生きうつしのプリマ
原題:Die abhandene Welt
製作国:ドイツ
製作年:2015年
日本公開日:2016年7月16日
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ

【個人的評価】
 星 3/10 ★★★
 
あらすじ

仕事も恋もうまくいかないゾフィは、ある日、父から呼び出され、1年前に亡くなった母エヴェリンと瓜二つの女性を報じたネットのニュースを見せられる。その女性はメトロポリタン・オペラで歌う著名なプリマドンナのカタリーナで、気になる父はゾフィを強引にニューヨークへと送り出す。

誰にでも秘密がある

本作はドイツの映画界を牽引してきた名監督マルガレーテ・フォン・トロッタの最新作です。

親が亡くなってから親の知られざる過去を知るというのは、そこまで珍しいことではないように思います。誰だって秘密のひとつやふたつを隠しながら死んでしまうのではないでしょうか。

本作も監督自身の体験を基にした半自伝的な物語とのこと。監督の母が亡くなって半年が経ったある日にある女性から母に関して聞きたいことがあるという内容の手紙が届いたというエピソードから着想を得たそうです。

この映画は「母と娘の感動のミステリー」というキャッチコピーが宣伝で謳われていますが、実際に映画を見るとかなり印象が違うと思います。

「母とそっくりな女性は何者なのか」という謎を追う精密なミステリーというよりは、主人公の家族をめぐる人間ドラマがメインです。そして、印象に残るのは女性よりも男性陣。その理由は…映画を見ればわかります。

『生きうつしのプリマ』は情けない男の姿が見れる映画です。





↓ここからネタバレが含まれます↓ 




残念な男たちの残念な物語

本作はミステリーとして見るべき映画ではないなと思いました。そもそも現代を舞台に、母によく似た人物の正体を探るというネタだけでは、謎としては弱すぎます。DNA鑑定とか割と簡単にできる時代になってきましたからね。

しかし、物語上の基本軸となるべき「母・エヴェリンとそっくりな女性・カタリーナは何者なのか」という疑問は、DNA鑑定せずとも映画中盤であっけなく正体がわかっちゃいます。

ニューヨークから帰り、父・パウルのもとへ戻ったゾフィに待っていたのは、父から衝撃の発言。「母・エヴェリンは結婚前に兄の子を妊娠していた。でも中絶したはず」…。それだけ知ってたら、カタリーナの正体を察しろよと思わずツッコミたくなるこの父の無能っぷり。そして、唐突に登場した父の兄の存在。

この映画の発端はこの2人の情けない男たちからすべて始まったのでした。
 
ゾフィがあちこち駆け回らなくても、始めからこの2人に聞けば、答えはでたでしょうに…。
Die abhandene Welt
この2人の男は所有欲にとらわれた本当にどうしようもない奴として描かれており、終盤の喧嘩を見てゾフィが笑っていたように、もう嘲笑するしかありません。ゾフィの父の所有欲の強さは、冒頭のゾフィをこき使う場面や、カタリーナをドイツに連れてこいと指示する場面から窺えます。

個人的には母・エヴェリンの子への隠された愛情よりも、こっちのアホな男たちを主軸にしたドラマがもっと見たかったです。

ところが、物語はわりとあっさり終わり、2人の男の確執も、兄のラルフが実の娘カタリーナとアメリカで対面して仲良く談笑するだけでした。しかも、ゾフィは、カタリーナを探す過程で出会った男をちゃっかり新しい恋人にしているという…。弟であり父であるパウルは放置です。この帰着でいいのでしょうか…。「過去に乾杯、未来に乾杯」なんて言ってる場合なのだろうかと、ややシラけます。

ところで、ゾフィの新しい恋人の男も父と同じ所有欲の強そうな男にみえました。カタリーナとの面会を手配するかわりに自分と一夜を過ごせなんて要求する男は、ろくでもないと思うのですが…。

歴史は繰り返されるということなんですかね…。