ローグ・ワン
原題:Rogue One: A Star Wars Story
製作国:アメリカ 
製作年:2016年
日本公開日:2016年12月16日
監督:ギャレス・エドワーズ

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★
 

あらすじ

幼少期のある出来事がきっかけで孤独に生きてきたジン・アーソ。彼女は反乱軍の指令により、情報将校のキャシアン・アンドーや、元帝国軍の警備ドロイドのK-2SOといった仲間とともに、活動することに。そして、帝国軍の最終兵器「デス・スター」の設計図を奪う決死のミッションへと発展していく。

12月はスター・ウォーズの季節

「また、今年もスター・ウォーズ!?」という感じですが、はい、そのとおりです。というか、来年も、下手したら再来年も、さらにその次の年も「スター・ウォーズ」がやってくるかもしれないのですけど

まだ去年の出来事ですが、2015年の12月。その年、最後の目玉大作として『スター・ウォーズ フォースの覚醒』が公開されました。この作品は、久々の「スター・ウォーズ」シリーズの続編であり、今回新たなに展開される3部作の一作目。

よくわからない人のために説明しておくと以下のようになっています。

オリジナル・トリロジー(旧三部作)
・1977年公開『スター・ウォーズ 新たなる希望』=「エピソード4」
・1980年公開『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』=「エピソード5」
・1983年公開『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』=「エピソード6」
プリクエル・トリロジー(新三部作)
・1999年公開『スター・ウォーズ ファントム・メナス』=「エピソード1」
・2002年公開『スター・ウォーズ クローンの攻撃』=「エピソード2」
・2005年公開『スター・ウォーズ シスの復讐』=「エピソード3」
シークエル・トリロジー(続三部作)
・2015年公開『スター・ウォーズ フォースの覚醒』=「エピソード7」
・2017年公開予定『未発表』=「エピソード8」
・2019年公開予定『未発表』=「エピソード9」

こうやって見ると、本当に壮大な映画作品です。

そんななか『スター・ウォーズ フォースの覚醒』は製作元のルーカスフィルムがディズニーの傘下になってからの初作品であり、以前のプリクエル・トリロジーの新三部作がやや不評だったこともあって、かなり大きな挑戦となりました。ゆえに映画ファンは公開直前までいろいろな意味で不安と期待でグチャグチャに…。しかし、結果は大ヒット。ファンも評論家も公開直前は興奮しすぎて内容を冷静に咀嚼しきれていない感じでしたが、しばらくたってもおおむね好評価のようです。


私も『スター・ウォーズ フォースの覚醒』は内容ももちろん素晴らしいと思いましたが、それ以上に金字塔として称えられる作品が抱える重責に打ち勝ち、作品をまさに再覚醒させてみせたそのリアル・ストーリーに感動しました。「映画って、こうやって歴史を超えて復活するんだ…」という気持ちになり、なんか感無量でした。こうやって新生できてしまうのも「スター・ウォーズ」という作品のパワーなのかもしれません。

これからの「スター・ウォーズ」に期待膨らむところですが、これから展開されるのはシークエル・トリロジー(続三部作)だけではない…そう、ここから本題です。

具体的にはアンソロジー・シリーズという、要はスピンオフ作品も作られます。その第1弾が本作『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』です。

お話しは『スター・ウォーズ 新たなる希望』(エピソード4)の直前。実質、エピソード3.9といったところでしょうか。


『スター・ウォーズ 新たなる希望』のおなじみのオープニングで流れる文章はこんな内容でした。
時は内乱のさなか。凶悪な銀河帝国の支配に反乱軍の秘密基地から奇襲を仕掛け帝国に対し初めて勝利を収めた。更にその戦闘の合間に反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功。それは”デス・スター”と呼ばれ惑星をも粉々にするパワーを持つ宇宙要塞基地だった。凶悪な帝国軍に追われながらレイア姫は盗み出した設計図を手に故郷へと急いだ。人類を救い銀河に自由を取り戻すために....
この「設計図を盗み出す」話です。

当然ながら設計図を盗み出す事には成功するという物語上の結末はわかっています。大体の結末もわかっているなか、どう話を膨らませ魅力をだすのか、監督のギャレス・エドワーズの腕の見せ所でしょう。最新ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の監督でもあったギャレス・エドワーズらしく、戦争感は期待してよいと思います。

新キャラばかりなので、「スター・ウォーズ」初見の人も入りやすいでしょう。ただ「エピソード4」を観ておいた方が100倍楽しめるのは間違いないです。なにせ本作は「エピソード4」の10分前につながると公式で宣伝されているとおり、ほとんど「エピソード4」と地続きな作品です。本作を観てから、「エピソード4」「エピソード5」「エピソード6」と続けて観れば感動はより深まります。ちなみに「エピソード1」「エピソード2」「エピソード3」「エピソード7」はあまり関係ないので気にしなくていいです。

クリスマスのような年間行事だと思ってお祭り気分で観ることおすすめします。あと「エピソード7」の続きだと勘違いしている人がいたら教えてあげてください。





↓ここからネタバレが含まれます↓




名もなき戦争が語られる

「遠い昔、遥か彼方の銀河系で...(A long time ago,in a galaxy far,far away.)」

この文章がスクリーンに映り、「ああ、スター・ウォーズだなぁ」と思ったのもつかの間、定番のオープニング・クロールは無しです。これだけでこれまでの「スター・ウォーズ」とは違う緊張感にピリピリしました。

ちなみに、ロンドンで2016年7月に開催された「スターウォーズ・セレブレーション」というイベントで公開された『ローグ・ワン』の動画では、オープニング・クロールを使った演出が行われていました。これはこれで良かったのですけどね。

