ドント・ブリーズ
原題:Don't Breathe
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年12月16日
監督:フェデ・アルバレス

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★
 

あらすじ

金欲しさに強盗を繰り返すロッキー、アレックス、マニーの3人の若者は、地下に大金を隠し持っていると噂される盲目の老人がひとりで暮らす家に目を付ける。いつもどおり家に侵入した3人は部屋を物色し始めるが、家主の老人によって想像を絶する恐怖を味わうことになる。

盲目老人は男女の仲を切り裂く?

12月。クリスマスのイルミネーションのなか恋人たちは寄り添い合い、愛を深める時期ですね。そんな季節におすすめしたい映画ジャンルは…恋愛? いやいや、ホラーです。

アメリカではホラー映画がとくに若者に人気で、今年も数多くのホラーが公開されてきましたが、そのなかでも異例の大ヒットを記録したのが本作『ドント・ブリーズ』。なんと1000万ドル(約11億円)以下の低予算で製作して、1億5200万ドル(約166億円)の興行収入を稼ぎ出しました。

タイトルはそのまま「Don't Breathe=息を止めろ」の意味。

ストーリーもシンプルです。ホラーといっても、幽霊はでてきません。

舞台はデトロイト。貧しい家庭で過ごすアレックスは金欲しさにチンピラのマニーと、密かに恋い焦がれる女性・ロッキーとともに強盗を繰り返していました。そして、さらなる金を求めて次にターゲットにしたのは30万ドル以上の大金を持つという独り暮らしの盲目の老人。目が見えない相手を狙うなんてひどくない?と思いながらも、目が見えないなら楽だろうと調子に乗る面々。しかし、この家主の盲目老人はただものじゃなかった! 逆に家に閉じ込められ、電気も消された暗闇のなか、3人の若者は必死に息を止めてやりすごそうとする…。

ここまで聞くと、調子に乗った若者が恐怖を味わう話であり、ざまあみろ!な気持ちで楽しむ映画だと思うでしょう。また、「強盗に入られるなんて老人のほうが可哀想」、「どう考えても若者が悪いでしょ」とあなたは思っているかもしれません。しかし、映画が進むにつれて明らかになる事実を知れば、印象は変わると思います。「えぇ…、さすがにそれは…」っていう感じです。老人の衝撃の本性にドン引きすることは間違いなし。

スプラッタ演出(血がブシャーとか、首がスパーンとか)はないんですが、ドン引き演出としては今年のホラー映画では一番なんじゃないだろうか。期待してください。女優が可哀想です。

本作で注目すべき俳優はなんといっても、恐怖の盲目老人を演じるスティーブン・ラング。『アバター』(2009年)で主人公に立ち塞がる大佐の人です。本作でも退役軍人という設定ですから、なんかリンクしてますね。本作でもその鍛えられた肉体は、これでもかといわんばかりに目立っており、ただものじゃない雰囲気を隠せていない。さらに凶暴な番犬を連れているんですから、私なら、こんな見た目からして最強そうな男の家に入りたいどころか、話しかけるのさえ嫌です。

12月は冬休みの商戦シーズンですから、大作映画が続々公開されます。その大作映画に負けないであろう面白さを約束する一本です。ネタバレは一切見ずに観賞することをおすすめします。

一応、恋愛要素もあるし、カップルで観てもOK。ただし、カップルで観る際は、相手がひかないようなタイプか慎重に判断することを推奨します。





↓ここからネタバレが含まれます↓




非絶叫系アトラクション

お化け屋敷のような遊園地のアトラクションがあるように、ホラー映画もアトラクションみたいなものです。作り物なのは承知のうえで、いかに気分を入り込んでギャーギャー楽しめるかが肝。だから、露骨に驚かそうとする演出があると冷めてしまいます。大事なのはバランスです。

そういう意味では、本作が提供する恐怖体験は良い按配でした。キャラクターやストーリーを語り過ぎることもなく、かといって語らなさ過ぎることもない、この絶妙さ。確かによく目を凝らせばツッコミどころはたくさんあります。でも、それを気にさせない作りで、アトラクションとして完璧です。

本作の魅力はなんといっても、ホラーとして常に持続する緊張感。

これは、恐怖の根源である盲目老人がストーリーが段階的に進むにつれ、恐怖の種類をスケールアップさせていく展開が効いています。最初は「10万ドル以上の盗みは重罪になるからやめよう」とか言っていたとおり、恐怖のレベルが「バレたら逮捕されるかも」程度です。しかし、盲目老人が虫けらのように若者のひとりを射殺して以降は「殺される!」という死の危険に怯えることに。ここまではよくある普通さですが、本作はさらにもう一段階用意していました。具体的には地下に進んでからです。この地下から現実とは違う異空間が展開される感じは、今年観た映画だと『クリーピー 偽りの隣人』を連想させます。ここで盲目老人の異常な実態を知った主人公たちは「殺されるよりもっとヤバい!」という死を上回る恐怖が襲うわけです。こうやって本作は、劇中の主人公たちも映画を観ている観客も、恐怖に慣れさせてくれません。緻密に設計されたアトラクションじゃないでしょうか。

地下以降の展開は、本作に製作としてサム・ライミが関わっているせいか、実にサム・ライミ的なスラップスティック恐怖が次々と襲ってきます。これはドン引きするか、笑うかで人の反応が分かれますよね。サム・ライミ大好きな人は楽しめたはず。女優って大変ですね…。まあ、スティーブン・ラングもなかなかの踏んだり蹴ったりな目に遭ってましたが、なんだろう、この程度では全然やってやったぜという感じはしない。それくらい異常だったし…。

そういうアレな演出は置いておいても、作品全体で展開される暗闇と音の演出だけでもまさに映画的で良かったです。こういう映画館で観た方が絶対楽しい映画をたくさん作ってくれるのはうれしいものです。

ドント・ブリーズ

本作は盲目という障がいを扱った映画だと観る前は思ってました(「障がい者を舐めるなよ」的な)。でも、実際はこの老人はもはやモンスター。障がい者がどうのこうのと語るタイプの映画ではないでしょう。

盲目という要素を上手く使って「障がい者を舐めるなよ」的なつくりになっているホラーといえば『サイレンス』があります。この作品は、視覚障がいで目が見えない女性の家に殺人鬼が襲ってくるという『ドント・ブリーズ』とは真逆になってますので、気になる人はぜひ。

個人的に『ドント・ブリーズ』は1本の映画として良く出来ているとは思いましたが、『サイレンス』と似ている箇所が気になった部分も…。とくに最後の撃退方法が…。盲目という同じアイディアを使っている以上、似てくるのは仕方がないのですが、警報音で倒すのはちょっと手垢がついてきた感じもします。とにかく怖かった盲目老人も後半で音に弱すぎな面も目立ち、これだったら案外楽に倒せるのではと思わなくもない。

本作はすでに続編の企画に着手しているそうです。同じようなアトラクションが増えるのは勘弁ですので、常に新しい体験を期待しています。