あやしい彼女
原題:あやしい彼女
製作国:日本
製作年:2016年
日本公開日:2016年4月1日
監督:水田伸生

【個人的評価】
 星 3/10 ★★★
 
あらすじ

女手ひとつで娘を育てあげるも、自分の望む人生を送ることができなかった73歳の瀬山カツは、ある日、娘とケンカして家を飛び出す。そして1軒の写真館にたどり着いたカツは、そこで写真を撮ると20歳の姿に戻っていた。かつての美しい姿を取り戻したカツは新しい人生を謳歌するが…。

世界共通の気持ち

「老い」に限界を感じるからこそ、もう一度若いときに戻って好きに生きたい…!

その気持ちは全世界共通のようです。

韓国で製作され、2014年に公開された『怪しい彼女』という映画は、まさにその願望をフィクションの世界で叶えてくれるこれ以上ない作品でした。70を超えるお婆さんが20歳の若い姿に一時的に戻って人生を楽しむストーリーは、『ローマの休日』に代表される「ひと時の生まれ変わり系」映画としてシンプルでいてかつ普遍的な魅力があります。


ゆえにこの韓国映画『怪しい彼女』はいくつもの国でリメイクされることになりました。すでに中国とベトナムでは2015年に公開されています(それぞれの邦題は、中国版は『20歳よ、もう一度』、ベトナム版は『ベトナムの怪しい彼女』)。また、インドなどでもリメイク企画が進んでいるとか…。

そしてこのたび日本でもついにリメイクが公開。

日本版『あやしい彼女』は、オリジナルの韓国版『怪しい彼女』と大筋のプロットは同じ。なので、韓国版をすでに観ている人は展開がまるわかりでつまらないかもしれません。まあ、その場合は日本のキャストを楽しんでほしいところですが。

お婆ちゃんが若返った姿を演じるのは多部未華子。映画ではコメディキャラは珍しいような気がしますが、ギャグあり、毒舌あり、歌ありの20歳のお婆ちゃんを熱演してます。

まだ共感できない、今が若い時代真っ最中の人は…いつか嫌でもわかる日が来るはず。そのときに観るといいかもしれないです。





↓ここからネタバレが含まれます↓




韓国版のほうが魅力的な理由

どうしてもオリジナルの韓国版と比較せざるを得ないのですが、個人的には申し訳ないですけど韓国版のほうが面白いと思ってしまいました。

ストーリーはほとんど同じなのになぜ?という感じですが、理由は2つ。

1つ目に、演出がスベっているという点。全体的にお涙頂戴な演出が過剰に感じました。例えば、ショッピングモールでわが子相手に叱りつけ泣かせる母親を節子が諭す場面。本作では諭された母親が感動して最終的に節子に抱き着きむせび泣くまでするというのは…ちょっと…。韓国版だと、主人公がおせっかいすぎて逆に怒られるという寂しいシーンなんですが。

意味不明な演出も目立ってました。TV出演を成功させバンドメンバー&音楽プロデューサーとバーベキューしたのち、なぜかアスレチック遊具みたいなので遊ぶ面々。そして、林道を歩いていると節子が唐突に、本当に唐突に滑落します。前ふりないの?とびっくりしました。それに意味不明といえば、孫の翼の交通事故でしょう。頭から血を流しながらも会場に現れるシーンを、主観視点のぼやけた映像で示すのは、正直カッコ悪いと思ってしまった…。韓国版ではこんなシーンはありません。

あとは、冒頭部分。輸血している節子が映りますが、なんでこんなオチを冒頭で描くのか…。ちなみに、韓国版の導入は、年齢ごとの女の扱われ方をいろいろなスポーツのボールに例えたもので映画的にもとても面白くわかりやすい上手い見せ方でした。
あやしい彼女
そして、本作と韓国版の魅力を分ける決定的な違いは、やっぱり主演の女優でしょう。

韓国版で若い姿の主人公を演じるのは“シム・ウンギョン”という女優。彼女、わかる人にはわかると思いますが、『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)で主人公の高校生時代を演じてたあの子です。


韓国版はシム・ウンギョン演じる20歳のお婆ちゃんが完璧なんです。若いのにそこまで美人じゃない感がいい(失礼)、自然と溢れ出るおばちゃん臭がいい(失礼)。それでいて歌が超うまいのでギャップにびっくりするんですね。彼女の魅力で韓国版は成立しているといっても過言ではないです。

対して、日本版で若い姿の主人公を演じる多部未華子は、普通の可愛い若い子です。お婆ちゃんを演じている感がでているし、歌を歌ってもそこらへんにいそうなアイドルの子にみえて意外でもない。頑張っているんですが、シム・ウンギョンとは持つ素質が真逆です。

各国でリメイクするなら、その国らしい要素を入れてほしいところ。本作も、おれおれ詐欺にひっかかったカツがそのせいで音楽プロデューサーを疑うとか、銭湯での牛乳の飲み方とか、ところどころ日本っぽい遊びはありました。お話しももっと日本オリジナルで冒険するくらいの勢いが欲しかったですね。