本作にはこれまでの「スター・ウォーズ」のオマージュ、わかる人にはわかるお遊び・小ネタがたっぷり詰まっていました。

それはもちろん楽しいのですが、本作にしかないオリジナルな要素も豊富なので、そこにこそ注目してほしいところ。

例えば「スター・ウォーズ」といえばコレ!といえるライト・セーバーですが、本作では物語の流れ上、ジェダイが途絶えたことになっているのでライト・セーバー戦はありません。このアクション面における大きな穴をどう埋めるのか、本作の最大の問題のひとつだと思っていましたが、そこはギャレス・エドワーズ監督、上手くカバーしたのではないでしょうか。

本作はジェダイではない“普通の人”、しかも本作で初登場の新キャラたちが主人公ですが、非常にキャラがたっていました。もうフォースなどなくても、相当強い人ばかりで、個人技が光るシーンもてんこ盛り。ドニー・イェン演じるチアルートはその極例です。さすがにチアルートは若干やりすぎな気もしましたが、でもカッコいいので観ている分には楽しい。個人的には、帝国側から反乱軍側へ寝返った組のドロイド“K-2SO”パイロット“ボーティー・ルック”が好きでした。

終盤の惑星スカリフの大乱戦は、本作の“普通の人”たちの白眉です。怪獣映画を手がけてきたギャレス・エドワーズ監督らしく、スケール感のあるリアルな戦争描写だったと思います。事前に言われていた『プライベート・ライアン』っぽさは、やっぱり残酷描写はないので個人的にはそこまで感じませんでしたが、それでも戦争の絶望感はじゅうぶん伝わってきました。とくに巨大4足歩行兵器「AT-AT」のもろに怪獣な見せ方は気に入っています。本作を観た後だと、プリクエル・トリロジーの戦争シーンはCG丸出しだったなとあらためて実感してしまう…。

ローグ・ワンの希望

このように、個々のキャラクターやシーンは良いのですが、全体としてはちょっと全肯定はできない面もチラホラ。

一番は全体的に物語が駆け足で、キャラクターも描き込みが弱いなと。一作品だから仕方がないのかもしれませんが、じゃあ、尺が足らないから『ローグ・ワン』が3部作ぐらいあれば良かったのかといえば、それも違う気がします。たぶん、もし3部作になってたらプリクエル・トリロジーのようにどうでもいい後付けっぽい面が強調されてしまい、それはそれで退屈だったでしょうし。

もうこれは「スター・ウォーズ」の呪縛なんじゃないでしょうか。

「スター・ウォーズ」という広大すぎる世界観に登場したキャラクターは否応なしに風呂敷を広げられてしまう力に侵される…そんなキャラクターたちを一作だけで描き切るのは土台無理なのかもしれません。本作の新しい登場人物たちはただでさえ終末を迎えることは確定済みで、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の新しい登場人物たちが未来への可能性で満ち溢れているのとは大違いなのですから。

ただ、それは置いておいても、本作の肝であるチーム映画としての完成度は微妙でした。個人技ばかり目立ち、チームとして戦っている感じはなかったです。

根本的な話、「ローグ・ワン」チームには、チームとしてまとまるための共通の動機がイマイチです。なんかいつのまにか結束してました。ここは、反乱軍としてチームになれず散っていったソウ・ゲレラというキャラをもっと活かすべきだったと思います。「希望」「希望」と言葉だけで、各キャラの具体的な希望が見えなかったのは残念。無条件に「エピソード4」の“希望”へとつなげることが善として描きすぎな感じもしました。もっと希望の在り方に悩んでも良かったんじゃないか…(一応、会議シーンあったけど)。

同じスペースオペラでありチーム映画でもある『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)は、はみ出し者としての劣等感を主人公たちが『ブレックファスト・クラブ』ばりに互いにさらけ出し、終盤にチームが一丸となる最高にテンションが上がる展開になっていました。一作の範囲でもチーム映画は描けるはずです。

ローグ・ワン

また、無駄な展開も多かった気がします。

映像面は良かった惑星スカリフのデータセンターの場面も展開はまどろこっしいです。潜入するのは良いとして、やたら複雑なアーム操作を要求され、なぜか最上層のアンテナに行くことを余儀なくされ、しかもシールド・ゲートを壊さないとデータを送れず、さらにそれを伝えるための通信に必要なケーブルを引っ張ってこなければならず、さらにさらに中途半端な位置にある通信のスイッチレバーを引く…なんか無理やり各キャラの見せ場を用意しましたという感じが読み取れちゃいます。

ボーティー・ルックが設計図を送信するためにシールド・ゲートを壊してくれと、命を賭けてまで反乱軍へ伝えていましたが、それ以前に反乱軍はシールド・ゲート破壊にすでにチャレンジしていたような…。ここは、帝国軍だった知識を活かしてシールド・ゲートの有効な壊し方を伝えるほうが自然では?と思ったりも。チアルートの最期のレバーのシーンも…ドニー・イェンの無駄使いだったかな…。こう彼らしくアクションの見せ場で最期を迎えてほしかったです。なんなら「AT-AT」倒すくらいしてくれても良かった。

思えば、個人的に本作で一番好きなのは「ローグ・ワン」チームが死したあと、設計図が名もなき人たちのリレーで渡っていく場面でした。でも、これってほとんど「エピソード4」が好きと言っているようなもの。もう、これは観客側の「スター・ウォーズ」愛によって作品評価を補完することに頼らざるを得ないのは宿命として割り切るしかないですね。

次回のスピンオフ映画は「ハン・ソロ」の若いときとのことで、これまたどうなるか、なんだかんだでやっぱり楽しみです。