ゴーストバスターズ
原題:Ghostbusters
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年8月19日
監督:ポール・フェイグ

【個人的評価】
 星 7/10 ★★★★★★★
 
あらすじ

コロンビア大学の素粒子物理学者としてまさにキャリアを開始したエリン・ギルバートは、学生時代に心霊現象の研究に夢中だった過去があった。ところが学生時代の友人のアビーがエリンと共著で心霊現象に関する本を勝手に出版したことで、大学をクビになってしまう。そんなエリンとアビーのもとに幽霊の目撃情報が舞い込んでくる。

いろんなことをバスターしよう

2014年、ある研究グループがSTAP細胞の発見という画期的な研究成果を発表しました。新発見なんて科学界では頻繁にありますが、この一件は特に一大注目を集めることになりました。その理由は、研究グループの主要メンバーのひとりが若い女性だったから。研究内容よりもこの女性研究者の経歴や生活といったことばかりが取り上げられて報道も過熱を極めます。ところが、研究に不正が発覚。その後も、女性研究者ばかり報じられる状況は変わりませんでした。なかには「女だからダメなんだ」という意見さえも飛び交う始末…。

前置きが長くなりましたが、これと同じ状況が本作『ゴーストバスターズ』でも起きました。

本作は1984年に公開された人気映画『ゴーストバスターズ』のリブート。オリジナルとの大きな違いは、主人公チーム全員が女性になったこと。これに対し、予告動画が公開されるやいなや批判が連発、映画批評サイトも公開前から極端な低評価がつけられまくる状況になりました。そのネガティブな反応の主要な理由は「主人公が女性なのが気にくわない」。役者個人のSNSへの攻撃さえも行われるほどの異常性。肝心の映画の内容を真摯に議論する動きは消沈です。

しかし、本作は挫けなかった。公開前から大炎上した本作ですが、本作はその批判の声さえも巧みに活用し、作品に新たなオリジナリティを追加させることに成功しています。

なにより現実と映画の世界のシンクロ具合が面白い。劇中の主人公たちも女性という理由で話題になり、ときにバカにされるシーンがあるのです。

といってもこの作品はジェンダーだけを題材にした映画ではありません。

例えば、メインの主人公・エリンはコロンビア大学の素粒子物理学者として永久雇用の座につくことにこだわります。でも、本音は幽霊の研究をしたい。つまり、自分の本心を犠牲にしてキャリアを選ぶ人生を送ろうとするわけです。それに対して、好きなことに人生を捧げている友人からそんなんでいいのかと問われます。これは男女関係なしに悩む問題でしょう。

いろいろ書きましたが、説教臭い映画じゃないので安心してください。

基本はコメディですし、純粋なエンターテイメント映画なので、難しく考えず見れます。幽霊も、偏見も、差別も、ウザイ上司も、無能な政治家もバスターしましょう。





↓ここからネタバレが含まれます↓




プロモーションがお見事

映画の内容を語る前に本作のプロモーションについて言及したいのですが、本作のプロモーションがほんとに上手いです。

前述した予告動画の低評価騒動も、劇中で主人公たちが幽霊の映像をYouTubeにアップしても全く信じられず、女性蔑視コメントばかりがつくという場面とシンクロさせるあたりも巧みです。こういう炎上を逆手にとる戦略は素晴らしいと思います。配給のソニー・ピクチャーズの自作自演なんじゃないかと疑いたくなるくらいです。

また、映画で物語のきっかけとなるエリンとアビーが書いた本がちゃんとアマゾンで買えるのも楽しい。 劇中にも実際登場した幽霊を信じないブラッドリー市長、コロンビア大学のフィルモア学長、マーティン・ヘイスといった面々による批評コメントがついていてまた笑えます。


こういった現実と虚構をいいバランスで混ぜこぜにしたプロモーションは、まさに本作の作品性に合致しており、「ソニー・ピクチャーズ、やるじゃないか」と感心します。

見てくれている人はちゃんといる

本作、エンターテイメント映画としては勢いに持続性がなかったのが残念。にもかかわらず、勢いまかせな部分も目立ちました。基本は1984年オリジナル『ゴーストバスターズ』とストーリーの流れが同じなので、展開が読めるのもマイナスポイントでした。アメリカ映画定番の核兵器解決オチもいい加減やめてほしいところ。

ただ本作の魅力は1984年オリジナル『ゴーストバスターズ』にはなかった、現代的問題(もちろんそれにはジェンダーも含みます)で新たなに料理し直したことにあるのでしょう。こういう新要素の導入は私は正解だったと思います。正直、1984年オリジナル『ゴーストバスターズ』をそのまま現代の映像技術でリブートしてもイマイチだったのではないでしょうか。

とくにさすがポール・フェイグ監督、ジェンダー・ギャグは御手の物。同監督作品の『SPY スパイ』でも同じでしたが、決して女性賛美、もしくは男性批判の映画になっているわけではないのが上手いです。男も女もバカに描くし、男でも女でも嫌な奴もいれば良い奴もいる。基本は平等です。

バカの極みであるクリス・ヘムズワース演じるケビンは、個人的一番楽しかったキャラでした。あそこまでギャグに徹したキャラは、今のコメディ映画のなかでもそう多くはないですが、気楽に見れます。まさに観賞用の存在。そんな彼にも「顔がいい」という身も蓋もない評価点でちゃんと雇用してあげるあたり、主人公のゴーストバスターズは人を平等に評価できているということがわかります(しかも体を乗っ取られてヘマした後も雇用し続ける親切心)。たぶん、彼も表面上バカだからわからないけど、相当世間から嫌われ蔑まれてきた悲しい過去を抱えてきたと思うんです。ケビンの居場所がやっとできたわけであり、彼のエピソードとしてもハッピーエンドだと思います。
ゴーストバスターズ
ラストのビルに現れる「I Love Ghostbusters」のライト文字はまさに「世間から嫌われていても見てくれている人はいるよ」というメッセージで、本作の立ち位置がよく表れていました。