ビューティー・インサイド
原題:The Beauty Inside 
製作国:韓国 
製作年:2015年 
日本公開日:2016年1月22日 
監督:ペク 

【個人的評価】
 星 9/10 ★★★★★★★★★
 

あらすじ

家具デザイナーとして働くウジンは眠りから覚めるたびに外見が変わってしまう。その姿は男性、女性、老人、子ども、外国人など実に様々だった。ある日、家具屋に務めるイスという女性に恋をしたウジンは、同じ顔を保つために3日連続で寝ずにイスとデートを続ける。しかし、眠気に勝てずに眠ってしまい…。

個人的2016年ベスト恋愛映画

ある日、ひょんなことから別人に姿が変わってしまうというSFドラマは古今東西たくさんあります。今年だけでも『あやしい彼女』、『セルフレス 覚醒した記憶』、そして何といっても『君の名は。』など、邦画・洋画・アニメとよりどりみどりです。

そんななか、本作『ビューティー・インサイド』ほど難解な設定はなかなかないのではないでしょうか。本作の主人公は見た目が変わるのですが、それがなんと眠るたびに常に別人に変わる。しかも、その姿は老若男女、人種さえも何でもあり。そのため、123人1役という、もはや何が何だかわからない役者陣となっています。劇中で主人公のある日の姿の一人を演じる役者のなかには、日本の俳優から上野樹里が出演しています。ちょい役ではなく、印象的なシーンで登場するので要注目です。

なぜこんな難解な設定なのかというと、本作の元ネタは小説でもなければ漫画でもない、実はインテルと東芝の合同による広告企画でした。それがソーシャル・フィルム「The Beauty Inside」と呼ばれるもので、「誰でも主人公の男を演じることができる映画」というコンセプトでユーザーから送られてきた映像で物語を構成していく変わった制作スタイルの映像作品。いわばソーシャルメディアを使った参加型企画だったわけです。

まず、よくこんな企画を映画として成立させたなと…。だって、本来は一発ネタの企画なのですから。1本のドラマにするとなると全く別次元の難しさでしょう。

ただ、本作の凄いところはこれだけにとどまりません。

本作は、別人になるというSF的現象をめぐる人間の心理にこそ焦点をあてて真剣に描いているのです。よくある類似の作品だと、この現象をドタバタコメディで済ましがちですが、本作は向き合い方が違う…そう感じました。そこはさすが韓国映画というか、ドラマのクオリティが段違いです。

「恋愛は外見で決まる」「恋愛は中身が大事だ」これらの意見の人どちらにも、観てほしい一作

個人的には2016年のベスト恋愛映画です。





↓ここからネタバレが含まれます↓




恋愛に悩む全ての人へ

恋愛相手を決める判断材料は、所詮「外見」なのか…。今年公開されたヘンテコ恋愛映画『ロブスター』でもみられた恋愛へのシニカルな視点が垣間見える本作。残酷だけど、それもひとつの事実。ただ、そこは本作では唯一コメディでなごましていた点だった気がします。とくにウジンの正体を知るあの友人キャラ。「ヤラせてくれないか」って…まあ、正直ないい奴ですよ。

しかし、本作のシニカルさの向かう先は、外見重視の恋愛価値観だけではないのが面白い。つまりそれは「恋愛は、外見じゃない。内面だ」といういかにも綺麗な正論に対する「本当にそう簡単に言える?」という視点です。

外見が毎日変わっても中身は一緒なんだからと、付き合うことになったウジンとイス。外見変化を笑いのネタに楽しみ、順風満帆に見えましたが…。「イスは世界一愛される女性になれる」なんていうウジンの考えは甘いものでした。

想像以上にイスの精神は外見が変化し続けるウジンに滅入り、薬漬けに陥ってしまいました。まさに愛ゆえに壊れる。人の内面だけを愛することの難しさをここまで丁寧に表現する本作は凄いと思います。

ビューティー・インサイド

それでも本作は恋愛の美しさを最後には描きます。しかも、そこがまたいい。

ここでウジンのオーダーメイド家具職人という設定がメタ的に効いてきます。イスにぴったりの椅子を送るシーン…外見は合わせられないけど、家具は合わせられる。外見や中身が完璧でなくても、方法や手段は違えど、傷付くことは覚悟の上でも、相手に寄り添う努力はできる。それができるかどうかだと。本作の恋愛観はとにかく正直です。

ラストのいろいろな姿のウジンがイスにキスするシーンで、ハッと気づかされました。本作の描く内面の恋愛とは、全世界あらゆる人に通用する普遍性があるんだなと。外見、性別、国籍、人種を超えて恋愛は成立する。予想をはるかに上回るテーマの広がりに虚をつかれたというか。そこまで深いテーマをさらっと描き出すとは…。

監督はこれがデビュー作なんですよね。凄いな…。

恋愛映画というよりは恋愛批評映画として心に刻み込まれる作品でした。

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