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『ペット』感想(ネタバレ)…ニューヨークのウサギは何でもできる

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ニューヨークのウサギは何でもできる…映画『ペット』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Secret Life of Pets
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年8月11日
監督:クリス・ルノー、ヤロウ・チェニー

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ぺっと
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『ペット』物語 簡単紹介

ニューヨークで大好きな飼い主と幸せな毎日を送っていた小型犬マックス。この街では同じようにペットと暮らしている人はたくさんいる。ところがある日、飼い主が毛むくじゃらの大型犬デュークを連れて帰ってくる。飼い主の愛情を独占できる生活は無くなってしまった。互いに反発しあうマックスとデュークだったが、ひょんなことから2匹は大都会のど真ん中で迷子になってしまう。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ペット』の感想です。

『ペット』感想(ネタバレなし)

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ミニオンズのノリをペットで

“ペット”か…。シンプルな邦題だな…。個人的には『ペット・セメタリー』が好きですね…。

話を本題に移さないと。

ディズニーの『ズートピア』、ピクサーの『ファインディング・ドリー』、ドリームワークスの『カンフーパンダ3』と、今年の3DCGアニメは動物たちが輝いています。どんなにCG技術が発達して人間をリアルに描けるようになってもやっぱり動物モノは鉄板ですよね。

イルミネーション・エンターテインメントもその流れ(?)に続くかのように公開したのが『ペット』。その名のとおりペットが活躍する3DCGアニメです。

このアニメーションスタジオは名前の知名度は低いですが、『怪盗グルー』シリーズでデビューし、この作品に登場したミニオン(黄色い奴です)がスタジオのマスコットキャラクター。このミニオンを主役にした『ミニオンズ』は日本でも大ヒットしたので、日本ではキャラのほうが有名かもしれません。もはや完全にミニオンありきでのし上がったくらいであり、なんかここ最近の躍進が怖いくらいです。これまでの常識というか、通例では、緻密なシナリオで批評家さえも唸らせるピクサースタイルがCGアニメ界の流行だったわけですが、ここにきて「バカやっているだけでもいい」というスタジオが盛り上がって天下をとろうとしているのは、なんか痛快でもあります。

そんなイルミネーション・エンターテインメントが送り出す最新作『ペット』は、ギャグ成分多めのイルミネーション・エンターテインメントらしい作品となっており、全く変わらないというブレない姿勢に一安心。一応、ペットの飼育放棄とか社会問題要素も挟まれるのですが、それ以上にアホすぎるぶっとんだ展開の連続であり、頭を空にしてみる映画と考えましょう。『ミニオンズ』ほどバカに突っ走った内容ではないですが、じゅうぶんバカはしています。まあ、あの黄色いのは特別バカすぎるのですけど…。

予告を見ているかぎりは、飼い主が出かけているあいだ、家で留守番しているペットたちがハチャメチャな騒ぎをするのかなと勝手に推測していましたが、そんなレベルじゃなかった。なんでしょうか、ニューヨークはクレイジーすぎます。ネタバレできないので、これ以上は言えないですけど。

ただ、ペットといっても、犬や猫だけでなく、ウサギ、モルモット、ブタ、インコ、トカゲ、ヘビ、ワニまで登場するので見ていて飽きません。ワニはあれです、有名な下水道に棲むワニの都市伝説からですね。

これは同じ境遇であれば“あるある”なはずだと思いますが、飼い主がいないときのペットは何をしているのだろう?という素朴な疑問は一度は考えたことがあるでしょう。今作はそこに向き合った作品で、ここまでストレートなアニメーションが意外になかったのかな…。今まで「おもちゃ」とか「動物園の動物」とか、そういう存在が人間の知らぬ間に大冒険!というのはありましたけど。実写だと『ベイブ 都会へ行く』を自分は真っ先に連想しますが。

舞台のニューヨークの世界観はよくできているので、日本とは違う異国のペットとの生活に思いをはせてみるのも、日本人だからできる本作の楽しみ方だと思います。

この映画を観ている最中、観客のペットたちは何をしているのか。もしかしたら家にはいないかもしれない…戸締りは厳重に。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ペット』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ニューヨークのペットの日常

ニューヨークはたくさんの人間で溢れる街。ニューヨーカーがあちこちで今日も思い思いの時間を過ごしています。そしてそれは人間だけではありません。

マックスは自分はニューヨークで一番幸運な犬だと思っていました。飼い主のケイティが最高だからです。完璧な関係を築いていました。出会いは数年前。子犬だったマックスを拾ったケイティ。それは運命の出会いであり、同居はすぐさま楽しい空間に。

問題があるとすれば、ケイティが毎日出かけてしまうこと。一体どこへ、何をしに行くのか…。

家で寂しく過ごすしかありません。窓越しのお隣であるポメラニアンのギジェットが話しかけてきますが、マックスはドアの前で待機するのに忙しいです。飼い主が出かけてしまった後に残されたペットたち。それぞれの物語があります。

