スロウ・ウエスト
原題:Slow West
製作国:イギリス・ニュージーランド
製作年:2015年
日本公開日:2016年7月17日
監督:ジョン・マクリーン

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★
 
あらすじ

19世紀後半。スコットランド貴族の青年ジェイは、姿を消した恋人ローズを追いかけて渡米し、コロラドへとやって来る。荒くれ者に襲われて窮地に陥ったところを賞金稼ぎの男サイラスに救われたジェイは、サイラスを用心棒として雇い一緒に行動することに…。

西部劇も次世代へ

本作はマイケル・ファスベンダーが主演の西部劇ドラマです。これだけでも映画ファンには見逃せないところ。

でも、ベテラン俳優もいいですが、本作では若手にも注目です

まず、コディ・スミット=マクフィー。最近では『コングレス未来学会議』(2015年)に出演してます。『スロウ・ウエスト』では、恋人を追って無防備にもアメリカにやってきたお坊ちゃんの役で、青少年特有の不安定感を見事に演じています。彼は『X-MEN:アポカリプス』にも出演しており、今後も目にする機会は多いでしょう。

そして、 カレン・ピストリアス。彼女は新人なのかな? 少なくとも日本で公開されている映画としては初出みたいです。彼女はとにかくカッコいい。射られます。

若手といえば、本作のジョン・マクリーン監督もこれが長編映画デビュー作ということで、なんとも若々しい映画です。

お話しとしては西部劇の王道をなぞった緩急あるストーリーテリングです。そして、瞬発的な見せ場シーン。とくに終盤は痺れます。

西部劇と聞くと古臭いと思う人もいるかもしれませんが、現代にも通じるメッセージを打ち出すことができるポテンシャルをまだまだ持っているジャンルだと思います。普段、西部劇を見ない人もぜひ見てほしいです。

問題点といえば、本作を見るチャンスが現時点で乏しいこと。WOWOWで放映された以外は、新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2016(カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016)」で上映されているだけ。こういう作品は、VODですぐに配信して、全国の人が見れるようにしてほしいものです。





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古き者と新しき者、引き継がれる魂

個人的に西部劇というジャンル映画を見るときは、ひとつでも「カッコいい」と感じたシーンがあれば最低ラインをクリアしたと思って評価しています。

その点、本作は大合格でした。

どのシーンを切り取っても絵が綺麗です。ひとつひとつの構図をしっかり考えて作り上げている感じが伝わってきました。

とくに終盤の大銃撃戦は最高。西部劇というジャンルは時代設定の制約上、使える武器や環境がどうしても乏しいです。そんな条件のなかで、工夫を凝らして見せてくれる戦闘はやはり楽しい。やっぱり籠城戦というのはテンションがあがるものですね。
Caren Pistorius
西部劇を見慣れない人には退屈かもしれない本作の物語は神話的。

主人公の青年の名前は「ジェイ」ですが、「ジェイ」はカケスという小鳥の一種でもあります。まさに鷲のような荒れくれものたちがわらわら飛び回る大地に飛んできた一羽の小鳥なわけです。

でも恋人ローズは立派な猛禽類に育っていて、この大地に適応していました。それこそ、荒れくれものたちを一掃するほどに。

ですから、ラストのジェイの死も当然の結末といえます。弱肉強食の西部では、弱い存在が死ぬのが当たり前です。

無垢な若者であるジェイが、ベテランのサイラスから生きる術を学んでいく話ではないのが、本作の面白いところ。逆にジェイがサイラスとローズに大切な何かを残すのです。

金ばかりの男たちのなかで、故郷や金を投げ捨てて愛だけを求めるジェイですが、この西部に住む人たちも本来は同じだったはず。荒れくれものたちも、もともとは故郷を捨てて金をはたいて、夢や愛のような理想を求めてこの地に来た奴らです。

西部が失ったモノをサイラスとローズは取り戻したのでしょう。意外と現代にも通じるテーマだと思います。21世紀の今、移民の人たちは目的を見失い、争いを繰り返しているわけですから。

西部劇というジャンルは、決して過去の遺物ではなく、現代にも通用すると感じさせてくれた一作でした。