

スピルバーグ監督がファンタジージャンルの実写映画を監督するのは実は久しぶり。ただ、2011年にフルCGアニメの『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』という作品を監督しており、それに近い要素もあります。


お話しとしては児童文学ということもあり、超シンプル。例えるなら、家庭で食べる温かいスープみたいな感じでしょうか。フルコースの刺激的な料理を期待するとガッカリするかもしれません。でも、実は細かい部分でスピルバーグ監督ならではの巧みな味付けが光っています。それを見逃さず、じっくり味わってほしい一作です。

ちなみに本作の脚本を手掛けたのはメリッサ・マシスンという人物で、『E.T.』でもスピルバーグ監督とタッグを組みました。しかし、残念なことに2015年11月に病気で亡くなったため、これが最後の作品となりました。

また、本作はディズニーが製作になっているのも印象深いところです。スピルバーグ監督といえばディズニーに思い入れのある人でした。

なんだかスピルバーグ作品の歴史のなかでもメモリアルな映画になっているのです。『E.T.』をリアルタイムで観た世代はぜひ、子どもや孫と一緒に本作を観てほしいと思います。





↓ここからネタバレが含まれます↓




色どり豊かなスピルバーグ要素を楽しんで

「あれっ、終わり?」となるぐらいあっさり終わる本作。

確かに終盤のサスペンスゼロ感は残念なものがあります。

悪い巨人たちに対抗するために女王陛下に助けを求めたソフィーとBFG。軍隊が出動しますが、巨人はいとも簡単にロープでつるされヘリで運ばれて一件落着でした。一応悪夢の力を使って巨人の反抗心を抑えていましたが…。巨人がでてくる作品は数あれど、こんなにあっさりした巨人との戦いは初めて見たかもしれない。児童文学ですから『プライベート・ライアン』並みの凄惨なシーンは求めないですけど、墜落しそうになってBFGが助けるくらいの展開はあっても良かったんじゃないかとも思います。

かつてBFGと一緒にいた子どもの話も、うやむやに流された感じがしないでもない。
BFG
ただ、そういうお話のあっさりさばかりに目がいくのはもったいないです。たぶんスピルバーグ監督は原作モノを手掛ける際は、壮大に脚色して無理に超大作にしようとせず、原作の雰囲気をそのまま映画化することのみに集中するほうが好みなんでしょう。『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』もそんな感じでしたね。

原作の雰囲気を映像化することを一番に考えつつ、そこにスピルバーグ監督らしい技法やセンスをふんだんに盛り込むのがいつものパターンです。

冒頭、児童養護施設からBFGに連れ去られる一連の場面が、もうスピルバーグ要素満載。とくに光の演出がやっぱり良くて、光だけで面白い。月光が差し込む窓からの巨人の腕は、光の演出によって異常な物体が迫ってくる感じが強調されていました。普通に怖いシーンですね。そして、巨人がロンドンの街を人目から隠れながら進む場面は、光と影でこれまた上手くスニーキングを表現してて、非常に気持ちいいシーンでした。個人的に本作で一番観ていて楽しかった場面です。この映像の雰囲気こそ、スピルバーグ監督らしさなので、知らなかった人もこれだけは観ていってほしい。

キャラクターづくりも素晴らしく、とくにBFGと呼ばれる巨人。演じるマーク・ライランスは、同じくスピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』ではアカデミー助演男優賞を受賞した無口なスパイ役でした。それとは対極的な本作のキャラ。一言でいえば「可愛い」。全く嫌味のないキャラで、誰からも愛される児童文学のキャラとして完璧な再現です。上手く単語をしゃべれない欠点を抱えていますが、そこさえもただただ可愛いという…なんか『映画 聲の形』と正反対で難しいことを考えなくていい安心感があります(そういえばスピルバーグ監督自身もディスレクシア;難読症を抱えているんですよね)。

あとはコメディセンス。本作ではスピルバーグ監督は子どもでも大人でもわかる直球なギャグを正々堂々と描いており、なんというか潔い。極め付けは王室でのBFGとの食事シーンですが、あの場面はツッコミ不在の全部ギャグてんこ盛り。この場面は物語上ほとんど必要ないのにもかかわらず、かなり時間を割いて描かれてました。順応力が高すぎる王室を皮肉ったスピルバーグ監督らしい悪趣味さもある笑いの演出で、これもスピルバーグ監督自身が大英帝国勲章を受章しているからこそできるのか…(たぶん違う)。
 
絶賛するほど傑作ではなくとも、こんなストレスのない映画もいいものだなと思いました。