冷蔵庫のチキンを食べたいものもいれば、窓の景色を眺めるものもいれば、マッサージを楽しむもの、激しい音楽にノリノリになるもの…。

マックスのいる部屋にはペットの仲間たちが集まります。

そんな賑やかな日中も終わり、暗くなってケイティが帰ってきました。尻尾を振って喜びを全身で表して出迎えるマックス。これでまた2人きりの時間が…。

しかし、「ビッグニュースがある」とケイティ。ドアから入ってきたのは巨大な犬。「デュークよ。今日からあなたの兄弟」

デュークはマックスのお気に入りのボールを割り、ケイティの愛情まで持っていってしまいます。来たばかりの犬のくせに…。

さすがに我慢ならなくなったマックスはケイティに訴えますが、聞いてくれるわけもありません。このままではこの家とケイティの愛を独占されてしまうかもしれない…。

困ったマックスは上階の猫のクロエに相談します。「完璧な暮らしを永遠に奪われたくないなら、上に立たないといけない」

そこでふと思いつきます。デュークが部屋を荒らしたことにすればいい。そうすればケイティは怒ってデュークを手放すに違いない…。

この作戦は上手くいくのか…。

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ギャグ60%、あっさりなドラマ40%、サスペンス0%

イルミネーション・エンターテインメントの「笑い」のいいところは、メタなギャグに頼らず、子どもでもわかるスラップスティックで攻めていく点だと思っていますが、本作のコメディもいつもどおりで安心しました。

キャラはみんな、不幸な生い立ちさえあるキャラでさえも、実に楽しそうです。

ここまでの笑いに徹する姿勢はなかなかないですよ。誰だって「ここでちょっと真面目モード、入っとこう」と配慮するじゃないですか。それが総スルーですから。

イルミネーションを設立したのは“クリス・メレダンドリ”という人で、以前は『アイス・エイジ』というCGアニメを手がけていました。その作品シリーズではスクラットという名のリスのキャラクターがずっとバカげたコメディシーンを、しかも本編の物語とは全く関係ないところで繰り広げるのですが、そのエッセンスがイルミネーション作品は全体にわたってまんべんなく広がっている感じです。そこでもギャグやるの!?という連続。これはもうさぞかし子どもは楽しいに決まっているでしょう。

個人的に本作で好きなキャラはやっぱりウサギのあいつですね。まさにイルミネーション・エンターテインメントを象徴するようなぶっとんだキャラでした。同じウサギなのに『ズートピア』のジュディとは大違いです。『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(1974年)に登場する殺人ウサギ(キラーバニー)が元ネタっぽいですけど、本当に人を殺しかねない勢い(さすがにそれは子ども向けアニメなのでやらないですけど)。正直、子どもには見せたくないレベルの凶行っぷりですが、ウサギの本気を見た気分。『ファインディング・ドリー』で一番の派手な見せ場だった「動物の運転によるカーシーン」がさも当たり前のように何度も起こるのがなんか安心するのはなぜでしょうか。

まあ、これを観て「ウサギを飼いたい」という子どもはあんまりいないと思いたい…。

めちゃくちゃやっているぶん、ドラマはかなり雑…というか、そこは気にしないのはルール。

物語の主軸であるはずのマックスとデュークの仲違いも、吊り橋効果で安易に解決し、ソーセージで友情まで芽生えるというあっさりしたものでした。彼ら以外にもウサギやタカのキャラの心変わりの早さは、いくらなんでも早すぎる気もしますが、まあ、動物なんてその程度でしょうくらいの、コメディらしい冷めた視点なのかもしれないです。

イルミネーションですから、案外、動物は動物としか見なしていないのかも。なにせバナナありきで行動する黄色い単純生物を生み出したりしているスタジオだからね。このサッパリした感じは、絶対にディズニーには出せないスタイルです。

あえて言うなら、タイムリミット感を出してほしかったかな。マックスとデュークが飼い主が戻ってくるまでに帰れるか、さらに加えて何事もなかったかのようにできるかというハラハラがないのはもったいない。『トイ・ストーリー』との類似点が指摘されることもある本作ですが、『トイ・ストーリー』にはあったサスペンスがゼロなのは本作を一本の映画として楽しみづらくしていると思います。結局、細かいギャグの集まりでしかないので、この方針をどうするかですね。

いっそのこと『ミニオンズ』くらいスラップスティック・コメディに徹しても良かったかもしれない…。

ちなみに、話が本編から少し逸れますが、本作にも登場した動物を捕獲するために追いかけまわす人たち。日本語だと「動物管理局」と翻訳されますが、イマイチ日本人にはピンとこない。「保健所」と何が違うのか、同じだと思っている人もいるでしょうけど、違います。「Animal control service」と呼ばれており、要するに動物関連のサービスをしている職業。それ自体は公的機関ではなく、公的機関から請け負って仕事をしているケースが大半。「ドッグ・キャッチャー」と呼ばれたりするくらい駆除業者というイメージが強く、映画ではたいてい悪者扱いされがちですが、動物虐待を取り締まることもあったり、あながち「動物の敵」認定するのは早計です。そんなことを付け加えておきます。子どもに聞かれたらそんな説明をしておいてください。

そんな『ペット』も続編製作が決定済み。よく「続編、どうやるの?」みたいに心配される作品もありますが、本作ほど「まあ、どうにでもなるだろ」と安心(?)できる作品もなかなかない。続編ではさらに好き勝手やっていいですし、やるに決まっています。どうしてほしいかな、そうですね、このままペットたちが海外に行ったら別のアニメと同じになってしまうし…行動範囲を広げる以外にも面白さを出すアイディアをイルミネーションは用意してくるのか。楽しみです。

『ペット』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 73% Audience 62%
IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★
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関連作品紹介

『ペット』の続編の感想記事です。

・『ペット2』

作品ポスター・画像 (C)UNIVERSAL STUDIOS

以上、『ペット』の感想でした。

The Secret Life of Pets (2016) [Japanese Review] 『ペット』考察・評価レビュー